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次原凛の華麗なる日常  作者: しののめ
4/5

薫さんと愛娘達


                    

「行ってきます! お父さん! 黄金丸!」


 


愛する娘が私に手を振る。


 


「行ってらっしゃい、凛。車に気をつけてな」


 


庭の掃除、竹箒を振る手を止め、笑顔で娘を送り出す。


 


学び舎へと向かう幼い娘に手を振り、笑顔で送り出す……嗚呼、幸福の極みなり我が人生。


 


私の名前は次原薫、45歳。


 


小さいながらも会社を経営し、愛する娘の成長を楽しみに生きる、平凡にして幸福なる平均的中年男性だ。


 


「行ってくるわ! パパ! 黄金丸! ついてきなさい!」


 


愛する娘が、私に手を振る。


 


「何処へ行くんだい、潔。そっちは小学校だよ。早く大学に行きなさい。あと、その灯油缶とバールのようなモノは置いて行きなさい」


 


ズリズリと石畳を擦り付けながら火花を散らす娘の手を止め、笑顔でその物騒な凶器を回収する。


 


「えー」


 


「えー、じゃないよ。というか、黄金丸を連れて行こうとするなよ。お前は早く支度して大学へ行きなさい」


 


私の名前は次原薫、45歳。


 


小さいながらも会社を経営し、妹の学び舎へと向かおうとする、取り返しのつかない成長を遂げた愛する娘の人生を危惧する、平凡にして幸福なる平均的中年男性……の、はずだ。たぶん。きっと。


 


「……なぁ、黄金丸。なんで潔はあんな感じになっ……いてぇ! いたたたたたた!!! 噛むな! 噛むな! 黄金丸!! 首を振るな! 噛んだまま首を振るな黄金丸ッ!!!」


 


愛する娘たちの姿が消えた途端、差し出した私の手に食い千切らんばかりの勢いで牙を立てる凶獣、愛犬・黄金丸!


 


なんで懐かないんだお前は。一番付き合いが長いのは私だぞ?


 


この平凡にして幸福なる平均的中年男性、次原薫45歳だぞ?


 


「何やってるの、パパ、黄金丸。行ってくるわね」


 


支度を終えたのだろう。バールも灯油缶も装備品から外れた美人女子大生20歳が、私に手を振り玄関から出てくる。


 


「ワフッ!」


 


引き抜かれた血に塗れた牙を輝かせ、尻尾をプロペラのように回しながら、そんな娘に愛想よく声をかける愛犬……なんでだよ。


 


「ああ、行ってらっしゃい。潔」


 


まぁ、いいさ。平凡で幸福。それが私だ、次原薫、4……。


 


「あ、パパ! 凛の部屋に仕掛けられてたトラバサミ! 痛かったわよ! パパもなかなかやるわね! 今度私にも一個作って頂戴! オスガキ共に使うわ! じゃあ、行ってきます!」


 


…………平凡で幸福。平均的中年男性。


 


……異論はないよな? 黄金丸?

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