21.第二次市民戦争3
ジャニーの死を聞いた人族のカミーユはひと事、漏らす。
「これでゴミの処分は終わった。」
所詮、ジャニーなどは使い捨ての道具に過ぎず、役目が終わればゴミ同然であった。
元々、東昇帝国への芸能人(ゲイ等)を使った対策として外交官特権を与えたスパイだった。
つまり、コミュニスト(凶産主義者)であり、ディープステートの使い捨ての駒だ。しかし、今の米国の大統領は虎府であるので、ディープステートとしては消えてもらう必要があった。今回、ちょうど始末できたという事。
それで良しとしよう。そう考えて現実に思考をもどす。
現実に思考を戻すとカミーユはRU連合(ラディカル連合)のデジタル規制法についての報告書を読んでいた。
内容は概ねロダンたちが目指す言論統制をヘイト規制などの難癖で、企業に対し売上の6パーセントの罰金をかけるものだ。
ライオン族のホン・ライアンが纏めたものである。
負けてはいられないな。
これがカミーユの率直な感想だ。
いわゆる隠れた権力の中で、カミーユの愛するロダンはそこそこ上部にいるが、それでも安心できるわけではない。
まだまだ米国は健在である。
ほとんどのテレビ、新聞を動員して反虎府宣伝をしたが、効果はなく米国では虎府大統領の出現をゆるしてしまう。
このままでは米国は再び強くなってしまう。
これでは米国の弱体化は望めない。
この上は、第二次市民戦争を起こして米国を二分してしまうしかない。
カミーユも、ロダンもそのように考え、準備してきた。
サン・サーンスの交響詩が流れ、定例の繰り返しが済んだ後、カミーユが報告する。
「既にテキサス国での戦争が始められています。直ちに援軍を送るべきです。」
ロダンは周囲を見渡す。
「然り!」「然り!」「然り!」
ロダンは宣言する。
「BLM(Black Like Monsters)を率い、彼らを殲滅せよ!」
BLM(Black Like Monsters)とは、アンティファなどを纏めた米国破壊活動の為の日雇いたちだ。この名称は全身を黒い布や、被り物、シャツやズボンで覆う為に使用しているからだ。つまり、黒い存在が怪物を連想させている。
直ちに何人かが会議室から出る。
砦の周囲では、ハイエナ族たちの攻撃は止み、双方が死体の片付けを行っている。
アライグマ一家と砦のイイダとの間で暫定の12時間休戦が成立していた。
勿論、アライグマ一家は、カリフォルニア国からの援軍を待って総攻撃をしようとしており、イイダも砦に対して外部からの援軍を期待していた。
双方が援軍を期待して取り敢えず銃撃は起きていない。
そんな中、砦の中である少年が目を覚ます。
彼の名前は、ラスケル。彼はアライグマ族であり、だからこそアライグマ一家の戦闘員としてこの戦いに強制参加させられたのだが、トオルの電撃で気を失ったのである。
彼以外は電撃による電気ショックに耐えられず死んだ。若かった彼だけが奇跡的に助かった。
鉄帽、鉄仮面、鉄の戦闘服は全て外されており、ライフル銃もないが、手には手錠がしてあった。
横にはコアラ族のシャリン・レイクンがいた。
シャリンが聞く。
「起きた?」
ラスケルが頷く。
シャリンが自己紹介する。
「私、看護師見習いなんだ。だから、ここで君を監視兼看病してたのさ。」
ラスケルが聞く。
「看護師見習いなら、何故ここに?」
看護師になるはずの人が何故、この戦場にと思うのは当然だった。
「本当は、ここで人生をリセットするつもりだったの。」
「え?」
思わずラスケルが驚く。
「でも、ディープステートたちの攻撃が始まって戦う事になったの。」
意味が分からないラスケルの表情を見てシャリンがラスケルにも分かるように言い直す。
「私、米国の嘘つき(ディープステート)たちを許せ無かったの。」
ラスケルは思わず納得する。
そして、シャリンが聞く。
「その年で参加した事情を聴かせてほしいの。」
ラスケルの姿はまだ少年であった為、事情を聞く必要があるとイイダが判断し、シャリンが担当になった。実際、ラスケルはまだ、十二歳だった。
ラスケルがカルフォルニア国で人攫いにあった事、そしてたまたまアライグマ族であった事から、今回の砦への強制参加させられた事を話す。
ラスケルが話終った時、ラスケルは泣いていた。
静かにシャリンが手錠を外しラスケルを抱きしめた。シャリンが言う。
「辛かったね。」
その言葉で更にラスケルが涙を流す。
「もう、十分君は頑張ったよ。」
シャリンがラスケルから聞いた話をまとめ、ラスケルが脱出する手はずを整える。
そこへ、人族のエリン・マルティネスが現れる。
シャリンがやりきれない思いをエリンに言う。
「ねえ、聞いてよ。この少年はカリフォルニア国で人攫いに遭ってこの戦いに強制参加させられたんだって。」
エリンがラスケルに同情して言う。
「全く、自由と民主主義が聞いてあきれるわ。」
シャリンが更に言う。
「何処の世界に犯罪者集団を招き入れる国があるなんて想像の斜め下を行くわね!」
二人はなんとかラスケルを家族の元へ送ろうとしたが、ラスケルが脱出しようとした砦は既に脱出が難しい状況になっていた。
へリンガー協会の砦の周囲は、カリフォルニア国からの増援として真っ黒な衣装をした人だらけとなっていた。
BLM(Black Like Monsters)が公称10万人、実態は約3万人に及ぶ様々な種族たちが白黒の腕章を着けて砦を包囲している。
更に装甲車には、俗にIB(Intelligent Battle groups)が乗っている。
彼らはそれぞれ有名大学からやってきたメンバーで、コミュニスト(均一主義者)たちだ。
彼らのほとんどは人族であり、親の代からの特権階級であり、年間1000万ドル、4年間で4000万ドルを支払える経済力を持っている家族の出身だ。
その経済力は、彼らが独占している世襲政治家の既得権益による。
ハバード大学から来ている人族、バーニ・サンダーが叫ぶ。
「最早、袋のネズミ、観念して内面の少女を引き渡せ!」
砦のイイダが答える。
「断る!人々の不幸を金儲けのネタにする者たちには従わない。」
バーニ・サンダーが叫ぶ。
「総攻撃だ!」
BLM(Black Like Monsters)が雄叫びを上げ、一斉に砦に向かって走り出す。
大地が鳴動しているかのように人々が動く。
まるでイナゴの大群が取り付くようにBLM(Black Like Monsters)が砦へと襲いかかろうかとした。
その時、砦のあちこちから無数の小袋がBLM(Black Like Monsters)に投げ込まれ破裂して当たり一面が真っ赤になる。
たちまちむせり、叫びを上げるBLM(Black Like Monsters)。
彼らは混乱して、砦から逃げ出す者たちと砦に向かう者たちが衝突してしまう。
やや、後ろから装甲車で様子を見ていたバーニ・サンダーは、その小袋の中身が赤唐辛子の粉末である事を理解する。
バーニーは激しく罵倒する。
「卑怯だぞ!」
直ちにBLM(Black Like Monsters)を砦から撤退させると、8台の装甲車を中心に四方から改めて再度攻撃にでる。
装甲車の周囲にはアライグマ一家の鉄仮面兵が護衛し、装甲車にある小型ミサイルを発射する。
勿論、砦側も各所からバズーカが発射される。
砦の上部と各監視所が爆破され、砦からのバズーカが発射され、装甲車のうち6台が破壊される。
砦側の一箇所で、エリンが装着車に対し、悪態をつきながらバズーカを発射する。
「クソッタレ、地獄に堕ちろ!」
しかし、シャリンもまた装甲車からの小型ミサイルの爆破に巻き込まれてしまう。
エリンの近くにいたシャリンも巻き込まれて意識を失う。
激しい攻防の後、既に残る装甲車は2台であり、砦からの攻撃は更に激しくなる。
バーニは悔しいそうに言う。
「撤退だ。」




