源くんと佐々木くん
源頼朝が題材ではあります。
あります……が、ダメ……!
勉強不足……! そもそも、文献を読む気が無い……!
ウ○キペディアを斜め読みした程度のあれですので、完全なるフィクションと思って下さい。
時は平安末期。ある片田舎の海辺で、一人の男が黄昏ていた。
彼の名は源くん。ニートである。
「京に行きてえ」
「死ぬ気ですか?」
辛辣に答えるのは佐々木くん。こちらもニートだった。
世知辛い世の中。所領を無くした佐々木くんは、仕方なく死んだ主の息子に仕えているのだ。新しい主たる源くんは、キリリとした顔を佐々木くんへと向ける。
「……都ってそんなにヤベエの? 魔都なの?」
「あなたの御父上が何で亡くなったか覚えて無いんですか!? 都での権力争いに負けたからでしょ!? 都に入った瞬間に捕縛されて極刑ですよ!! 分かってますか!?」
「親父と俺は違う(キリリ)!」
「じゃあなんでテメーは飛ばされてるんだよ!? 監視ついてんだろうがっ!!」
そう、源くんの父親は京の朝廷での権力争いに破れ、処刑されてしまったのだ。
そして源は田舎の漁村に飛ばされ、二度と権力争いに参加しないように監視人まで付けられているのだった。
周知の事実。しかし源は、たった今気付いたと言わんばかりの表情で驚く。
「えっ!! 監視とか付いてんの!? やだー、お肌の荒れとかも報告されちゃってる? 油断大敵?」
「テメーの肌荒れなんて報告するわけねーだろ!?」
「冗談に決まってるだろ佐々木ちゃん。なにマジになってんの?」
「お前、一回殺すぞ……?」
やれやれ、冗談の通じないやつだ。
源は鬼の表情になる佐々木を前にして、一筋の汗を流した。
「しかし父が死んだのは何年も前の事だぞ? さすがにもう監視も付いて無いんじゃないか? 居たとしても、それは監視と言う名のニートだろ?」
「甘いんですよ。あなたは尊き血を引くお方です。たとえ血筋以外がゴミ同然だとしても、その身に流れる血の宿命には抗えないのです」
「そんなもんか?」
「ええ。あなたはゴミ同然です」
「いやそっちじゃなくてだな……」
何の迷いも無くゴミと言い切る佐々木。
源は、そんな佐々木の壮絶な意志を感じつつ言った。
「血筋とか、尊き生まれとか、それがどれだけ意味があるって言うんだ? 現に俺はこうして海を見るしか能が無いじゃないか」
「あなた自身の価値なんてね、あなたが決める物じゃ無いんです」
答えともつかぬ返事を言うと、佐々木は遠く海を眺めた。
「私も、私の父も……貴方に流れる血、その貴さに従ったようなものです」
海は静かに波を打つ。
間の抜けた鳥が、たった一羽で青い空を駆けた。
陽光に青く煌く海と空。
巨大な白雲が、音も無く流れていく。
「そんなもんか?」
源はポケーっとした表情で海を眺める。
間の抜けた問い。
その問いに対して、佐々木は確信を持って応えた。
「そんなもんです」
ビィユオオオオ……。
海の向こうから吹く風は少し冷たく、生臭い。
「辛いと思いますか? ご自身の血筋が」
特に深い理由も無く佐々木は訊いた。
だから源も、特に考え無いまま答える。
「いんや。何に生まれた所で、不満はあるだろうからなぁ」
どこか飄々とした調子の源。
それは眼前に広がる海のようでもあり、佐々木は密かに笑みを浮かべた。
どうせ馬鹿なら、底抜けの方が面白い。
海のように、空のように、底抜けのアホウ。底が見えないなら大物と同じか……。
四海。天下。
人は何かを背負って生まれて来る。
父と同じ運命を辿る自分自身に苦笑しながら、佐々木は源を見つめた。
その先に広がる、広大な海と空も。白雲は、静かに流れる。
「貴方の血は、支配者の血です。天下を狙われますか?」
「おいおい、天下って都のことだろ? 殺されちゃうじゃないか」
「京に行かれたいのでしょう?」
「血路を開いてまで行こうとは思わんよ。静かなのが一番だ」
憮然とした表情を向ける源。
そんな源を見て、佐々木は緩く微笑んだ。




