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2.なぜ自分が嫌いになったのか、話してみよう。

 少しだけ表情が明るくなったコーギー犬族のエースに対して、幽霊のシェーンが公園のベンチを指す。

 エースと透けているシェーンがベンチに並んですわる。幽霊が見えない人から見たらエースが一人でベンチにいるように見えるだろう。

 シェーンがエースに言う。

 「さあ、どうして自分が嫌いになったのか、話してみよう。」

 エースが何時も言われている言葉とは違う言葉に思わずシェーンに聞く。

 「何故、そんな事を僕に聞くの?」

 まだ、少しだけ怯えているエースにシェーンがゆっくり答える。

 「トランスジェンダーとされた多くの男の子、女の子には自己否定したい過去があるからさ。」

 自己否定したい過去、この言葉が鍵となってエースはエースの過去を探し始める。

 そしてエースの自己否定したい過去の記憶を噴出フラッシュバックさせる。 



 それは、まだエースが小さい頃、母親がスーツケースを引きながらエースに一言、さよならといい、ドアの向こうへ去る光景だ。

 その時、何が起きたのか、まだ幼いエースには分からなかった。

 後から、エースの母親が家出した事を知り、母親がスーツケースを持って出て行った意味を理解する。

 その光景を思い出して少し涙がエースの目に溜まる。

 「お母さんがスーツケースを持って、僕を置いて家出してしまったんだ。きっと僕が我がままばかり言ってたからなんだ。」

 エースの涙が頬を伝わる。


 「本当にそうなのかな?」

 シェーンの質問にエースが泣きながら言う。

 「僕じゃないなら、お父さんが悪いの?」

 シェーンがゆっくりと優しく言う。

 「小さな子供は、普通はお父さんもお母さんも大好きだから、お父さんが悪いとは思いたくない。」

 「やっぱり、僕が悪いんだ。」

 「でも、確かめて見ないといけないね。」

 「誰に?」

 「まず、お父さんにだな。」

 「でも、お父さんは僕の手術の事で悩んで酔っ払っているよ。」

 「大丈夫さ。まず、お父さんに聞いてみよう。でも、その前に少し待っててくれるかな?」

 エースが頷くと、シェーンが姿を消す。


 "きっと戻って来るから待ってて。"

 シェーンの言葉だけがエースの耳に届く。

 公園のベンチからシェーンが姿を消す。



 そして、暫くたつとテンガロンハットを被ったメンフクロウ族の足がある男がエッホ、エッホと言いながら腕を振ってエースの前に現れる。


 幽霊だったシェーンが足のある男としてエースの前に現れたのだ。ちなみにメンフクロウ族は人との遺伝子操作の結果、翼を失い腕を得た。

 ただ、幽霊だった時に比べ顔はメンフクロウ族のふっくらした顔をしている。

 でも、エースには誰だか分からない。

 「貴方は、僕に何かようですか?」

 「私はシェーン。近くに利用できる体がこれしか無かったのさ。」

 エースは思わず驚き目が真ん丸になってしまう。

 「どうやって、復活したの?」

 「いいや、復活したのではないよ。ただ、さっき近くで倒れて意識を失った人の体に憑依しただけさ。」

 「そんな事をしていいの?」

 「良いも悪いも、本来の持ち主が体を放棄してるからね。このままでは、本当に死んでしまうからとりあえず死なないように預ったのさ。」

 まるで小説とか、マンガのような出来過ぎのように感じるがエースはまず気になっている事を聞く。

 「それで、酔っぱらっているお父さんとどう話すの?」

 「まず、スーパーマーケットに行って、ビールを買おう。」

 エースは困惑した表情をする。

 ただでさえ、酔っぱらいの父親を更に酔わせてどうやって話しをするのたろう?

 ?マークが頭だけでなく、顔にも出るが、そんなエースの手を引いて、スーパーマーケットでシェーンはビールを買う。

 「御酒は強いの?」

 思わず聞くエースの問いには答えず、エースを連れて今度は、ドラッグストアにシェーンが寄る。

 全く訳が分からないエースにシェーンが説明する。

 「ここで、酔いにくくなる薬を飲んでから、お父さんと酒を飲みながらお母さんが家出した理由を聞くのさ。」

 そう言うとシェーンは、エッホ、エッホと思わずいいながらエースの家に近くに止めてあった止めトラックに向かう。

 エースが思わず聞く。

 「かってに使っていいの?」

 「これはこの体の本来の持ち主のトラックだから大丈夫。」



 家に着くと、ゴミが乱雑に散らかっている家の中でエースの父親、モーガンがイビキをかいて寝ていた。

 モーガンがいびきをかいて寝ている部屋には、かつて父親が陸軍で狙撃手として優勝したトロフィーと賞状がホコリにまみれていた。


 エースが乱雑に散らかっているゴミをどかして、シェーンが通れるようにする。

 シェーンがモーガンに近づく。

 「ビールを持ってきたよ。」

 シェーンの呼びかけにモーガンの目が開く。

 シェーンの手にあるビールを見る。

 「もっと強い酒はないのかよ?」

 「持ってきていないよ。飲まないのかい?」

 シェーンはモーガンとは初対面だ。しかし、酒を出す相手であれば誰であろうと飲んべえは気にしない。

 モーガンもやはり飲んべえである。気にしない。

 「いや、飲まないとは言ってない。」

 モーガンはそう言ってシェーンからビールを受けとり、ビールを開け、飲み始める。

 「聞きたい事があるのだけど、いいかな?」

 更にビールを飲むモーガンにシェーンが聞く。モーガンが酔った目で見る。

 「何が聞きたい?」

 「何故、奥さんが家出したのかな?」

 「なんでそんな事を言わなきゃいけない!」

 強い口調でモーガンが拒絶する。

 シェーンが言う。

 「理由は、あなたの息子、エースが母親の家出で自殺するほど悩んでいるからさ。」

 シェーンは、一瞬首を回してエースを見た後、モーガンに向き直る。

 正確には、母親が家出し、父親がアル中でその上に性転換手術をするかどうかで迷い絶望してエースは自殺しようとしていたのだが、酔っぱらいに話しをするので単純にしている。

 ぎょとした表情になるモーガンが、シェーンの後ろに隠れていたエースの顔を見る。

 暫くため息をしているモーガン。 


 誰も言葉を発しない。


 沈黙が暫く当たりを支配する。

 そして、モーガンがビールを一息に飲み言う。

 「ワイフが家出した理由は、きっと俺のせいなのさ。」

 エースが驚き聞く。

 「なんでお父さんのせいなの?」

 「俺のあそこが立たなくなっちまったのさ。」

 エースがモーガンの下半身のあそこを見る。

 中年になれば、誰にでも起きる可能性がある勃起不全。

 「ワイフは、余り気にしていなかったけど、俺にとっては、とんでもなく重大な事だった。」

 シェーンが補足する。

 「それで、ワイフとの間に溝が出来てワイフが家出してしまう。」

 モーガンが続ける。

 「ああ、そうさ。酒を飲んでいるから言えるが、とてもシラフじゃ、言えない。」

 シェーンがエースに言う。

 「君のせいではないとお父さんは言っている。だから、自分を否定するのは止めなさい。」

 エースが言う。

 「でも、お父さんがアル中なのは僕のせいだよ。」

 シェーンが言う。

 「何度でも言うけど、騙されていないかい?」

 モーガンがシェーンに言う。

 「誰が誰を騙すって?」

 シェーンが答える。

 「金が欲しいジェンダー凶徒が、あなた達親子を騙しているのではないですか?」


 この後、シェーンはジェンダー凶徒たちが、家族間のもつれ(心のトラウマ)を利用して、子供たちにホルモン注射をして、更には手術をして手術代を稼ぐ対象にしている現状を説明する。


 説明を聞いている間、モーガンはビールを飲む事を止めている。

 説明が終わった後、モーガンがシェーンに聞く。

 「じゃあ、俺は、死んだ息子と生きている娘を選択する必要は無かったのか?」

 「必要は無かったのですよ。本来は、なぜ、自分のことが嫌いになったのかを聞くべきなのですよ。」


 モーガンがビールを置く。

 暫くしてモーガンがエースを見て聞く。

 エースがシェーンの後ろから姿を現す。

 エースの目をモーガンが久しぶりに見る。

 エースの目に涙が溢れる。

 「パパ、、、」

 本当に久しぶりにエースの目をみたモーガンが言う。

 「自殺するほど悩んでいたのか?」

 エースが頷き、モーガンに抱きつく。

 モーガンがエースを抱きしめる。

 「バカだな、エース。」

 「だって、ママが家出したのか僕のせいだとおもったワン。」

 モーガンがはっきり言う。

 「エースのせいじゃない。」

 モーガンが強く強くエースを抱きしめる。


 暫くしてエースが言う。「少し苦しいワン。」

 やっと普段のエースに戻り、口癖であるワンが出てくる。

 モーガンがエースを放す。

 エースがウーンと背伸びする。


 モーガンが笑いながらエースを見ている。

 シェーンがそんな二人を見ている。


 そんな久しぶりの和やかな雰囲気を壊すように来客をつげる荒々しいノックがドアを揺らす。


 エースが不安そうにモーガンを見る。




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