11、修☆羅☆場
「……えっ?」
それは、あまりにも自然な口調だった。そして、あまりにも、自然に突き刺さる一言だった。
クリスティーナのまぶたが、数回、反射的に瞬く。
頭の中でその言葉を何度か咀嚼して、ようやく意味を理解する。
「……そ、そうなんだ。そっかぁ……ふふ、そっか……もうこの時点で二股かけてるの……」
「厳密には8股だな。愛人が6人いるから」
「……は、はちまた」
「マルタに、エレナに、フローラに……」
「いや、言わなくて良いよ……」
笑っている。だが、目が笑っていない。その微笑は、まるで油を挿してない機械のごとく、ぎこちない音を立てていた。
スカイは気づかないふりをする。あるいは、本当に気づいていない。
「やらかした」などと微塵も感じていない表情で、再び焚き火に視線を落としていた。
「いつから?」
「レベッカとは部隊結成直後。アリスとは大体半年前だな。一応、アリスとの仲はレベッカ公認だぞ」
「あはは……最初から……か」
「まあ、特にレベッカと致したのは部隊結成直後だし。今さらどうこう言ってもな」
「……妹分その2の私には、相談もなかったんだ?」
「お前に話してたら、隊の皆にバレるだろ。あの頃のお前、お喋りだったし……ま、察しの良いやつには、もうバレてそうだが」
「へええ……そうだったんだぁ……」
そのとき、クリスティーナの目の奥にほんの一瞬、何かが揺らいだ。
焚き火の光のせいかもしれない。だが、それは確かに本音だった。
――この人、やっぱり根っこは自分勝手だ。
「……でもまあ、いいよ。私、正室争いに参加する気はないし。そんなくだらない事に神経注ぎたくないし」
「……なんか刺があるぞ」
「気のせいじゃない?」
声のトーンは変わらず明るい。だが、まるで氷のような温度が、彼女の言葉の端々に滲んでいた。
「それにね、別に『正妻』になれなくても、私は『母』になるから」
「……は?」
「だって、家族でしょ? 大隊は家族。なら、誰かが『お母さん』にならなきゃ。全員『お嫁さん』じゃ、子どもが混乱するでしょ?」
「いや、それは……お前……」
「私が『母』で、レベッカとアリスが『妻』で、オードリーたちは『娘』で、エリザベスは『親戚のお姉ちゃん』で……うん、すごくうまくいくと思うよ」
スカイは引きつった笑いを浮かべた。クリスティーナの目に光は灯っていない。
まるで、自分の中で組み立てた理想郷を、そのまま現実に押し広げようとしているような……。
「なあ……お前、ちょっと怖いぞ」
「ふふっ、隊長こそ。……今さら怖いとか言う資格、あるの? 覚悟、決めてね?」
その微笑に、思わず鳥肌が立った。
スカイ・キャリアベース。
そして、666――悪魔の数字の名を冠した大隊の、家族化計画は、着実に動き始めていた。
ブラックバニアの大人達、無責任に戦争煽った挙げ句惨敗。しかも少年少女兵盾にして敵前逃亡がデフォだから子供達が大人に「ならざるをえなかった」んだよね……だからそのメタファーとして学徒兵同士でヤりまくってるんやね(適当)




