学園が舞台の生徒会ってなにかと敵ポジションな気が(以下略)
まだ始まったばかりの三年生生活。
柴乃の耳に入ってきたのは、
美男美女コンテスト撤廃のお知らせ。
怒りをあらわにする柴乃に対し、
発案者でもある生徒会長は
負けずと意見をぶつけ・・・
「うっわ……これはまずいかも……」
配られた紙を見ながら、私は思わずつぶやく。
鳴り響くチャイムの音を聞きながら誰にも見られないようにと、点数が書いてある部分をそっと折り曲げて見せた。
三学年が始まって二週間ちょっと。新学期早々、実力テストをやらされた。
突然言われたテスト、というわけでもない。
ただ範囲は学校で勉強していたこと全部、というくらいに広くその割にものすごく難しい。
今回もその被害にあったものは多く、その一人が何を隠そう私だ。
「あっれー、柴乃ちゃん。その顔はもしかして赤点だったりする?」
「そ、そんなわけないでしょ!? 平均は越えてるわよ! 一応!!」
「一応って。それ威張るとこ~?」
「そういう隼人君はどうなのよ!?」
「オレ~? まあよくもなければ悪くもなし、かな」
そう言う彼の顔は何とも涼しげで、私よりは良さそうな雰囲気を醸し出している。
それがなんだか癪に障るようで、なかなか納得できなかった。
「にしても今回は難しかったよねーいやあ時間が足りないって思ったのは、久しぶりだったなあ」
「何よそれ。いつもは余裕だって言いたいわけ?」
「そこまでは言ってないけど。まあ、彼ほどじゃないかな」
そういう隼人君の目線の先には、言わずもがな馨君がいて周りに何人もの女子が囲んでいた。
すごい、さすがという声がするところを見ると、百点でもとったのだろうか。
さすが馨君は、なんでもできるってだけあって完璧だ。
ただ、横にいる寺濱君をはじめとした他の生徒を見ると比較的、肩を落としている人が多い気がする。
今回のは難しかった、ってだけあって成績悪めなのかな?
それとも生徒会長が言ってた通り、私達の学力が低下してる……?
「柴乃、どうだった? 実力考査」
「どうもこうも……最悪よ……どーせむぎちゃんはいいんでしょ」
「そんな、隼人君や浅沼君には負けるよ。でも難しかったね。先生が下と上の落差がすごいって言ってたの、分かる気がする」
あの日、生徒会長が言っていたことが本当ならこの結果にも納得がいく。
確かに私達は、浮ついていた部分があったのかもしれない。
この時期になるとみんなの話題は、美男美女コンテストばかりになる。
だから毎年実力テストは散々な結果だし、授業ごとにプチ説教を食らうほどだ。
だからってなくすことで、成績がどうなるってことはないと思うんだけど……
「あ、そうだ柴乃。聞きたかったんだけど、会長さんって一年生の時にコンテスト出たことあるの?」
唐突に聞かれ、ほえ? と声が漏れる。
一年、というと私がまだ馨君のこともろくに知らなかった時代。
最初だったから出るのを少しためらっていた私に、挑発するかのように姫野に誘われ結果二位で終わったんだっけ。
会長の存在さえ知らなかった私は、頭をかしげるしかなかった。
「いや、わかんないけど……なんでそんなこと聞くの、むぎちゃん」
「あ、うん。あの決まりのこと、よくないと思ってる子達が多いみたいで。委員長会議の時に、色々聞かされちゃったんだよね」
むぎちゃんは転入して間もない、というのにもかかわらずうちのクラスでは好印象だ。
しかもそのしっかりとした性格から、学級委員長に任命されている。
だから私以上に、会長と会う機会は多いみたいで……
「それで? その人たちはなんて?」
「うん……なんか、自分がコンテストでいい成績が取れなかったから、上位の人への逆恨みなんじゃないかって…」
うっわ、言われてるなあ。
まあ発案者が会長なら、無理もないことだけど。
あの会長、絶対友達少ないわね……同じ三年だけど、私も知らなかったし。
会長が美男美女コンテストねぇ……ん? 待てよ。そういえばそういう名簿を保管しているとこがあったような?
「そうだわ!!! コンテスト役員!!!」
「えっ、柴乃、急にどうしたの?」
「毎年美男美女コンテストの運営をする、コンテストの係がいたのよ! 一年の頃の委員さえ分かれば、その時の結果くらい持ってるかもしんない!」
「ああ、なるほど……でも二年前その係をしてた人なんて、知ってるの?」
痛いところをつかれ、うぐっと固まってしまう。
いいことを思いついたと思ったら、これだ。
蛍雪では恒例でもあった美男美女コンテストは集計や企画をするため、その係を設けられている。
私は私で出ることしか頭にないから、そっち側のことなんてまったく知らない。知ろうともしなかった。
仕事もそのコンテストの時だけだし、誰がやっていたのかなんて去年すら覚えていない。
こりゃ無駄な考えだったかなあ……
「柴~乃。いつま赤点とにらめっこしてるんだ? そんなに見てても点は伸びないぞ~」
そんなことを考えていた矢先、女子の中心にいたはずの人物・馨君が声をかけてくれる。
その後ろには寺濱君もいて、何か隼人君と話しているようにも見えた。
「うっさいわね、馨君。自分は満点だからって嫌味?」
「別に。彼女が落第しないかの様子見」
「誰が落第ですって!?」
「浅沼君。コンテストの係……っていうのがあるって柴乃が言ってるんだけど……一年の時に誰がやってた、なんて覚えてないよね?」
何も不信感さえ抱かせない聞き方は、さすがむぎちゃんだって思う。
私が聞いたら、また企んでるのか? って言われかねないし。
ってこれじゃ私が悪者みたいじゃない! 何よ、もう!
そもそも出てた側の馨君が、裏方の方のことを知ってるわけ……!
「ああ。一年の頃だったら分かるけど」
はい!?!?
「一年の頃だったらって! なんで知ってるのよ!? あんた、出てたでしょ!?」
「強制的に出されただけだけどな。手伝ったりもしたから、そのついでだよ」
「誰!? どこのどいつなの、それは!!」
「こいつ」
ぴっと親指だけ、後ろをさす。
もちろん、そこにいるのは寺濱君と隼人君の二人だけでー
「て、寺濱君があああああああ!?」
私の叫びが、始業のチャイムと同時に鳴り響く。
矛先が向いているとも知らずに、彼は目をぱちくりさせていただけだったー
(つづく!)
タイトルにも書きましたが・・・
私の作品はもちろん、
色々な作品で生徒会って敵になることが
よくありますよね。
生徒のためを思ってやっていることなのに、
報われていない気がして
生徒会経験者の私にとっては、
ちょっぴり複雑です。
にもかかわらず敵にまわしちゃう
私も私なのですが・・・
次回、打開策発見か!?