おまけ1 触手
「……大隊長殿。昨日は、すまなかった」
ウッドペッカー隊第二小隊。オードリー・フェロン。脱走兵殺しのエスケープキラーにして、昨晩、隊長であるスカイに本音をぶちまけた少女。
粛清の対象にするのは明確な脱走者に限り、私情は一切挟まず、警告の段階で戦線復帰すればそれ以上追及しない、と筋は通す事から、元々畏怖はされども嫌われてはいなかったが、心なしか隊内の彼女達に対する見方もより柔らかくなった様な気がする。
「いや。むしろ……本音を聞かせてくれてありがとう。それに……督戦任務も、だ」
「……あれは私たちに与えられた重要な仕事。大隊長殿は気にしなくていい。私達が悪役になればあなたは手を汚さずに済む。……それよりさ、大隊長殿」
「ん?」
「ちなみに……触手ってどんな感じなんだ?」
単に興味本位といった感じだ。その目は督戦隊のものではなく、好奇心旺盛な16歳の少女のものである。俺は少しためらいつつ、触手を背中から生やした。蛙の舌を思わせる粘膜が気持ち悪い音をたてる。
「……ほれ。(うねうね)」
「うっわ! きっっっっっっっしょ!!」
数歩あとずさるオードリー。その目には後悔の色があった。
「やっぱ全員吸収とか、ナシで! マジでナシで!!」
「はは……安心しろ。しないよ。……たぶん」
「たぶんって言った!!」
「ふふ……朝から元気ね」
少し離れたところでそのやり取りをレベッカが微笑ましく眺めていた(正室の余裕)




