11、火炎地獄
「ジュリアにも言ったが、敵さん完全に油断してる。もう帰宅準備始めてたんじゃない? 全部奪うには今だよ。物資も、敵兵の命も」
「流石グース隊。見事な着弾率! 敵兵が大慌てで出てきている! レナ、撃って! 撃って! 戦果は大打撃! 大打撃!! 大っ打撃!!!」
スカイ・キャリアベースの無線に通信が入る。声の主はヴァルチャー隊の狙撃手の一人、テレサ・トーネードから、そして、もう一つは興奮気味なオウル隊第3小隊の通信手、エレオノーラからだった。彼は、それを満足げに聞くと、脇に居た兵達に告げる。
「まだだ。もっと戦果を! もっと戦火を!! グース隊は第二射用意! イーグル、ウッドペッカー、コーモラント爆破班。突入! 捕虜を取る必要は無いぞ。今回に関しては、敵は皆殺しにしろ。我々の存在の情報を残すな! 投降してきても無視して撃て!」
「仰せのままに、ご主人様。……なんと美しい地獄なのでしょう……あそこに、我々もこれから行くのですね」
あたり一面火の海になった集積所。オリヴィアはそれを眺めながら火炎放射器を作動させ、ノズルに火を入れた。
そのまま恍惚と部下のイーグル隊員達に告げる。いつものスカイの言葉でクネクネしているオリヴィアだが、珍しく、ドスの利いた声で部下に、そしてウッドペッカー、コーモラント隊員達に告げる。
「……ここにいるのはこの歳で戦争に順応した、人殺しが好きで好きでたまらない、どうしようもない化け物娘たちですわ。あそこでしか生きられない、あそこにしか行きたくない…………もう、元のお嬢様には戻れない」
イーグル隊の面々のうち、数人が 共感し、うなづいている。貴族階級出身者が多いイーグル隊だが、もはや、彼女達は戦士もしくは狂戦士の雰囲気を醸し出しており、その眼光はまさに吸血鬼を思わせた。
「……行きますわよ、前線豚共。戦争ですわ!」
突入! の声と同時に、紅蓮の炎に焼かれ燃え盛る集積地に突撃していく少女達。
……なんというか、先ほどの演説効果もあり、皆の士気は妙に高い。すぐに怒号と共に発砲音が聞こえる。聞こえるのは敵の兵士の断末魔だらけで、相当一方的な戦闘が展開されていると見える。
頭の中では、「この作者、ほんと某吸血鬼漫画好きね……」とネクロディアの声が聞こえる……。
「我々も突入する。アーマード補給車が到達するまでに敵を殲滅するぞ。近隣の基地から増援が来るのに、2時間。タイムリミットは長くない」
「はっ!」
「……」
素直に敬礼したキャサリンに対し、レベッカは、心なしか困惑している様な気がする。
「どうした? レベッカ」
「いや……スカイって変わったよねって。そんな皆殺し命令出すようなタイプだっけ……」
その瞳には、当惑と若干の怯えがあった。恐ろしい化け物か、悪魔でも見るような眼であった。
「……俺は、あのブラッディ・ダラで3800人を殺した殲滅作戦を立てた男だぞ? ……今更、天国には行けまい。ここまで来たらからには1人殺そうが1000人殺そうが、誤差みたいなものだ。やるからには楽しまないと、な!」
「……」
スカイはあくまで悪戯っぽく軽い感じで言ったが、レベッカの瞳には少しの悲しみが宿る。
「……ごめん。妙な事言った。……スカイ、私達の事、置いていったらダメだからね。貴方が死んだら、後を追うような子達ばっかりなんだから」
「ああ。地獄に落ちる気は無いよ。……さ、行こうか。時間がない」
彼は、悪魔を思わせる嗜虐心を含ませた笑みを浮かべて、二人に集積地の入り口のゲートを示した。
夜中の3時に後方の田舎補給基地が完全武装の最精鋭ゲリラ(練度、士気、殺意MAX)に襲撃されたら……お察しください。(援軍到着は最短で2時間かかります☆)




