第6話 封眠の残骸
瓦礫の街を抜けた先に、それはあった。
崩れた高架の下、半ば地面に沈み込むようにして残る巨大な構造物。
コンクリートと金属が複雑に絡み合い、かつて人工的に作られた“何か”だった痕跡だけがそこにあった。
サワキ・ミツルは足を止める。
「……これ、建物か?」
見慣れた都市構造とは違う。
駅でもない。研究施設とも違う。
それでも、確かに“人間が作った規模”のものだった。
入口らしき場所は崩落しているが、わずかに開いた隙間から内部へ入れる。
冷たい空気が流れ出していた。
「……生きてる空間じゃないな」
呟きながら、ミツルは瓦礫をかき分けて進む。
中は異様に静かだった。
外の廃墟よりもさらに“時間が止まった”ような感覚。
壁には無数の配線と魔力回路が走っている。
だがそれらはほとんど死んでいた。
途中、ひび割れたガラスのカプセルのようなものが並んでいるのを見つける。
中身は空だが、形だけは“人が入るための装置”に見えた。
「……何だ、これ」
触れようとした瞬間、カプセルの表面がわずかに光った。
――起動ログ、断片再生。
《封眠対象:承認済み》
《環境崩壊率:87%》
《魔力汚染指数:臨界域》
「封眠……?」
その単語に、頭の奥が鈍く反応する。
だが記憶には繋がらない。
知っているはずなのに、思い出せない。
さらに奥へ進むと、壁に大きく刻まれた記録があった。
――《長期保存計画:人類種維持プロトコル》
ミツルは言葉を失う。
「人類、維持……?」
その瞬間、また頭痛が走った。
――白い空間。
――魔法陣。
――誰かの声。
《対象個体:適合率低》
《記憶安定化処理を実行》
「っ……!」
思わず膝をつく。
これは記憶なのか、それともこの施設が“見せているもの”なのか分からない。
ただ一つだけ確かなのは、この施設が――
“何かを保存するために作られた”ということだ。
外に出たとき、空はさらに重く沈んでいた。
ミツルは瓦礫の街を振り返る。
「……俺も、ここに入ってたのか?」
答えはない。
だが胸の奥の違和感だけが、確かに残っていた。
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