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54.最上階と分水嶺

 紆余曲折はあったものの、即席パーティーは『賢人の鍛錬場』の最上階へと到着した。


 多少、チームワークは向上した感覚があるが、やはり即席であるという感覚は拭えない。

 意外とエレクトラが動けることが良い意味での誤算だったが、反対にシエルが足を引っ張っていた感覚もある。

 本来であれば、メインヒロインとしてかなりのポテンシャルを持っているはずなのだが……彼女が天然であることが浮き彫りになった。


 このパーティーで『永久図書館』に進むのは、不可能ではないにせよ、かなり不安がある。


「最上階だ。ここでの戦いが、この即席パーティーにとっての分水嶺(ぶんすいれい)になるだろうな」


「大丈夫でしょう、シエル」


「……問題ないわ。エレクトラ様」


 エレクトラの問いに、シエルが緊張した面持ちで答える。

 シエルもまた……四人の中で自分が一番、足を引っ張っている自覚があるのだろう。

 緊張に気を引き締めており、杖をギュッと握りしめている。


「私はレオンを助ける。絶対に助けるんだから……こんなところで、躓いていなんていられない……!」


「覚悟で強くなれたら、誰も苦労はしないんだけどな……ここで活躍できないようなら、お前は図書館には連れていかない。レオンのことも諦めろ」


「…………!」


 俺の断定に「キッ!」と強い眼差しで睨みつけてくるが……すぐに気落ちした様子で目を逸らした。


「わかったわ……結果を示したら文句はないんでしょう?」


「そういうことだ……せいぜい、頑張ってくれよな」


「…………」


 シエルが思いつめた顔で黙り込む。

 良い具合に喝が入ったようだ。

 これで本当に結果が出せないのであれば、もはやしてやれることはない。

『永久図書館』に入るのも難しいだろうし、レオンのことは諦めてもらおう。


『敵性存在を確認。これより、排除を行います』


 最上階に足を踏み入れると、平坦で機械的な音声が響いてくる。

 円形の部屋の中央に、頭上から巨大な人工物が下りてきた。


『デストロイ・モード起動。戦闘開始』


 現れたのは、ファンタジーな世界とは場違いな存在。

 いわゆる『ロボット』と呼ばれるものだった。

 土偶のような形状の三メートルほどの金属の塊が、宙に浮いて顔の中央にある単眼を光らせている。

 胴体部分から左右二対の腕が生えており、その先端部分には剣や斧などの武器が付いていた。


 このモンスターの名称は『マシーン・オルフレッド』。

 学園の創設者である『賢人オルフレッド』という人物が生み出した金属製のゴーレムである。

 オルフレッドの頭脳を移植してあり、学園内部にあるこのダンジョン『賢人の鍛錬場』にやってきた学生をテストするのだ。


『この先に進みたくば、我を倒していきなさい……!』


「だってよ……ほら、さっさと武器を構えろよ」


「わかってるわよ! 絶対にやっつけてやるんだから……!」


「もちろんですわ。やってやりますの」


 シエルとエレクトラがそれぞれ、杖を構えた。


「言っておくが……今回、俺は手出しをしないからな。エアリスと含めて、三人でどうにかしてみろよ」


「え? 何で!?」


「俺が戦ったら、余裕で勝っちまうだろうが。これはお前達が『永久図書館』に入る資格があるかどうかの試験だ。回復役のエアリスには手伝ってもらっていいから、俺抜きで倒して見せろよ。負けたら、お尻ペンペンだ」


「ッ~~! 勝つわよ、アンタなんていなくてもね!」


「フム? お尻ペンペンとは子供みたいなことを言うのですね。まさか、この年でそんなことを言われようとは」


「多分、エレクトラ殿下が考えているのとは意味が違いますよ? ちなみに、私だったらいつでもお尻を差し出しますから、好きなだけ叩いて構いませんからね。ゼノン様」


 シエル、エレクトラ、エアリスが三者三様の発言をして、マシーン・オルフレッドに向かい合う。

 ご丁寧に、機械型のゴーレムはこちらが動くのを待っている。

 あくまでも、学園の生徒の実力を測り、試練を与えるという存在だから、不意打ちで攻撃してきたりはしない。


「さあ、いくわよ……『フレイム・ショット』!」


 シエルが指揮を執って、杖を構える。

 杖の先端から炎の塊が放出され、機械人形の頭部に命中した。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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