表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ貴方が地に落ちようと【簡易版】  作者: 長岡更紗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/115

第50話 じゃあね。月光祭、楽しんで来て!

今日は待ちに待った月光祭。

待ち合わせ場所に行くと、すでに両親は到着していた。二人は嬉しそうにサビーナを見て手を振ってくれている。


挿絵(By みてみん)「もー、サビーナこの! 連絡もよこさないで!」

挿絵(By みてみん)「ごめんなさーい。リックが帰ってるからいいと思って」

挿絵(By みてみん)「リックとあなたは別人でしょ! どうなの、マウリッツ様のお屋敷で上手くやれてるの?!」

挿絵(By みてみん) 「うん、大丈夫」


父親の名前はイーフォ、四十二歳。母親のカティは四十八歳の姉さん女房夫婦だ。


挿絵(By みてみん)「これからは頻繁に顔を見せに来なさいよ。こっちから娘の顔を見るためだけに、オーケルフェルトのお屋敷に行くわけにいかないんだから」

挿絵(By みてみん)「あ、うん、それなんだけど……私、オーケルフェルトの屋敷を出る事になりそう」

挿絵(By みてみん)「あら、サビーナ、誰か良い人でも出来たの?! 結婚!?」

挿絵(By みてみん)「ま、まだ早いんじゃないのか? 相手はどんな男なんだ?」

挿絵(By みてみん)「や、ちょ、違うから! セヴェリ様が近々結婚なさるのは知ってるよね? セヴェリ様は結婚したら、しばらくの間はクラメルの屋敷に住まわなきゃいけないらしくって……それでセヴェリ様に、私を専属のメイドとしてユーリスに連れて行きたいって、そう言われたの」

挿絵(By みてみん)「そうか……でも一生向こうにいるというわけじゃないんだろう? しっかり務めを果たして来なさい」

挿絵(By みてみん)「会えなくなるのは寂しくなるけど、子供はいつか親元から巣立って行くものだしね。リックのように二十九歳にもなって家に居られるのも困りものだし、自分の思うように頑張ってみて」


両親の言葉に、サビーナは強く頷いた。二人の応援の言葉が、胸に沁みる。

三人でリックバルドの最後の演舞を見ると、父親のイーフォが鼻をすすった。


挿絵(By みてみん)「うう、グスッ。本当に立派になったなぁ、リックくんは……」


ちなみにイーフォは、月光祭の度に同じ台詞を言っては泣いている。


挿絵(By みてみん)「やめてよ、お父さん、恥ずかしい。リックはもう三十になろうかっていうオジさんだよ。立派じゃなかったら困るでしょ」

挿絵(By みてみん)「それでもなぁ……うう、ズビズビ」

挿絵(By みてみん)「リックったら、ますます大胆かつ繊細な立ち回りをする様になったわね……背後から気配を消して斬りかかっても、受け止められちゃうかもしれないわ」

挿絵(By みてみん)「ちょっとお母さん、お願いだから物騒な真似はしないでね……」

挿絵(By みてみん)「冗談よ、するわけないでしょ!」


 カラカラと笑う母親をジト目で見上げた。この人なら本当にやりかねないから怖い。


挿絵(By みてみん)「ユーリスで勤められないくらい辛かったら辞めちゃいなさい! 手紙をくれれば、母さんが迎えに行ってあげるわ!」

挿絵(By みてみん)「う、うん、ありがと……でも大丈夫だから。私、セヴェリ様のお傍にいたいんだ」

挿絵(By みてみん)「……そう。分かった。母さん、サビーナの事を全力で応援するわ。自分のやりたいようにやりなさい。私は絶対にあなたを否定したりしない。あなたが下す判断を、母さんは信じてるから……だから」


 カティはまたもサビーナを抱擁する。ふわっと良い香りが鼻を掠めた。


挿絵(By みてみん)「自分が正しいと思う道を、迷う事なく行きなさい。サビーナならそれが出来るわ。だって、私の子だもの」

挿絵(By みてみん)「うん、ありがとうお母さん」

挿絵(By みてみん)「サビーナ! と、父さんだってサビーナの事信じてるからな! 応援してるからな!」

挿絵(By みてみん)「う、うん、分かってるよ、お父さん。じゃあね。月光祭、楽しんで来て!」

挿絵(By みてみん)「あなたもね、サビーナ」

挿絵(By みてみん)「楽しんでおいで」


 サビーナは大きく「うん!」と返事をし、手を振って別れる。

 二人は仲良く寄り添っていて、昔から今も変わらずラブラブの夫婦だ。

 そんな二人を背に、サビーナは祭りの雰囲気を楽しみながら歩く。


 だがサビーナは知らなかった。

 これが愛する両親との、今生の別れになるという事を。


 ーー自分が正しいと思う道を、迷う事なく行きなさい。サビーナならそれが出来るわ。


 ただ何故か、カティのそう言った言葉だけは、やたらとサビーナの心に響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ