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たとえ貴方が地に落ちようと【簡易版】  作者: 長岡更紗


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第85話 私にはまだ早すぎる勉強ですからっ

 ブロッカの街でいつものように働いていると、遅番の同僚が話しながら入ってくる。

 どうやら外に、かっこいい人が立っているらしい。


 仕事を終えてリタと外に出ると、そこには確かに人影があった。


挿絵(By みてみん)「あら、確かに中々の男前ね」

挿絵(By みてみん)「って、え!? セヴェリ!?」

挿絵(By みてみん)「サビーナ、ご苦労様。待っていましたよ」

挿絵(By みてみん)「ちょっとサビーナ、あなた彼氏がいたの!?」

挿絵(By みてみん)「ご、誤解っ! 兄だから、兄っ!!」

挿絵(By みてみん)「なーんだ、お兄さん?」

挿絵(By みてみん)「初めまして、サビーナの兄のセヴェリです。いつも妹がお世話になっています」

挿絵(By みてみん)「リタよ。サビーナにお兄さんがいたなんて初めて聞いたわ。どうして教えてくれなかったの?」

挿絵(By みてみん)「いや、別に言う必要もないと思って……それよりその、お兄ちゃん……どうしたの?」

挿絵(By みてみん)「今日はサビーナの誕生日なので、祝いに来たんですよ」

挿絵(By みてみん)「あら、サビーナ誕生日だったの? おめでとう!」

挿絵(By みてみん)「あ……すっかり忘れてた」


 どうやら、わざわざクスタビ村からキクレーに借りた馬を飛ばして祝いに来てくれたらしい。

 サビーナは寮に案内すると、セヴェリを部屋に招いた。


挿絵(By みてみん)「ケーキのひとつでもあれば良かったのですが……十七歳の誕生日、おめでとうサビーナ」

挿絵(By みてみん)「え!? あ、ありがとうございます……開けても?」

挿絵(By みてみん)「どうぞ」

挿絵(By みてみん)「本……? あ、お花畑で会いましょうシリーズ!」

挿絵(By みてみん)「何が良いのか分からなかったので、このシリーズでまとめてみました。あなたは自分のためにお金を使っている様子がなかったので」

挿絵(By みてみん)「ありがとうございます! うわー、最新刊もある……嬉しいっ」

挿絵(By みてみん)「あなたのそんな顔を見られただけで、来た甲斐があったというものです」

挿絵(By みてみん)「もしかして、買いたいものがあるって言ってたのは、私へのプレゼントを……?」

挿絵(By みてみん)「ええ、もちろん。来年は、もっとちゃんと祝いましょう。この国では十八歳が成人のようです。お酒も飲めるようになりますしね」

挿絵(By みてみん)「いえ、私は……それよりセヴェリ様の誕生日は八月ですよね。何か欲しい物はありますか?」

挿絵(By みてみん)「そうですね。では、あなたが」

挿絵(By みてみん)「え?」

挿絵(By みてみん)「あなたが、欲しいです」


 真っ直ぐに伝えられ、言葉を詰まらせた。

 いつものクスクス笑いや意地悪顔ならからかっているのだと判断出来るが、今の彼は何を考えているか分からない。


挿絵(By みてみん)「えっと……あの?」

挿絵(By みてみん)「無理強いはしませんよ。ただ、考えておいてください」

挿絵(By みてみん)「はぁ……」


 首を傾げながら頷くと、セヴェリはいつものように微笑んでから立ち上がった。


挿絵(By みてみん)「あなたを今日中に祝う事が出来て良かった。ゆっくり休んでください」

挿絵(By みてみん)「え? セヴェリ様、泊まって行かれないのですか? 今から村に帰るのは、夜も遅いし危険です」

挿絵(By みてみん)「ここに泊まるとなると、またあなたはベッドを私に譲り、床で寝ようとするでしょう? 今日はキクレー卿の所に泊まるので大丈夫ですよ」

挿絵(By みてみん)「キクレー卿の所に?」

挿絵(By みてみん)「ええ。サビーナの事を言うと、キクレー邸で祝おうとクリスタは言ってくれたのですが、お断りしたのです。貴族のパーティーなど、あなたが嫌がると思いまして」


 確かに、たかが一般庶民の誕生日で貴族に祝われるなど気が引ける。きっと断るにも神経を使ったに違いないだろうが、その配慮にサビーナは感謝した。


挿絵(By みてみん)「お気遣い助かります」

挿絵(By みてみん)「いいえ、私があなたと二人で過ごしたかっただけなのですよ」


 セヴェリはがそっとサビーナに歩んできて、その胸にギュッと抱き寄せられた。


 いつまでもこの鼓動を聞いていたい……そんな思いに駆られてしまう。

 サビーナからは離れられなくなってしまった時、セヴェリがゆっくりとサビーナの肩を掴んで距離を取った。


挿絵(By みてみん)「このままずっとこうしていたいですが……あまり遅くなっては、泊まる場所を提供してくれた卿に失礼です。そろそろ……行きますね」

挿絵(By みてみん)「はい。わざわざ、本当にありがとうございました」


 離れていく体が、手が、寂しいと思ってしまうのは何故だろうか。

 行って欲しくない。行かないで。傍にいて。……そんな言葉は、兄のリックバルドになら言えた我儘だっただろう。

 おやすみを言い合うと、クリスタを呼び捨ていたセヴェリは、部屋を出て行った。

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