第68話 じゃあ来週はそれを買って来ます
また次の休みに帰ってくると、ラーシェの出産が終わったことを聞いた。
次の休みに、出産祝いを持ってセヴェリと彼女の家に行くと、ジェレイが迎え入れてくれる。
「おお! いらっしゃい、セヴェリ、サビーナ! 首を長くして待ってたんだぞ!」
どうやらラーシェとジェレイは夫婦だったようだ。ほとんど村にいないサビーナは初めて知った。
中に入ると、生まれたばかりの男の子を見せてもらう。名はルーフェイというらしい。セヴェリは促されてその子を抱っこしている。
セヴェリがルーフェイをラーシェに返すと、今度はサビーナに赤ん坊を差し出してきた。それを拒否すると、ジェレイが教えてくれる。
「この国では、生まれて三ヶ月以内に百人に抱っこをされると、健康に育つという言い伝えがあるんだ。是非抱いてやってくれ」
サビーナは仕方なく数秒だけ抱っこして、すぐにラーシェに返した。手が異常に震えて、血の気が引いた。
祝いのオルゴールを渡して早目に家を出ると、サビーナはやっとホッと一息つく。
サビーナは首肯し、その理由を話し始める。
「私の父は再婚だって話はしたと思いますけど……本当の母親は、相当な子供嫌いだったらしいです。生まれたばかりの私を置いて逃げ出したほどで……その血が受け継がれているのかもしれません。見ている分には平気ですが、会話や接するのはちょっと……」
目を伏せていると、セヴェリがそっとサビーナの頭に触れていた。
何も言わず、頭を撫でる。それだけ。
セヴェリが何を考えているのか、サビーナには分からない。
ただ彼と己の間には、高い塀のような隔たりがあるのだろうなと、漠然と考えていた。




