表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/132

2、作戦会議2

「作戦は、奇襲でいきます。いつも通りのゲリラ戦術。攻撃開始は0300。まず、ヴァルチャー隊が先行して敵の通信兵と見張りを排除。その直後、イーグル、ウッドペッカー、コーモラント第二小隊の各隊が一斉突入」


  エリザベスの声が淡々と響く。


「イーグル隊とウッドペッカー隊は敵守備隊の排除。コーモラント第二小隊は通信塔の爆破と倉庫の鍵の解除を。グース隊は支援砲撃。スワロー隊は補給車に極限まで物資を積載して、敵の増援が来る前に撤収します」


  「オウル隊は先行偵察と、作戦時の遠距離支援もお願いします。ペリカン隊は前線での応急処置と……最悪の場合、遺体の回収も」


  このあたりの役割分担はスムーズに決まっていく。 奇襲作戦ではいつものパターンだ。 夜な夜な、反政府軍の補給隊や補給基地を襲撃しては逃げる、というゲリラ戦はこの大隊の十八番だったものだ。


 戦況悪化に伴い、何故か正面攻撃や撤退戦に放り込まれる事が多くなり、この大隊の本来の強みを活かせず、最近はスカイも隊員達も不満気味だったのである。


 とはいえ、今回は総勢たった100人の寄せ集め精鋭で、これをこなさなければならない。


「敵を焼き尽くして差し上げますわ! 腕が鳴ります!」


  自信満々に笑うのは、イーグル隊中隊長、オリヴィア・ランサー。王都出身の軍事貴族の娘、15歳。緑髪をツーサイドアップにして、銀細工を思わせる銀色の瞳と優雅な立ち振る舞いに反して、持ち武器は火炎放射器というギャップの塊。


「……オリヴィア、間違っても物資を燃やすなよ?」


「もし燃やしたら……ご主人様がお仕置きしてくれますか?♡」


「ははは、そのときは火あぶりにしてやるよ」


「はうぅっ! ご主人様に身も心も溶かされるなら、このオリヴィア、喜んで火刑に処されますともぉぉ……!」


「……だめだこりゃ」


  なお、彼女はスカイのことを『ご主人様』と呼ぶ、生粋のドMである。 最初は彼のことを『貧民王子』と見下していたはずなのに、気づけば懐かれていた。


  スカイの誕生日には、「この卑しい私めにお使いくださいまし!」と、鞭と縄と……その他、とても全年齢版では書けない様な道具を大量に送りつけてきたこともある。まあ、この隊で変人なのは彼女だけでは無いので、浮くどころか、むしろ666大隊では馴染んでいるが。


 そのくせ、火炎放射器の扱いは一流で、幾つもの陣地やトーチカを熱消毒してきた。ついたあだ名は「ファイアフライ」「トーチカバスター」。


「コーモラントは爆破担当か……うちの第二小隊を連れていけば、なんとかなるでしょう」


  そう呟いたのは、工兵部隊コーモラント隊の隊長、アリス・アリゲーター。15歳。 進路希望書と志願兵希望書を間違えて提出し、こんなところまで連れてこられた気の毒なドジっ子ヤンデレ娘。


 ドジっ子、ヤンデレ、発明家、そしてスカイの浮気相手(正室公認)という属性四重苦を背負いながら、今日に限っては妙に冷静だった。


  ……昨夜の号泣タイムで、スカイにそっと抱きついてきたのが効いたのか、どこか満足げですらある。


 ちなみに、666大隊の補給車――本来なら政府軍の正式採用補給車であるはずのそれも、コーモラント隊の手によってミニ四駆のノリで魔改造されている。


  もはやシルエット以外に原型はなく、現在は『アーマード補給車』と呼ばれる装甲車紛いの物体と化している。 実際、火力こそ無いが、足回りと防御性能は異常に高く、敵弾を浴びても大抵走り抜けるため、実質これも戦力としてカウントしていいだろう。


 666大隊が誇る補給車――もとい、アーマード補給車について、更に少し語らせてもらおう。 元々は、王国政府軍が採用していたグラフグラード製の標準型補給トラックだった。


 寒冷地であるグラフグラード産だけあり、自動車の王様、天照皇国製のトラックには劣るものの(天照は軍事物資の輸出には極めて奥手で、軍用トラックはほぼ市場に流通しない。なお、民間用の中古車はバンバン入ってくる為、それらは政府軍反政府軍共にテクニカルとして積極的に利用している。欺瞞!)、本来なら悪路にも強く、積載量も多い、前線の補給任務をこなす優等生だった。


 ……だったのだが。 この車両が、あのコーモラント隊の手に渡ったのが運の尽き(あるいは始まり)だった。


  アリス「だってそのままだと、面白くないじゃ~ん!」

 エレナ「走るだけじゃつまらないから、ちょっと火器管制システムも積んじゃいましょ☆」

 フローラ「ついでに、余ってた敵軍の装甲板も使いましょ! もったいないし!」

 マルタ「ついでに武器も載せれるだけ載せて……」


  ……などと、ノリと勢いと技術力に任せて、純正パーツどころか、市販パーツ、ジャンク、敵軍の鹵獲品までかき集めた挙げ句、フレーム以外ほぼ別物にされてしまった。


 車体には追加装甲、サスペンションは強化済み、なぜか前部にドリルがあり、排気管は横に飛び出し、荷台にはシュルツェン(対物ライフル用装甲)まで付いて、車体からは機関銃がハリネズミの様についている。


「補給車ってなんだっけ……?」


 と、誰もが思ったが、使い勝手は異常に良い。 実質、『補給もできる装甲車』として、いまや666大隊の前線支援に欠かせない存在になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ