進みだす時間
「悪魔かー・・・。セシリアは信じるか?」
「はぁ? 悪魔なんているわけないでしょ。それよりもあんたは特殊技能試験を心配したら?」
「相変わらず冷たいねー」
「よお! 朝から2人はお熱い!」
「ノリが古いぞ、明」
ホームルームが始まるまでの時間で俺は隣に座っているセシリアと後ろに座っている明と話していた。
セシリア=立花。日本人の母とイギリス人の父を持つハーフだ。俺の家と隣近所ということもあって昔からの腐れ縁になっている。他の男子共は羨ましいと妬みを言ってくる。正直、俺は羨ましいだろ! とドヤ顔を決めてやりたいぐらいだ。まぁ、あんまりにも長い付き合い過ぎてどちらかというと姉弟みたいになっちゃってるからそういった感情が芽生えないんだけど。
なぜ妬まれるかと言うと、セシリアの容姿からだろう。学園で1位2位をセシリアと不知火が争うぐらいにセシリアは容姿端麗だ。確かに見た目は可愛いんだけどなー。
「何ジロジロ見てんのよ。魔法で吹っ飛ばすわよ」
口はかなり悪いから残念美人って言われてる始末だ。
そして、道院 明。俺の中学からの同級生で頭が切れて判断能力だとかが人一倍ずば抜けてる同い年とは思えないスペックの友達だ。
まぁ、それもそのはずだろうな。世界に名だたる道院財閥の跡取りとして中学までみっちりと鍛え上げられてきたから基礎能力がずば抜けて高い。その反動からか中学卒業と同時に自ら稼いで金で生活するとか言って家を飛び出てきたんだよな。しかも、その言葉通りに生活費だとかは一切家から援助を受けずに一等地のマンションで生活している。
元々そういった願望があったからお金を貯めていて、それを元手に投資で一儲けしてるらしい。俺にもその方法を教えて欲しいもんだ。
「それで、集。悪魔って何の話なんだ?」
「いや、そんなに大それた話じゃないんだけどな。昨日、不知火に魔法を教えて貰ってたら魔法の原初は悪魔を倒すために作られた兵器だって聞いたからさ。
実際にそんな話あるもんかなって」
「魔法の原初かー。確かにそれは授業とかでも教えて貰えない部分だし分かんねぇな。・・・なら、調べてみるか?」
「はぁ? そんなこと出来るのかよ」
「ただの図書館じゃ無理だ。魔法が発見して作られた2、300年前の資料なんて残ってすらいないだろうしそもそもが最重要機密だからな。
そこで、俺の伝手であるハッカーを紹介してやるから今日の放課後にでも会って来いよ。
俺は今日の市場取引から目が離せなくて行けないからお前一人ってことになるが」
「・・・信用ならねぇ~。てか、お前ってそんなのまで知り合いにいるのかよ」
「金があるといろいろとそういった裏の関係者と知り合う機会が多いんだよ」
「この金持ちが。まぁ、お前の紹介なら安心・・・は出来ないが信用は出来るだろ。放課後に会ってみるよ」
「了解! 報酬はいつも通りのあれでよろしく頼むわ」
「はいはい。報酬の方は日時指定してくれればいつでも動くから連絡してくれよ」
明は満足気に笑うと電話片手に廊下へと出ていく。さっきのハッカーとかに連絡しに行ったのか。それにしても明の知り合いって本当にすごい奴らが多いな。
「犯罪にだけは手を染めないでよ。明も集も明日の朝刊に載ってたら嫌だし」
「明絡みだから犯罪はないだろ。まぁ、ハッカーって時点で犯罪臭がするけど・・・。それでも明はそんな危険な橋は絶対に渡ることはしない。
親父さんとの約束の期日までは確実に今の生活を続けれるようにするだろ。それが明が望んだ願いなんだから」
「確かに明だったらそんなことしないか。ごめん。ちょっと心配し過ぎたかも」
「仕方ねぇさ。ハッカーなんて単語出てきたら普通は犯罪か!?ってなるもんさ」
それもそうかとセシリアは納得すると前を向く。ホームルーム開始の合図が鳴って、先生が入ってきたからだ。そして、廊下に行っていた明もいつの間にか戻ってきていた。
悪魔か・・・。最近、活発になってきたあれの原因もそれなのか?
俺は、様々な考えを巡らせながら放課後を迎えることとなる。
「確か待ち合わせ場所はここでいいはずだな」
放課後になって俺は明の知り合いのハッカーと会うために待ち合わせ場所に来ていた。駅から少し離れた喫茶店の一番奥の端の席が待ち合わせ場所として指定された。
店に入って席を確認するが席自体がない。そこで、店の人に言われた通りの言葉を伝える。
「一番奥の席で相席をお願いします」
「・・・かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
店の人に連れて来られて奥の席へと座る。なるほど。店の人によってカモフラージュの魔法が掛けられて一切外部には情報が漏れないようになってるのか。
「待たせたね。といっても待ち合わせ時間ピッタリの到着なんだけど」
「いえいえ、そんな待ってな・・・いで・・・すよ?」
「どうかしたのかね? 私はどこかおかしいだろうか?」
おかしくはない。そう、普通の状況であればどこもおかしくはないのだ。明の知り合いでハッカーという肩書きが無ければこの女の子におかしいという疑問は何も感じない。
背中には大きな鞄を背負い、頭にはベレー帽を乗せている。服装もどこにでもいるような小学生の女の子で誰が見てもハッカーだとは思わないだろう。
「えっとー・・・明の知り合いのハッカーさん?」
「いかにも! 私があやつとの知り合いのハッカーだ!」
「嘘だろ・・・。どう見ても小学生の女の子じゃねぇか」
「小学生・・・? あぁ、何か勘違いしているようだね」
「勘違い?」
「そうだ。私は君が思っている年齢よりも遥かに年上だぞ。ちなみに何歳だと思う?」
「え? 普通に12、3歳ぐらい・・・かと」
「やっぱりか。あやつの知り合いだから素性は明かすとしよう。私の名前は橘 茜。こう見えても24歳だ。君よりも年上だぞ」
「はあぁぁぁーーーーー!! この見た目で24歳!? どういうことだ!!」
「ハハハーーー!! いや~、実に面白いね。誰もが私の年齢を聞くと同じような反応をする。けど、君が一番大きなリアクションだったよ」
今年一番の驚きだった。まさかこんな小学生の見た目で24歳でハッカーなんて。明のやつなんて人を紹介してくれるんだ。
俺は明への恨みを感じながらも本来の目的である魔法の原初について茜さんに聞き始める。それは、俺が望んでいた物なのかそうじゃないのか俺には分からない。だが、知らなくてはいけない。それが、前へと進むために必要なのだから。




