帰宅
Sideコニー
コニーは二年間の都生活を終えて、村に帰ってきた。
「かーちゃん!ただいま!」
コニーは外で待っていてくれた母親のもとへ飛び込んでいく。後ろから、ふわふわととポチも飛んでくる。ちなみにこの二年で、ポチは身体も成犬ほどの大きさになり(それでも丸いのだが)、二メートルの高さを飛べるようになった。高度が倍になったのは進歩だと思う。
「コニー、ポチちゃんもお帰りなさい」
母親はにこにこ笑ってコニーを抱きしめた。
「それにしても、すごい乗り物で帰ってきたのねぇ」
母親がちょっと離れた場所を眺める。
「あのね!帰りはびゅーんて速かったよ!アオさんが送ってくれたから!」
アオさんとは、ポチの友達の青い竜のことである。コニーとポチが村に帰るのだと告げると、送っていってくれると申し出てくれたのだ。
「人の足では遠かろうが、我の翼であればひとっとびだからな」
親切な青い竜に、コニーはお礼を言った。
「ありがとー、アオさん!後でかーちゃんにりんごのパイを焼いてもらって、一緒に食べようね!」
「たくさん焼かなきゃいけないわね。ところでコニー、もうひとつ聞きたいのだけど」
にこにこ笑顔な母親に、コニーは首を傾げる。
「あっちの白い方はだぁれ?」
「ああ、アレは景色だと思っていただければよい」
母親に疑問に答えた青い竜の言い草に、「白い方」は拗ねて石ころを蹴っていた。石ころといっても、人間の子供ほどの大きさの岩であるが。
「あのねー、あれポチのとーちゃんなんだよ!」
続いてコニーが答えた。
コニーの帰郷に、ポチの父親もついて来ていたのであった。2匹の竜がいるおかげで、村が狭く感じるコニーであった。
Sideポチ
コニーが村に帰ることになり、ポチも一緒に帰ることにした。そう青い竜に告げると、コニーの家族が住む村が見たくなったらしい。青い竜は村まで送ってくれるという。人間が移動するにはとても遠い場所にある村なので、送ってくれるのは正直ありがたかった。
が、しかし。この帰郷にオマケがついてきてしまった。話をききつけたポチの父親が、自分も行くと言ってきたのだ。
「我が子が世話になったお礼を、親である私がせねばなるまい!」
「いらぬ世話である」
ポチの父親は鼻っ面を燃やされただけでは懲りなかったらしい。定期的にポチに会いに都までやってくるのだ。村の場所が知れたら、そこへも現れるに違いない。
なんというか、ポチとこの父親とでは、性格の不一致というか、馬が合わないところがあった。一緒にいてイラっとするという表現が正しいのかもしれない。妙にナルシストなところも気に入らないポチであった。きっと己は母親に似たのだとポチは思う。
そんなこんなで、行きは苦労した道のりも、帰りは青い竜にのってひとっとびであった。コニーが空の旅を大いに楽しんでいたので、ポチとしても安心である。これで乗り物(?)酔いを起こしては、二度と竜にのりたがらなかったかもしれない。そもそも青い竜にのって帰るという話になったのも、行きの道のりで、コニーが乗合馬車にひどく酔ったことが原因であるのだ。
村の端の開けているところで、竜三匹とコニーは仲良くりんごのパイを食べていた。
「やはりこのりんごのパイが一番美味である」
「都でもいろいろ食べたけど、やっぱりかーちゃんが作ったのが一番おいしいね」
ポチとコニーは久しぶりの味をかみ締めていた。
「ふぅむ、なかなかおつな味だな」
「我が子はこのようなもので餌付けされたのか」
大人の竜向けに、超巨大なりんごのパイを焼いてもらい、青い竜とポチの父親も食べていた。初めて食べる人間の味に、二匹は夢中で食べている。
「気に入ったらまた遊びにくるといいよー」
「父はくるな」
どこまでも冷たい我が子の仕打ちに、ポチの父親はいじけていた。そういう態度が嫌われるのだと、ポチの父親はなかなか気付かない。
「やっぱりおうちが一番だね!」
「うむ!」
仲良しのコニーとポチは、りんごのパイを口いっぱいに頬張って、そう言ってにっこり笑い合うのだった。
これにて完結です。読んでいただきありがとうございます!ここで連続投稿はストップさせていただきます。しかしコニーとポチのお話はまだ終わりじゃないですよ!