転入生といえば厄介者
杏珠のバイトを手伝っている最中に起こったピンチを
馨が華麗に助けてくれる。
夏休みも終わり、いよいよ二学期へ突入するが・・・
おはようと、挨拶の声が飛び交っている。
海に行ったとかで焼けている男子、彼氏に買ってもらったとかでアクセサリーを見せびらかしている女子……みんな、夏休みにあったことの情報を交換し合っている。
まあそれはもちろん、私達も同じことで……
「それで柴乃が手伝ってあげるって言ってくれたんだけど、その接客が姫野ちゃんみたいで……やっぱり双子なんだなあって思っちゃった」
「へぇ、そんなことがあったんだ。見てみたかったなあ、柴乃の接客」
あんちゃんとむぎちゃんが、くすくす笑いながら話している。
その話の内容にもされている私は、それがなんだか恥ずかしくて聞かないふりをしていた。
あんなに楽しかった夏休みも、すぐに終わってしまった。
今日からあっという間に二学期が始まる。
夏休みってどうしてこうもあっという間に終わっちゃうのかしら……物足りないったらありゃしない……
「柴乃、案外接客の才能あるんじゃない? 私のとこでもする?」
「冗談じゃない。私はもう接客はお断りよ」
「だと思った」
「なぁ2組の転入生見たか!? すんげぇ美人じゃね!?」
私達が話しているすぐ横で、男子達のうるさい声が聞こえる。
それがうっとおしくてしょうがない私は、すぐに注意しようと立ち上がったけど……
「ああ、俺も見たけどありゃ女神様そのものだぜ! 美男美女コンテストで一位狙えたかもな!」
「何度見ても飽きねぇよぉ。声かけてこねえ?」
「おう! 行こうぜ行こうぜ!」
美人、女神様、美男美女コンテスト一位……
自分に言われたら嬉しい言葉ばかりが、並べられる。
それでも男子が言っていたのは、私のことじゃない。
たかが転入生に、女神だなんて言いすぎなレベルじゃない?
どんなに美しくても、一位はこの私! 渕脇柴乃よ!?
むむむ……気に入らない……
「2組って確か杏珠のクラスだよね? 転入生が来たの?」
「あ、うん。なんかすごいきれいな人で、下級生の子達とかも見に来てた」
「でっ、でも!!! 私よりはかわいくないわよね!? あんちゃん!」
つい語尾が強くなってしまうのは、少し焦っているからだろう。
美男美女コンテストで一位を取ってから、ますますかわいいとちやほやされることが多くなった私。
なのにそんな美人が来ちゃったら、私の立場なくなっちゃうじゃない!
それにもしも、もしもよ? 馨君がその子を好きになっちゃったら……!
「よかったら柴乃も見てみる? 姫野ちゃんも言ってたけど、すごくきれいな人だから」
自分かわいいしか言わない、あの姫野にまでそんなことを言わせるなんて……
私の勘がいってる。その子がとてつもない美人だってこと。
だって姫野が言うのよ? 相当にもほどがあるじゃない。
こうなったらどんな奴かを私が見極めて……!
「みろ! 噂をすれば、女神様だ!」
そんなことを考えていた矢先、だった。
男子たち全員が、わっと教室の窓際に集まってくる。
それがもう暑苦しくて仕方なくて、一目散に席を離れる。
こっちからなら見えるかもと、あんちゃんとむぎちゃんが誘導してくれた時―私は目を疑った。
すらりと伸びた手足に白肌。きれいな黒髪をハーフアップにしており、髪留めには花をあしらえたものを使っている。
そして、ここからでも香るいいにおい……
彼女を見て数秒で悟った。こりゃ、姫野が言うのも仕方ないって。
まるでテレビに出ているモデルさんかってくらいきれいだし、有名人が出してそうなオーラがあるようにも見える。
事実、みんなも彼女に釘付けだし……
「あの子が、転入生の子……なの?」
「うん。生天目蘭花さん、親が転勤族で短い期間だけここにいるみたい」
「そうなんだ……なんだか芸能人を見ている気分になっちゃうね」
充分きれいでかわいいむぎちゃんとあんちゃんも、彼女に比べるとかすんじゃいそうなくらい差が出てしまう。
多分それは、私も同じ。
こんな子が存在していたなんて。
確かにあの子がもうちょっと早く来てたら、コンテスト危うかったかも……
「あの、すみません」
かわいらしい高めの声が、聞こえてくる。
それが私に向けられているとわかるまで、数秒はかかった。
なにせ私の目の前に、彼女が来ているのだ。
面と向かって見せられる美貌と笑顔に、私は思わず
「あ、……私?」
と聞き返してしまった。
「うふふ。他に誰がいるんです? かわいらしい方なんですね」
「えっ、かわいいなんて、それほどでもぉありますけどぉ~」
「実は人を探しているんです。この学校にいるって来てたんですけど……浅沼馨君って、ご存知ですか?」
聞き間違いだと、思いたかった。
絶世の美女、女神様と男子からたたえられている彼女の口から出てきたのは蛍雪1のイケメン・馨君の名前だ。
まさか、まさかと思うほど胸がバクバクしている。
だって……その人を探してるなんて、答えが一つしかないじゃない……
「それでさぁ、馨君ってば柴乃ちゃんとオレを尾行してんの。ひどくない?」
「ええっ~それはダメだよ、馨ぅ~」
「仕方ないだろ。柴乃がうるさくいってきたんだ……し……」
廊下から、いつもの男子三人の姿が見える。
その中の一人―彼女の姿を確認した馨君は、足を止めていた。
先生に頼まれたのか、両手に教材を抱えていて……
「よかった……また会えたね。馨君」
「……な……ばため」
嬉しくて仕方なさそうな、笑顔を浮かべる生天目さん。
そんな彼女とは違って、馨君は幻でも見ているかのように瞳の奥が揺れていたー
彼女が馨君と知り合いだということは、瞬く間に学校内に広まった。
二人の関係がどういうものなのか、私にはわからない。
元カレだったり、現在交際中だったりとあいまいなデマが出回ってばかり。
本人たちも深くは言おうとしないし、私も本人に聞かなかった。
いや、聞けないって言った方がいいのかな……
彼女に会ってからの馨君は、まるで別人のように見えてー
「か~お~る~~馨ってば。次、移動教室だよ?」
「あ……悪い、今準備する」
「馨君、今日どうしたの? 夏バテでもしてるんじゃない?」
「大丈夫だって言ってるだろ。ほら、行くぞ」
彼の変化に、一緒にいる寺濱君と隼人君はいち早く気づいたらしい。
それを私にも言ってきてくれた。
彼女ならここで、なにかするべきなんだろうか。
こんなところでうじうじしてていいのかな……
いや、いいわけないっ!!!
「ごめん、むぎちゃん! 隼人君達と教室向かって!!」
「えっ、柴乃? どこいくの?」
「ちゃんと授業には間に合わせるから!!」
ダメよ柴乃、弱気になっちゃ。
私は馨君を好きなただの女の子じゃない。馨君の、彼女なんだ。
このまま放っておけるわけ、ないじゃない!
「隼人君、寺濱君! むぎちゃんお願い! あいつ借りるわよ!?」
「ほえ?! し、柴乃さん!?」
「借りるって……馨君なら先に……聞く気なしか」
二人がここにいるってことは、まだそんな先にはいってないはず。
ちゃんと聞かなきゃ。馨君のことも、彼女のこともー
「ねぇ馨君、私ね……馨君に会うためにここまで来たんだよ? またあの頃に、戻りたくて……私、馨君が好きだよ? 今も、ずっと。だから私をあなたで満たして」
馨君のことを知ったつもりでいた。
過去も、今も。
私が彼のところについた時―生天目さんが、馨君に抱き付いていたー
(つづく・・・・)
二人目のサブキャラ登場ですね。
しかしまあ事あるごとに美少女しか出てこない作品ですね。
自分で言うのも何ですが。
はたして誰が一番かわいいのか、
この高校では日々論争が起こってそうで恐ろしいです。
次回は5日更新!
ついに修羅場!?




