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1、作戦会議1

 

「と、いうわけで、殿下も吹っ切れたということで、早速……物資かっぱらい作戦、バンデット作戦の会議を始めちゃいます! イェーイ! ぱふぱふぱふ!」


 廃村の廃教会に集まったのは、我らが666大隊の幹部たち。スカイ、エリザベス、そして各中隊の隊長たちだが、その中で司会進行を務めるエリザベスのテンションがおかしい。


「今日のエリザベス、テンションおかしくない……?」


 クリスティーナが隣のバルチャー隊中隊長、ジュリア・ハリアーに小声で話しかける。


「まあ、王都陥落以来、塞ぎ込んでた隊長のことを色々心配してたからな。あれでも喜んでるんでしょ……」


 青い髪のツインテールをなびかせたジュリアは、にやりと笑う。

 

 現在の666大隊は8中隊から成り立っている。

 

 歩兵隊の主力、イーグル隊。


 狙撃隊ヴァルチャー隊。


 機関銃隊ウッドペッカー隊。


 偵察隊オウル隊。


 砲兵隊グース隊。


 補給部隊スワロー隊。


 工兵隊および整備隊コーモラント隊。


 衛生兵隊ペリカン隊。


 兵種は多彩だが、残ったのはわずか100人の敗残兵の十代の少女達。


 この場にいるのはその8中隊長とスカイ、そして参謀のエリザベス。計10人が大隊幹部だ。


 ちなみに、どいつもこいつも能力はあるが変人だらけ。


 この大隊では、生存率とキャラの濃さが正比例しているのかもしれない。


 まず口を開いたのは補給部隊スワロー隊の隊長、シャーロット・サイドワインダーだった。


 18歳。赤髪蒼眼のいかにもお姉さんな雰囲気だが、実はガチレズでよく他の大隊員をいやらしい目で見ている問題児その1。


 ちなみにスカイも捕食対象の一人らしく、強引に迫られたことも一度や二度ではない。都合よくレズとノーマルを使い分けるな、と彼は常々思っている。


「単刀直入に言う。物資が尽きかけている。食料はあと3食分。弾薬はあと一度敵と交戦したら尽きる」


「……マジか? あんなひどい味の戦闘糧食でも、無くなると寂しくなるんだが」


 ヴァルチャー隊の隊長で凄腕狙撃手のジュリア・ハリアーが呟く。16歳。青い髪をツインテールにした、翡翠の様な緑眼の通称『666大隊の至宝』あるいは『陰湿狙撃手』。


 敵を即死させず、それを助けに来た仲間を次々撃ち抜く畜生戦術で500キルを打ち立てた女。元々没落貴族の令嬢で、人生に絶望し、諦観していた所、徴兵された666大隊で狙撃の才能が開花し、英雄と呼ばれるまでに上り詰めた女。


 普段は爽やかだが、内面は承認欲求の塊で、スカイが彼女を褒めるかどうかで、その日のテンションが露骨に違う。ちょっとめんどくさい系女子。


 そんな承認欲求モンスターと言えど、飯がなければ生きられない。


「……まだ希望はある。マリー」


「はっ。偵察部隊から報告いたします」


 テーブルに何枚かの写真を並べたのはマリー・ホーネット。オウル偵察隊中隊長。


 この中では比較的まともで、きっちり仕事をこなす真面目な16歳だ。


 ピンクの瞳と、金髪をポニーテールにした少女で、全身から「お姉ちゃん感」が溢れている。王都が健在だった頃は、スカイが、面識のなかった父親にあたる国王(実質他人)にパワハラされ、ストレスを溜めていた時に慰めてくれたのも彼女だ。


「オウル第3小隊、『ラッキーシスターズ』の三人娘が、敵の物資集積所を発見しました。ここからは少し離れていますが、補給車がギリギリ往復できる距離です。敵の警戒も薄く、666大隊の練度なら十分、殲滅して物資を奪取できるはずです!」


「ラッキーシスターズか! お手柄だな! 二階級特進もんだ!」


 ジュリアは拍手して喜んだ。ひとまず餓死は回避できそうだ。


「彼女たちには、666大隊初陣の時も助けられたわね」


 そう言ったのはグース隊隊長、ヴィクトリア・ストライクイーグル。17歳。炎を思わせるオレンジ色の髪と瞳が特徴。


 元は王都のエリート学校のお嬢様。現在は標的をぶち抜くことに快感を覚える天才砲手である。グース隊もオウル第3小隊には幾度となく助けられている。


 偵察隊オウル隊にあって、オウル第3小隊。通称『ラッキーシスターズ』は初陣以来、敵を見つけ、撃たれながらも、毎回、全員生還し続けている。


 もはや、ネクロディアの触手で溶かされることもなさそうな豪運の持ち主達であった。


 『クラッカー作戦』で初出撃した彼女たちは、早々に敵部隊を発見し、グース隊へ位置を通報。ヴィクトリアが砲撃し、敵を敗走させて大隊初勝利を戦死者0で飾った。


 またしても彼女達大隊が救われた形である。


 昨晩――部隊全員が号泣したあの一幕でも、オウル第3小隊は偵察任務で外に出ていて、あの修羅場には居合わせなかった。


 ある意味、それもまた彼女達らしい豪運なのかもしれない。


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