1 火魔法の恐怖
「新しいパーティメンバーを紹介しよう。魔法使いのフレンちゃんだ!」
パーティリーダーのリーダンが俺達に新しいメンバーを紹介する。
俺達は新米冒険者パーティ、モルモット。リーダーのリーダンが可愛い物好きで「俺、冒険者になったらモルモットを飼いたいんだ」という願いを込めて作られたパーティだ。
「さぁ、フレンちゃん。自己紹介を頼む」
フレンちゃんは燃えるような赤く長い髪が特徴の可愛子ちゃんだ。これからきっと冒険が楽しくなる!
俺はそんな期待に目を輝かせていた。
「魔法使いのフレン・ドリーファ・イヤーです。得意なのは火魔法です。よろしくお願いしまーす☆」
フレンちゃんは可愛い笑顔を向けて挨拶してくれた。
が。
「ひ、火魔法……、得意なの?」
俺は恐る恐る聞いた。
「はい! 私、伝説の火魔法使いのゲンシーロ様に憧れてるんです! 凄いですよね、10万の兵を一人で倒したそうじゃないですか」
「あー、うん。そうだね。倒しているよね」
俺は乾いた笑いしか出なかった。
「ま、まぁいいや。俺はナン・デヤーネン。神官戦士だ」
「俺がリーダーのリーダン・ナ・ノーヨだ。近接戦闘なら任さておけ」
リーダンがドン、と胸を叩く。
俺は嫌な予感しかしなかった。
「フレンちゃんは凄いんだぞ。彼女の武勇伝を聞けばきっと感動するはずだ」
うわー、聞きたくねー。
「えへっ☆ 私の火魔法は凄いんですよー。去年なんて、私の火魔法で森林の半分が燃えました☆」
犯人オマエかーーーーっ!
「私のファイアーボールは1mもあるんです。その温度は3000度。鉄だって溶かせます! このファイアーボールを前にして生きて帰って来た人はいません!」
「そ、そうなんだ……」
3000度とか生物が存在できる温度じゃねーぞ。
「たまに仲間ごと燃えちゃうんですけどね? ミャハ☆」
「それはダメだろーーーーっ!」
思わず絶叫する。
「まぁまぁ、落ち着けナン。それはきっと、そいつらがドジなだけだったんだ。だが俺達は違う! 俺はきっと君と生きて帰ってみせる!」
リーダンがフレンの肩に手を置き、頬を染めて宣言する。
その中に俺、入ってます?
「おい、あいつらフレンとパーティ組む気だぞ」
「えー、凄い命知らずね」
それを聞いていた冒険者達の呟きが耳に入った。
「悪いことは言わん。彼女はやめておけ……」
俺はリーダンの肩に手を置き、彼だけに聞こえる用囁いた。
「ナン、お前まで何言ってんだ」
「聞こえましたよぉ~? 私の実力を疑ってますね? ならばお見せしましょう、私の火魔法の破壊力を!」
フレンに聞こえたらしく、彼女は実力を見せると意気込む。いや、破壊力に関しては疑ってないよ……?
「よし、じゃあ早速ダンジョンへ行くぞ!」
「おー!」
二人は妙なハイテンションだ。なし崩し的にダンジョンへ行くことになり、仕方なく俺も同行する。
地下一階。
この洞窟は薄暗く、ヒカリゴケの光源に頼らざるを得ない。それでは心許ないため、松明を掲げ周囲を照らしながら俺達は進む。
「いました! ゴブリンですね。お見せしましょう、私のファイアーボールの威力を!」
ズザザザザザッ!
「おいナン。急に後ろに下がってどうした?」
巻き添えはごめんだ。
後で生き返らせてやるからな?
「ゴブリンにビビったんですかぁ? 情けないですねぇ。いきます、ファイアーボール!」
彼女の目の前に大きな炎の玉が出現する。
「あっちいいいいっ!?」
リーダンがいきなり転げ回る。そりゃ3000度の炎だぞ。近くにいるだけで焼かれるわ。
「かひゅーかひゅー……」
あ、リーダンが呼吸できず苦しんでる。熱気を吸ったから気道が焼けたな。
「おーい、早く火の玉なげろー」
早くせんとリーダン死ぬな。
普通ならもう死んでるけど。
「そうでした。いけーっ!」
フレンが火の玉を投げる。火の玉はゴブリンに命中すると、たちまち焼き尽くした。
「すぐにリーダンを連れて逃げるんだーーーっ!」
「え?」
3000度の炎が洞窟内で燃え上がる。熱せられた空気が対流を起こし始め、洞窟内に乱気流が生まれた。
「キャーーーーッ!?」
熱風込みの乱気流だ。気流に飲まれ、リーダンもフレンも身体をあちこちにぶつける。
だから言わんこっちゃない。
暫くして気流が治まり、俺は二人に駆け寄った。
フレン、身体をあちこちにぶつけて傷や青痣だらけ。火魔法特有の魔法耐性で皮膚は熱には耐えたが、熱気を吸って肺が灼かれ、意識不明の重体だ。
リーダンは熱耐性がなかったためもっと悲惨だ。熱風に焼かれ、全身黒焦げ。普通に死んでるわ。
「仕方がないな。復活魔法、ブチイキカエース!」
俺は両手を組み、人差し指を立てる。その先に魔力を集め、復活魔法の力を集めた。
「注入!」
ブスッ。
リーダンのケツに指をぶっ刺す。
すると黒焦げだった身体が元に戻り、リーダンが生き返った。
同様にフレンも生き返る。
「ふーっ、びっくりしたぞ」
「はっ! ゴブリンは!?」
二人が目を覚ます。
そして周りをキョロキョロと見渡した。
「ゴブリンはやっつけたぞ。ついでにリーダンもな」
「いやー、喉焼かれてしんどかったわー」
呑気だな。普通に死んでたのに。
「見ましたか! 私の火魔法の威力を!」
「仲間焼いてどうすんだ……」
良かったな、一酸化炭素が発生してなくて。火魔法は酸素を消費しないから良かったが、もし消費していたら一酸化炭素中毒か、酸素が薄くなって窒息死だぞ。
「ですがこれでまた偉大な火魔法使いゲンシーロに近づきました!」
フレンは何故かガッツポーズ。
その自信はどこからだよ。
「あー、兵士10万倒したあれか」
リーダンが何の気なしに呟く。
「はい、兵士を10万倒しましたが、同時に味方15万を全滅させた、高名な魔法使いです! これで殺害数が一歩前進しました!」
「「前進しなくていい!」」
俺達冒険者パーティ、モルモットに、新しい仲間が加わった。
俺達の明日はどっちだ!?




