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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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82/94

◆80 遥香ちゃんの誕生日でした。

 


 ホワイトデーの前日。

 遥香ちゃんは、夕飯をとると、一度自宅に戻りました。

 莉奈ちゃんは寂しがっちゃったけどね。


「だ、だって、その、おでかけだから……」


 お出かけ用の服を選びたいとか言うし!

 前日からデートの服を選んでくれるとか! 何それ、普段着でも遥香ちゃんの可愛さは全然損なわれませんけど⁉ 


「莉奈も~遥香お姉ちゃんにお出かけのおようふく、えらんでほしかった~」


 ここで普通、デートの話を聞いて、「莉奈もついてく!」という言葉があってもおかしくはないのだけど、そこはあらかじめ隆哉さんが莉奈ちゃんにこの日はパパとママとおでかけだよと先手を打ってくれたので、「莉奈もついてく!」のお言葉は回避された。

 莉奈ちゃんは「優哉おにいちゃん……ぼっち……」とか呟いたけど「ぼっち言うな! 部活あるんだよ!」と言ったので、優哉のお弁当はちょっと手の込んだものを冷食なしで作ろう。

 莉奈ちゃん……優哉はボッチにはならないから大丈夫だよ。


「莉奈ちゃん、ママにお洋服選ばせて!」

「ほんと!? 咲子ママ」

「可愛いの選ぼうね!」

「うん!」


 ちなみに、オレのデート服は優哉セレクトです。

 人生初の彼女とのデートだったので、オレは自ら優哉に教えを請いました。

 花火大会はほら、なんていうかデートだったけど、イベント要素が強かったから。


「まー中学校のジャージを部屋着にしていたお前が、ちゃんとデートの服を選ぼうとするとは、オニイチャン嬉しいね」


 うん……否定しない。オレはそういうところ、変わったと思う。けどこれはこれで悪くない変化だと思うんだけどな。




 そして遥香ちゃんの誕生日――ホワイトデーだ。

 部活に出る優哉と一緒に家を出た。


「夏休みの時のこともあるし、もし、元親父とエンカウントしたら、連絡しろよ?」


 おまえは、エスパーか!

 なんでオレが選んだデートコースを知っているんだ⁉


「初めてのデートってやっぱホームグラウンドとかお前は考えそうだ。自分の知ってる場所だし、遥香ちゃんもお前も料理好きだから絶対テンションあがるだろ、合羽橋とか築地とかTVでも時々紹介してるよな。外国人観光客の人気のエリアとか……この間もニュースでやってたろ」

「いや、ホームグラウンドってほどでもないよ。そっちまで出歩いてないし。ひきこもり……じゃなくて、その、中学の時はそんなに遠出しなかったし……かっぱ橋は浅草近いから、浅草寺とかもいいかなって」

「浅草寺! デートに!? 渋いチョイスだな、お前! いや……まて、一周回って、ありかも」


 だよな。

 ほら、東京住んでると、東京の良さというか名所的なところとか、あんまり出歩かないじゃん。デートは遊園地とかありだろうけど、浅草にもありますよ、遊園地、めっちゃ歴史あるはなやしき遊園地がね! 浅草寺の近くにね!


「でもまあ、あの子はお前と一緒に出掛けるなら、どこでも嬉しいんじゃないか? 莉奈も咲子さんも行きたがるとは思うけどね」

「優哉も行きたいだろ」

「行きたいねー可愛い彼女とさー」


 お、珍しい……優哉がそんなことを言うなんて。優哉のトラウマもちょっとはなくなってきたのかな? そうだといいな……。


「オレ、優哉と隆哉さんとアキバとかホームセンターにも行きたい。ていうか隆哉さんつきあってくれそう」

「あーそれ楽しそうだな、でもなんで?」

「優哉、小学生の時に自作パソコン夏休みの宿題で作ったっていうから、そういうの好きそう。あとホームセンターはなんとなく。文房具とかもさ。ああいうところ、なんかワクワクすんだよね」

「するな、でも、春休みは旅行の計画たててるぜ、親父」


 なぬ!?


「俺的にはそっちも楽しみだな。まあ、頑張れ」


 遥香ちゃんの自宅マンション前で、優哉はオレの肩を叩いて一人で駅へと向かって行く。ちょっとだけ優哉を見送り、オレはエントランスのドアをくぐって、遥香ちゃん宅の部屋番号を押すと、遥香ちゃんの「今、行きます」っていう言葉が聞えてきた。

 遥香ちゃんが自宅に戻って、デートの為におめかししてくれるの、正直言って、嬉しいし、こうして待ってる時間もすごく楽しい。

 楽しいとか、すごいな……心境の変化が……花火大会の時なんか心臓バクバクしながらピンポンしたもんなのに、なんだろ、この安心感というか余裕というか……こういうところだよな、リア充じゃないのか? オレ……とか思う時って。

 オートロックのドアを開けて、遥香ちゃんがきた。


「おはよう、遥香ちゃん」

「おはようございます、幸星君。なんか、不思議……」


 わかる!

 正月明けから二か月ちょっと、一緒に真崎家にいるけれど、こうして前みたいに、お迎えに行く感覚、新鮮ですよ!

 そして今日のお召し物! 可愛い!! もこもこセーターにベレー帽にマフラー。ショートパンツにロングブーツ! あとね! ニーハイ!! ニーハイとか!!

 お嬢様チックなワンピなんかもうちでも良く着てるしお似合いだけど、こういう衣裳も似合う! いやー元がいいから何を着ても似合うんだよね、知ってた!


「いつもよりちょっと違う感じ可愛い」

「あ、うん、ロングスカートとか多いから……でも、おでかけだから、変わったの着てみたの……変かな?……」

「似合う! すっごく似合う」


 ごめん、前のめりすぎたかも! 落ち着こう、いや、ここは全力で褒めるべきか。誰か正解を教えてくれ。


「い、行こうか」

「うん」


「はい」じゃなくて「うん」とか、距離感近くて、嬉しい。昨日一日真崎家にいなかっただけなのに。

 電車を乗り換えて、かっぱ橋道具街に到着。

 地下鉄の改札を抜けて、道具街へ向かう出入口の方へ。

 地上にでると、スカイツリーが近く見える。

 まずはTVで紹介された有名どころのお店に寄ってみようということで、二人で歩き出す。


「昭和の名残が残るアーケードがすごい」


 オレの呟きに、遥香ちゃんはうんうんと頷く。


「わくわくするね!」


 世代交代の波なのか、わりとお洒落な店舗もちらほら、二人でガラス越しに商品を見ると、顔を見合わせた。


「……遥香ちゃん……オレ、かっぱ橋を舐めてた」

「うん……プライスがすごい……お高い……」

「ま、まあ、何が欲しいってわけでもないので」

「そ、そう、ほら、下見と思いましょう! 幸星君」

「そ、そうだね!」


 箸が一膳5000円とかまじか⁉ の世界だったよ。

 でも切れ味良さそうな包丁とか、あとお茶碗とか、キッチンツールを見てもいい感じだ。(でも高校生の財布には厳しいものがある)屋台で見るかき氷機とかもある!

 食品サンプルのお店とかも店頭に飾られてるお料理サンプルの迫力よ……。

 予約してればサンプル作成の体験とかできるんだーへー……。

 あとコーヒー!

 でかいサイフォンを置くお店。コーヒーのいい匂いで、二人して「お昼にしよっか」と声を揃えたので笑ってしまった。

 そんなこんなで、メイン通りを行ったり来たりを繰り返して、お昼にしようと誘ったのはお蕎麦屋さん。

 財力あったら、もちょっと、上のランクのお店とか選べた……鰻とか天ぷらとかすき焼きとか、有名老舗どころとかさ……高校生な自分がちょっと悲しい。

 でも、なるべくお店の雰囲気が良くて、リーズナブルな感じ、ネットで調べていてよかった……ちゃんと予約も入れたんですよ。

 デートスポットからちょっと歩くけれど、浅草の街並み、歩きながら、遥香ちゃんと一緒に手をつないで。


「同じ東京なのに、知らない場所とか楽しい!」


 遥香ちゃん、よかった……楽しんでくれて。


「テレビで途中下車の旅的なやつとかやってるけれど、そんな感じになったけど……」

「うん! そういうの楽しい!」

「お昼食べたら、浅草寺まで足を延ばそうか」

「雷門!?」

「うん、仲見世通りとかも、ついでだから行ってみない?」

「わ、行ってみたい」


 お店について、席に案内されて一息つくけど、普通は、そうなんだけど、オレ的にはここが、ココがメイン!!

 本当は、ゴハン終わったら渡すのがいいのかどうなのか。もう、そこからグルグルしてますよ! でもね、向かいに座ってる遥香ちゃんを見て、渡すタイミングがどうとか、そういうことよりも、笑顔でニコニコ笑ってくれてる彼女が見たい。

 もう、本当にそれだけだったから、メニューを開いて「幸星君、どうする?」なんて聞いてくる遥香ちゃんに声をかける。


「遥香ちゃん」

「?」

「お誕生日、おめでとう、あと、バレンタインも、ありがとう」


 できればこれを受け取ってください!


 オレは一つの紙袋を遥香ちゃんに渡す。

 遥香ちゃんは、両手で小さな指先で唇を抑えてて、オレを見てる。


「あ、ありがとう……幸星君……嬉しい……あ、開けてみてもいい?」


 オレは無言で首を縦に振ると、遥香ちゃんは袋をのぞき込んで、まずはラッピングされた金平糖を取り出した。


「え、二つ?」

「だって、誕生日だし」

「覚えててくれたんだ……」


「覚えてるよ、だって、か、彼女の誕生日だよ?」


 忘れないでしょ、普通。

 でも、こういうの、そわそわするなー。

 元、アラサーなのになー……なんでかな。前の人生でやったことないことだからかな。


「嬉しい……あ、金平糖だ! 可愛い……大事に食べるね。あと、こっちは……なんだろ」


 遥香ちゃんは包装紙を丁寧に剥がす。

 箱を開けて、プレゼントを取り出す。


「こ、幸星君、これ、高かったんじゃない?」


 いやー調べるとそうでもないよ、多分。

 周囲から「もう、お前、指輪一択だろ!」とか言われてたけど、そんな度胸はなく……指輪って特別感がすごいだろ。遥香ちゃんは特別だけど、いきなり指輪は引くだろ。

 でも彼女へのプレゼントで貴金属アクセサリーしか思いつかなかった……。

 高校生がプレゼントするギリなプライスです。

 ネックレスなんです。

 でも、シンプル過ぎたかなー。

 チェーンがシルバーだし……。


「つけてもいい?」

「ど、どうぞ」


 遥香ちゃんはネックレスをつけようとしてて……。


「あ、あの、オレがつけようか?」


 だって、その場でつけてくれるとか思わなかったし。留め金、後ろって難しいし!


「え、う、うん、はい、お、お願いします」


 慌てて立ち上がって、遥香ちゃんのネックレスをつけてあげる。

 遥香ちゃん右肩に髪を寄せて、うなじを見せてくれるけれど、首がほっそ。怖い、壊れそう。

 ちょっと情けないけどぶるぶる震えたよ!


「できました」


 オレがそういうと、遥香ちゃんはオレの方に向いてくれる。


「に、似合うかな」

「か、可愛いデス」


 自己肯定感低いオレが、彼女に似合うかなって思って買ったプレゼントなので、「可愛い」って自然に出てた。

 ていうかさ、プレゼントを身に着けてくれた遥香ちゃんが、可愛いんですよ。


「あ、ありがとう、幸星君。嬉しい」


 オレ達のやり取りを見ていたお店の人が、なんかサービスで、お蕎麦の後に、小さなお団子をつけてくれた。

 お昼を食べて、ちょっと歩くけど、浅草まで。

 お散歩コースだけど遥香ちゃんとオレはなんかニコニコしてて、知ってるヤツがこの様子を見たら、「バカップル」とか言われそうだけど。

 浅草寺の風神雷神像を間近で見て「莉奈ちゃんなら泣いちゃうかもね」なんていいながら。


 こんな渋いデートコースで大丈夫だったかなって、思って遥香ちゃんを見ると、遥香ちゃんはニコニコしてて、可愛くて。


「一日で回れないね、また来たいな」って言ってくれた。


 繋いだ手が温かくて、多幸感ってこういうことをいうのかな……。

 なんてそう思った。


活動報告にツイッターにUPした80話のデートコースを満喫する遥香ちゃん画像をあげてます。

併せてお楽しみくださいm(__)m

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