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たとえ貴方が地に落ちようと【簡易版】  作者: 長岡更紗


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第96話 私に出来る事があれば、何でもしますから!

 クスタビ村に来てから二度目の年が明けた。

 セヴェリは相変わらず勉強三昧の日々だ。日曜にはキクレー邸に行ってラウリル公国特有の教科を教わっているようだった。

 二月に入ると一ヶ月間、セヴェリはブロッカの街で講習を受ける事になる。その間、セヴェリに会う事は出来なかった。

 長い間会えなくて寂しかったが、彼が合格証書を持ってサビーナの職場に現れた時は、嬉しくてたまらなかった。


 お世話になったキクレー邸に行き、合格を伝えるとザレイもクリスタも喜んでくれる。屋敷を出ようとした時、マティアスに会った。


挿絵(By みてみん)「合格されたそうで、おめでとうございます。セヴェリ様」

挿絵(By みてみん)「マティアス……あなたから祝いの言葉を貰えるとは、意外ですね」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ様は僕を嫌っておいでのようですが、僕はそんな事はありませんから」

挿絵(By みてみん)「よく言う……」

挿絵(By みてみん)「マティア……」

挿絵(By みてみん)「行きますよ、サビーナ。早く来なさい」


 セヴェリがここまで人を毛嫌いするのは、初めてではないだろうか。


挿絵(By みてみん)「セヴェリはどうしてあんなにマティアスの事を嫌ってるんですか?」

挿絵(By みてみん)「逆に聞きたいですね。あんな男の一体どこが良くて、友人などというのかを。さぁ、帰りますよサビーナ」

挿絵(By みてみん)「はい」


 結局何も聞き出せず、帰途に着く事になった。


挿絵(By みてみん)「あ! セヴェリ先生!」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ先生!!」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ先生、どうだった!?」


 こちらに気付くと、全員が走り寄って来てくれる。セヴェリは彼らににっこりと微笑み、合格証書を取り出して見せた。その瞬間、ワッと歓声が上がる。


挿絵(By みてみん)「よっしゃーーっ!!」

挿絵(By みてみん)「さっすがセヴェリ先生!!」

挿絵(By みてみん)「ようやった、ようやった……うんうん」

挿絵(By みてみん)「なー!? セヴェリ先生が落ちるはずないって言っただろ!!」

挿絵(By みてみん)「良かったわね、セヴェリ先生……」

挿絵(By みてみん)「お疲れさん、頑張ったな!」

挿絵(By みてみん)「おめでとう、信じてたよ」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ先生の授業がないと、寂しかったよー」


 セヴェリは取り囲まれながら口々に紡がれる言葉を、嬉しそうに頷きながら聞いていた。



 その日の夜のこと。

 ケーウィンの父親のガロクが家に訪ねてきた。

 相談があるというガロクを家の中に招き入れるも、本題を切り出そうとしてくれない。

 その言いづらそうな様子から、サビーナは見当がついてしまった。


挿絵(By みてみん)「もしかしてガロクさんは、ケーウィンを大学に行かせたくないんですか?」

挿絵(By みてみん)「……そうなのですか、ガロクさん」

挿絵(By みてみん)「ああ……すまない、セヴェリ先生」

挿絵(By みてみん)「何故……」

挿絵(By みてみん)「あいつが教師になりたいって言い出した時には、まず無理だと思ってたんですよ。でも最近のあいつの集中っぷりがすごくて……このままじゃ大学に受かってしまうんじゃねぇかと……」

挿絵(By みてみん)「何故ケーウィンが大学に行っては行けないのですか。彼には夢もやる気もある」

挿絵(By みてみん)「それは……」

挿絵(By みてみん)「一度村から出た者は、ほとんど帰って来ないからですよ」

挿絵(By みてみん)「ああ……イーフォの奴もそうだったが、村を出て行った奴は、その町に住み着いちまうか異国へ行っちまうか……ケーウィンは一人息子だ。もし出て行かれたら、俺はもう子供にも孫にも会えずに……」


 サビーナの祖父の事を言っているのだろう。サーフィトは長い間、ここで一人寂しく過ごしていたのだ。


挿絵(By みてみん)「ケーウィンがここに帰って来られる基盤を作れば良いんですね? では村の人口を増やします。ケーウィンが大学に合格して卒業する六年後までに、ちゃんとした学校が必要なくらいには」

挿絵(By みてみん)「出来るんですか、そんな事が……」

挿絵(By みてみん)「とにかく、この村に人を呼び寄せる必要があります。荒れた畑を耕し直し、季節ごとの花を植えましょう」

挿絵(By みてみん)「観光地にするって事ですか? でも、お花だけでは弱いのでは……」

挿絵(By みてみん)「ここには沢山、実のなる物があるでしょう? うちでもキウイ狩りが出来ますよ、サビーナ」

挿絵(By みてみん)「あ……体験型観光……?」


 セヴェリは次々と対策を打ち出していく。

 元領主の本領発揮といったところだろうか。

 それでもガロクは、渋い顔をしている。


挿絵(By みてみん)「ケーウィンが受験する二年以内に、ある程度の見通しを立てられるように計画しますよ。ですからそれまでは、ケーウィンの夢を奪わないでください」

挿絵(By みてみん)「そう……だな。分かった」


 セヴェリの切実な願いに、ガロクは頷いて帰って行った。

 ようやく二人っきりになると、セヴェリが唇を落としてくれる。


挿絵(By みてみん)「一ヶ月ぶり、ですね」

挿絵(By みてみん)「はい」

挿絵(By みてみん)「長かった。ようやくまた一緒に居られる」


 嬉しそうなセヴェリの顔が飛び込んで来て、サビーナの顔は自然と染まった。


挿絵(By みてみん)「これからも苦労を強いてしまうと思いますが……村起こしを手伝って貰えますか?」

挿絵(By みてみん)「もちろんです! 私に出来る事があれば、何でもしますから!」


 元気良くそう答えると、セヴェリはクスッと笑い……


挿絵(By みてみん)「前に言ったでしょう? 何でもなどと、軽々しく言うものではないと」


 その意地悪な笑みと同時に抱き上げられる。何か勘違いしているのではないかと指摘する暇もなく、サビーナはベッドへと連れられてしまったのだった。

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