10、※本作品は全年齢版です
「……レベッカ。落ち着いてくれ。僕はそこまで上等な人間じゃないよ」
スカイ・キャリアベースは、耳元で囁いてきたレベッカをそのまま抱き寄せると、改めて向かい合った。
彼女の顔は真剣そのもので、受け入れるにしろ、断るにしろ、真摯に対応せねばならない、そう思っての事である。
「……そりゃ、前々からレベッカの好意については分かっていたよ。あれだけ露骨にアプローチかけてくるんだもん」
「それなら……受け入れてよ」
「僕はね……前々から言っているが、この幼馴染の妹分って関係を崩したくないんだよ」
そう、出来るだけ真剣に言った。
「……私はこの関係を一歩進めたい」
「……怖いんだよ。正直言うと」
スカイはレベッカに正直に言った。
「怖い?」
「僕自身……結構、依存気質というか……「何も言わなくても僕の事、分かってくれるだろ?」みたいに好きになった相手に、全幅の理解と服従を求めてしまうタイプだからさ……なんていうの……? 今の精神的に未熟な状態で恋仲になっても、共依存になりそうっていうか、どっちも不幸になりそうっていうか……」
本音を出した所で、レベッカは更に続ける。
「……私、スカイの事、支えるよ? 全力で」
「レベッカのそういう健気な所も逆に怖いんだよなぁ……多分、僕も全力で甘えてしまう」
スカイはため息をついて続ける。
「……結論から言うと、恋仲になったらレベッカの事はめちゃくちゃ大事にはする。その代わり、めちゃくちゃ精神的に依存するし、めちゃくちゃ束縛もする。他の男の連絡先とか全部消させる。……で、知っての通り僕モテるから、アリスとかマリー先輩に強引に迫られたら浮気とかもしちゃうかも。……それでも良ければ……僕を好きな幼馴染がここまで勇気を振り絞ったんだ。こっちも覚悟を決めて受け入れるよ」
「ねぇ、だいぶ最低な事言ってる自覚ある?」
「ついでにこう見えて性欲かなり強いから、僕がしたくなったらいつでもHしてもらうよ。家でも野外でも学校でも」
「野外でも学校でも?!」
そこまで言い切ったスカイにレベッカは少し困惑していた。
「……自分で自分の恋人として見た時の短所を上げているんだよ? 15にして、ここまで自己分析出来てるの凄くない? 褒めて?」
「……やっぱりサイコパスだって。スカイ」
「そりゃ、エリザベスにあそこまでボロクソ言われるわけだね」
少し自嘲しつつ、スカイは目線をベッドの方に移した。
「……どうする? こんな獣の伴侶になる覚悟、ある? それでもしたい。どうしてもしたいって言うならどこまでも付き合うけど」
「……」
少しレベッカは困っていたが、やがてスカイから離れた。
「……一線を越えるのは、お互いにもう少し成長してからにしようか」
「……分かってくれたか。レベッカ」
安堵しつつ、少し残念な気持ちも抱えながらスカイは言う。
「でも、スカイの事、諦めた訳じゃないから……スカイのダメな部分も受け入れる覚悟が出来たら、また挑戦するかも」
「……ああ。その時は、僕も受け入れる」
レベッカは強引に笑みを作った。
「…………ごめんね。課題やってたのにお邪魔して」
「気にしなくて良い。……また明日」
「うん。また明日……」
そう言うと、レベッカは部屋から出て行った。彼は思わず大きく息を吐いた。
「あーら、残念。Hなイベントが始まるかと思ったのに」
頭の中に声が響く。今日から彼の中に居候する事になったネクロディアの声だった。
「この話は全年齢版なんだよ。それに……レベッカの事は本気で泣かせたり、悲しませるような事、したくないから……」
「なんだよ。まじめ君かよ~。つまんねーの。せっかくのチャンスだったのに~」
ネクロディアはつまらなそうに吐き捨てる。だが、この選択は間違っていないと思いたい。
窓の外には、雲一つない空に月が一層煌々と輝いていた。




