あの妹あって、この姉あり。
喫茶店でバイトをしている杏珠に
会いに決た紫乃。
そんな中、なぜかバイトを手伝うことに…
「いらっしゃいませ〜♪ 二名様ですね、こちらの席へどうぞ〜❤︎」
満面の笑みを浮かべながら、空いている席へ私が案内する。
誰もが見とれるであろうその笑顔に、男子の客は鼻を伸ばしているように見えた。
すれ違う人、店内を眺めている人ーそれぞれが私に見とれているのがわかる。
ええ、そうでしょうそうでしょうとも。なぜなら私は、世界一可愛いから!
蛍雪高校美女コンテスト、一位の渕脇紫乃ですとも!
これならこの喫茶店の看板娘も、夢じゃないんじゃないかしら! 可愛いってほんと罪よねぇ〜
「……紫乃の笑顔見て、改めて思わされた……姫野ちゃんと双子の姉妹……なんだもんね、紫乃は」
「ちょっと何よ、その言い方は」
「だって……さっきの接客っぷりが……すごい似てたから……」
「あいつの場合はこれが素でしょ? 演技でやってる私と一緒にしないで!」
もちろんこんな笑顔、表面上だけのものに決まってる。
接客の基本だってあんちゃんに言われたから、仕方なくやっているだけ。
この私がそこら辺の男どもに笑顔を向けるなんて、頼まれてもやらないんだから!
じゃあなぜそんな私が、喫茶店を手伝っているのか。理由はただ一つ。
「渕脇……の姉の方だったか。本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です! 私を誰だと思ってるんですか!」
「……信用していいのだな、杏珠」
「紫乃は、言い出すと聞かないところがありますので……何かあったら、私が責任を取ります。なので今回だけ……すみません」
「まあ、人手が足りないのは事実だからな。早速はたらいてもらうぞ」
それはあんちゃんと瀬名さんの、進展をここで見守るため!
バレンタインでチョコを渡したとはいえ、あんちゃんの性格上何も進展がないのは目に見えている。
だからこそ、親友である私がサポートしてあげないと!
今回は馨君もいないし、誰にも口は出させないんだから!
「基本は来た客の注文を取り、その品を出す事だ。レジなど難しいことは、杏珠に任せること。以上」
瀬名さんはそう言うと、急いでいると言うようにカウンターへ戻っていく。
そしてお客さんの注文を聞き、丁寧にかつ迅速にコーヒーを作っていった。
何よ、あの人。私に対しての態度、悪くない?
あんちゃんの時は優しく、手取り足取り教えてくれたっていったのに。
「じゃあごめんね、紫乃。今日だけだけど、お願いします」
「もっちろん! どんっとまかせて!」
心配そうにスイーツづくりに戻っていくあんちゃんの背中を見ながら、私は一人意気込む。
何といっても二人の背中を押せるのは私だけ、私がしっかりしなきゃ!
と、思っていたけど……
「すみませーん、注文いいですかー?」
「は、は〜い、ただいま向かいま…」
「ちょっとぉ私カフェオレなんて頼んでないんだけどぉ」
「ええ!? す、すみません!」
「あのぉ、お会計を……」
「しょ、少々お待ちくださぁぁぁい!」
そんな暇はないっていうくらいに客の嵐、嵐、嵐!
もう愛想笑いなんて、浮かべてる場合じゃないってくらい疲れるわ疲れるわ……
こんなことをするために、手伝いに入ったんじゃないのにぃ〜!
「すいやせーん、いつものやつよろしくぅ」
「はぁい、かしこま……へ……いつもの?」
「いつもっつったらいつもっしょ〜? 何〜あんた新人? わかんないとかテンサゲなんですけどぉ」
な、なにこのケバいギャルは……こんな人が来たりするの……?
ってそんなこと考えてる場合じゃない! これちゃんと当てないと、絶対にクレームになっちゃう!
ええっと、ギャルが好きそうなもの……ギャルが好きそうなもの……
「かしこまりました、アイスミルクとチョコレートケーキですね。今ご用意いたしますので、少々お待ちください」
すっと私の前に男の人影が現れる。
なんとそれは、馨君だった。
彼は私の手を強引に取り、瀬名さんとあんちゃんのもとへ連れていってくれて……
「って! なんであんたがここに!」
「呼ばれたんだよ、瀬名さんに。彼女がどうなってもいいのか脅し付きで」
よくよく見ると、彼がまとっているのは一年前までよく見ていたここの制服だ。
わざわざ私のために、家から来てくれたってこと?
驚きで声も出ない私に変わって、あんちゃんが心配そうな目を向けながら説明してくれた。
「あの人達、最近よくくるの。私でも対応に困ることあるから、急いで瀬名さんに言って……浅沼君に来てもらったの」
「聞くところ、お前はよく人におせっかいを焼くそうじゃないか。大方、杏珠と僕の仲を取り持つ気で接客を受けたのだろう?」
うぐ……ばれてる……
「そう言う甘い考えでやっていけると思うな。もうすぐ卒業するのなら、社会の厳しさくらい覚えておけ」
「……すみません……」
「だが……今日の接客は助かった。感謝する」
説教でも食らっていいくらいのことなのに、瀬名さんはそういってコーヒーを客に持っていこうとその場をさる。
ぽかんと口を開けた私に、あんちゃんは
「紫乃って案外、接客向いてるのかもね」
といって、お客さんの元へ行ってしまった。
もともと二人のことがきっかけだったとはいえ、なんだかんだ楽しかったな。
働くって、こんな感じなのかな?
「閉店時間までまだある。もうひと働きしてもらおうか? 看板娘さん」
私の考えまで読んでいるかのような、優しい笑み。
その笑顔を見ながら、私も
「もっちろんよ!!」
と元気よく返事をし、店のメニューを手に取って見せたー
€€€€€
店内を駆け回っている一人の少女がいる。
その様子を外で、彼女は見ていた。
慣れていないようなその接客ぶりを、サポートするかのようにみんなが声をかけ合ってる。
その中に、馨の姿もあった。
何か言い合っているのか馨の表情は楽しそうで、生き生きしていた。
「やっとみつけたよ、馨君……」
少女は凍えるように冷たい笑みを、密かにこぼしたのだったー。
(続く…)
こういうのを、働かざる者食うべからず
というんですかね。
そんなことより私は個人的に
この子達って本当に双子なんだなと
思いました。
作ってる人がなに言ってるんだって
話なんですが。
次回は28日更新!
とうとう物語が動き出します!




