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王都ドラゴン魔法薬店~妖精達と一緒にスローライフ~  作者: 三和土
第三章 生活環境を整えよう
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044.冒険者の望む物

 男は魔道具を渡した時にこう言いました。

「魔道具はとても強力です。そのため一回分の魔石しか用意出来ませんでした。竜を眠らせる時以外は使わないでください」

 禁止されると破りたくなるのが人という物です。

 魔道具を動かす燃料となる魔石が一回分しかないのなら、魔石を補充すればもう一度使えるだろうと思った王様は、魔道具がちゃんと動くのか調べなければならないと言って、家臣達を集めて使ってしまいました。

 男の言葉に嘘は無く、魔道具はとてもとても強力な物でした。

 魔道具の効果は王城とお膝元の王都に及びました。

 つまり皆眠ってしまったのです。

「嗚呼、人とは何と愚かしい生き物なのか」

 起きている者が誰も居ない王城に、見すぼらしい格好をした魔道具技師と名乗る男がやって来てそう言いました。

 実は男も竜の心臓が欲しいと思っていたのです。

 しかし男の血に流れる誓約が、竜を殺す事を妨げていました。

 但し、誓約は男が竜を殺すために誰かに手を貸す事までは妨げないのでした。

 王城から魔道具を回収した男は、竜の心臓を手に入れる日まで、どこかで誰かに魔道具を渡しているのかもしれません。


(竜の心臓大人気だな。……と言うか、蘇生アイテムって物語になりやすい題材なのかもなあ)


【天空の城への扉】

 ある所に冒険者の男が居ました。

 男がまだ駆け出しだった時に、ちょっとした気まぐれで罠に掛かっていた小鳥を助けました。

 それから暫くの時が流れ、男はそれなりに名の通った冒険者になりました。

 たまに自分の望んだ物がこれだったのだろうかと思う時も有りましたが、そこそこの名声とそこそこの金と力を手に入れて、仕事終わりに酒を一杯引っ掛ければ忘れてしまう様な事でした。

 ある時から男の周りに声だけは美しい痩せた少女が姿を現す様になりました。

 少女は言いました。「以前あなたに命を助けられた者です。恩返しがしたいのです」と。

 男は仕事の邪魔にならないのならば好きにすれば良いと言いました。少女にも恩返しにも興味が無かったからです。

 少女は喜んで、男のために色々な食べ物や綺麗な色をした石ころなどを集めて来ました。

 しかし石ころは石ころ。宝石では無かったので、男は受け取りもしませんでした。

「私にはもうあなたにどうやってご恩を返したら良いのか分かりません。ですので、一族に伝わるこの秘宝をお渡しします。これは雲の向こうに有るという城へと繋がる扉です。誰も触ったり持って行ったりしない様な場所に置いてから使ってください」

 すっかり草臥れた少女は悲しそうにそう言って、男に一つの魔道具を渡しました。

 男は少女の持って来る物には、然程興味を持たなかったけれど、いつも期待に満ちた目をして何かを持って来て、そして失望した様な顔をしては去って行く少女の事は気になっていたのでした。

 恩を返したいという少女から、何か欲しいとは思っていないけれど、もう十分だと言ってしまうと少女が来なくなってしまうのではないかと思うと、男はそれを口にする事が出来なかったのです。

 ですので、魔道具を受け取った男は立ち去ろうとする少女の手首を掴んで言いました。

「この魔道具が危険では無いというならば、お前も一緒に来ると良い」

 そうして少女と魔道具を掴んだまま、男は魔道具を動かしました。

 魔道具は過たず男と少女を雲の上へと連れて行きました。

「嗚呼、あなた。魔道具を安全な場所に置かないままこちらに来てしまっては、あなたは地上へ戻る事が出来ません」

 少女の渡した魔道具は一対の扉だったのです。

 そして男は魔道具を持ったまま雲の上に来てしまったのでした。

「お前が去ってしまうのならば、地上にだってもう戻れなくても良いのだ」

 少女が逃げてしまわない様に、男は抱きしめながらそう言いました。

 少女の背には翼が有ったのです。

「あなたが望むならば、ずっと地上を歩きましょう」

 少女は泣きながらそう言って、男の胸に顔をうずめました。

「羽を持つお前は好きな様に飛ぶが良い。ただ、疲れたら俺の下に戻って来ておくれ」

 泣いている少女の背中を撫でながら、男はそう望みました。

 そうして男と少女は天空にある城で暮らす様になったのでした。

 天空にあるという城へ繋がる扉は、どちらも雲の上に行ってしまったので、翼の無い者は辿り着くことが出来なくなってしまいました。


(移動の魔道具って本当に有るんだろうか? どんな魔法陣を使っているんだろう?)




 皆が読める様にゆっくりと頁を捲って、途中でお昼の休憩を挟んでやっと『伝説の魔道具物語』を読み終わる。

 物語と付いているだけあって、割と本当に有ったんだろうかと思う様な物だったり、魔道具の性能というよりも付随する物語がお伽噺の様だったりと、中々楽しめた。

 まあ自分の作るであろう魔道具の参考にはこれっぽちもならなかったけど。


「どこまで本当に有った話なんだろうね」

 はふうと満足の息を吐き出して、閉じた本の裏表紙をそっと撫でる。


「幾つかは聞いたことがありますじゃよ」


「国が滅んだ系とかは、多分近からず遠からずって奴じゃないかな~」


「竜に関するお話は、大体が作り話ですわ」


「綺麗なお話の真相はどうなのでしょうね?」


 まあ、物語は物語のままで良いと思うよ?

 多分一個一個拾って聞けば、詳しい事を知ってそうだなあと、机の上で楽しそうにしている眷属達を見て思うけれど、真実を暴くことが必ずしも求める結果を連れて来るとは限らないだろうし。


「もう一冊の方は、次に来た時にしようか」

 そろそろ家に帰らないと、夕方組が来店するからね。

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 紅白前にギリギリ頑張って書きました。

 予想通り姉の妨害に合ってますが……。


 ブックマークなどありがとうございます。今年も頑張ってお話を続けていけたらなあと思うので、よろしくお願いします。

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