表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
251/266

56.賢人の遺産

連載作品『悪逆覇道のブレイブソウル』

コミックノヴァにて、コミカライズが連載開始いたしました!

皆様の応援に心よりの感謝を申し上げます!


https://www.123hon.com/nova/web-comic/bravesoul/

挿絵(By みてみん)

 学園内ダンジョン『賢人の鍛錬場』の最上階の攻略に成功した。

 正直、即席パーティーでの攻略はかなり怪しい部分が大きく、新規加入メンバーである二人……特にシエル・ウラヌスの力を疑う場面も多かった。

 しかし、最後の最後のボス戦にて、彼女は見事に自分のポテンシャルを十全に発揮することができた。

 心配がないわけではないが……超難関攻略ダンジョンである『永久図書館』に入る資格はあるだろう。


「まあ、ギリギリの及第点だけどな。不合格寸前の補欠入学ってところだ」


「偉そうよね……随分と言ってくれるじゃないの」


 身も蓋もない評価を受けて、シエルが半眼になって睨みつけてくる。

 実際、そんな感じの評価なのだから仕方がない。

 コウモリに身体を弄ばれたり、幽霊に怯えて泣きが入ったり……活躍した場面よりも呆れさせてくれる場面の方が多かった。

 最後の最後のメインヒロインの一角たる意地を見せていなければ、容赦なく不合格を言い渡していたところである。


「これで攻略完了になりますわね。このまま帰るのかしら?」


 エレクトラが首を傾げて、訊ねてくる。


「いや、成功報酬を手に入れてからだ。せっかく、最上階まで来たんだから報酬を手に入れなくちゃ来た意味がない」


 俺は三人によって破壊され、横たわっているマシーン・オルフレッドの身体を調べた。


「ここを調べると……よし」


「あ、ゼノン様! 階段が下りてきましたよ!」


 エアリスが上を指差した。

 顔を上げると、上からゆっくりと回転しながら螺旋階段が下りてきている。

 マシーン・オルフレッドの頭部にあったボタンを押すことで装置が起動して、最上階のさらに上にある部屋への階段が現れるのだ。


「この上にこの学園の創設者の一人……賢人オルフレッドの研究室があるはずだ」


「ちょっと、バスカヴィル。貴方、どうしてそんなことを知っているのよ?」


「バスカヴィルだからだ。それ以上に理由なんてない」


 シエルに適当に答えておいて、俺はさっさと螺旋階段を上りはじめる。

 三人が遅れて、後ろに続いてくる。

 五十段ほどの階段を上っていくと天井部分に到着する。そこにあった扉を開くと、途端にホコリと古い本の匂いが鼻を突く。


「おお、さすがに汚れてるな……」


「この部屋は……?」


 俺に続いて、エアリスがその部屋に顔を入れる。

 そこはまさに『魔法使いの研究室』といった部屋だった。

 四方の壁の一つは木のテーブルが置かれており、フラスコや試験官などが並んでいる。

 他の三面の壁にはビッシリと本棚が設置されていて、歴史を感じさせる古い本が詰まっていた。


「これが賢人オルフレッドの……すごい、魔法使いにとっては宝の山じゃない……!」


「歴史的な価値も素晴らしそうですわ。まさか、王立スレイヤーズ学園の中にこんな場所があったなんて……」


 シエルとエレクトラも感動した様子で瞳を輝かせている。


 賢人オルフレッド。

 王立スレイヤーズ学園を建設した人間の一人であり、ゲームでは直接、登場しなかった設定上のキャラクターである。

 学園内にはこの研究室を始めとして、彼が残した痕跡や遺産がいくつも残されていた。

 どこぞの魔法学校のような仕掛けを解いて、学園内を探検していくというのがこのイベントの醍醐味である。


「ほれ、とっとけ」


「ひゃっ!」


 俺は机の下にしまわれていた木箱を取り出して、シエルに放った。

 シエルは木箱をどうにか落とさないように受け止める。


「ちょ……危ないでしょ! 投げないでよねっ!」


「いいから……さっさと開けろよ。良いもんが入ってるから」


「まったく……何なのよ……」


 シエルが木箱を開くと……中には豪勢な装飾が施された杖が入っていた。


「これって……」


「賢人オルフレッドの遺産の一つ……『魔杖ケーリュケイオン』だ」


 魔杖ケーリュケイオンはファンタジー好きな人間であれば、名前くらい聞いたことがあるだろう。

 ギリシア神話の神ヘルメスが所有しているとされる杖であり、木製の主部分に金属製の二匹の蛇が絡みつき、先端部分には金色の双翼が飾られている。


『ダンブレ』において、この杖はゲーム後半で登場する魔法使いの最強武器の一つ。

 魔法の威力を増幅させ、さらに消耗する魔力を2割減させる効果があった。


「これって伝説の……ほ、本当にいいの? 返さないわよ?」


「別に良い。『永久図書館』に入るのなら、必要になるだろう」


「ありがとう……嬉しいわ!」


 よほど嬉しかったのか、シエルは杖を抱きしめて感極まったような笑顔になる。

 大輪の薔薇が花開くような笑顔だった。


「…………」


 俺は何故か後ろめたい気持ちになって、その笑みから目を逸らす。


「ムウ……」


 目を逸らした先にはエアリスがいて、拗ねたような目でこちらを見つめてきていた。


こちらの作品も投稿中です。よろしくお願いします!


・異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

https://ncode.syosetu.com/n5482il/


・蒼雷の退魔師 妖怪と陰陽師ばかりの国だけど神の子だから余裕で生きるし女も抱く

https://ncode.syosetu.com/n7808ik/


・勇者の子供を産んでくれ 邪神と相討ちになった勇者は子孫を残せと女神に復活させられる

https://ncode.syosetu.com/n8269ik/


・自分をイジメていたクラスメイトが異世界召喚されて「ざまあ」と思ってたら遅れて召喚された。ペンギンになってしまったが美少女に可愛がられているので復讐とかどうでもいい。

https://ncode.syosetu.com/n5174il/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズも連載中!
i000000


☆書籍第1巻発売中!☆
↓画像をクリックしてみてください↓
i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ