26年前の!後!
そうですよ。事情は人それぞれなんです。あなた、同情注意ですよ!
「ちょっと桜子、あんた本気なの? 旅行か何かかと思ってたのに。そんなとんでもないこと、正気とは思えない……」
「本気よ! 内臓って少しくらいなくなっても生きていけるらしいし売れれば飛行機代を引いてもかなりのお金になるんだから!」
「誰に吹き込まれたのよ! ほいほい内臓取り出して平気なわけないでしょ! あんたの好きなおいしい物も食べられなくなっちゃうよ?」
「そんなのもういい! このままでいたって、どうせ好きな物なんか食べられなくなるんだから!」
「なによそれ? それにそういうのって許可なしのヤブとかが極悪な環境で手術して下手すれば殺されるんだって! これマジなのよ? お金が欲しけりゃ普通に働けばいいでしょ!」
「今さら働くなんてできっこないじゃないの! それに健康な内臓欲しがってる人いるんでしょ? 人助けになるんでしょ? いいから探して! 私本気なんだから! 家にも帰れないしもう行くしかないの! 私、本気なの!」
「そんな……わかったわよ。もう信じらんない! そのかわり絶対後悔しないでよ? どうなろうと私は知らないからね」
(こんなとこで手術? 香世の言った通りだわ)
「ちょっと、何見てんのよ! 日本人が珍しいの? お金ならあげないわよ!」
「違う、彼らは手術待ち。あなたの内臓出してすぐ移植するから」
「え? すぐ? そういうもんなの?」
「順番待ちで手術して欲しい人はたくさんいる。手術で助かる命は多い。間に合わない人は、そのまま死んで行く。だからみんなあなたに感謝している」
「感、謝……?」
「若いのによくがんばった。ほら、約束の金ちゃんと受け取れ」
(痛い痛い痛い痛い……信じられない。すごく痛いし気持ち悪いし吐きそう。麻酔切れるの早過ぎでしょ)
「いい、やだ! いらない! こんな思いして、その上それっぽっちのお金……いらない! うるさい! お礼なんか言うな! 私みたいな汚い女に感謝なんかするなーー!」
……
「ねぇねぇ、道端で寝ると風邪ひくよ?」
「なー……に? 誰?」
「それにしても君人気者なんだね。嬉しそうな顔した人たちがずっと君の顔見てたよ。僕がきたらみんな逃げちゃったけどね」
「あ、そうか、私……。あー、ほんとバカみたい。何もかも全部が。命を売ってお金だなんて……私が一番バカ、大バカ!」
「へぇ? じゃあ君は彼らに大事な命を寄付してあげたってわけなんだね?」
「知らないわよ! 何なの? あんた誰? ナンパなら勘弁してよ。私今それどころじゃないの……」
「おやおや困ったね。きれいなオーラのお嬢さん。僕は君に、とっても大事な話があるんだけどいいかな……」




