じれったい二人を尾行する美男美女の図。
東雲旅館近くで行われている夏祭り。
祭りに初めて行くという紬をリードするために
姫野が呼んだのは
同じ幼馴染の隼人だった。
馨を誘った柴乃は、隼人のことがきになり
尾行をしながら二人で回ることに・・・
「うわぁ……人が多くて、今どこにいるのかわからなくなっちゃうね……やっぱりお祭りって、毎年これだけ来るの?」
「まあ規模によると思うけど……はぐれないよう注意して」
「う、うん」
不安のせいでむぎちゃんの足取りは、重く感じる。
それでも彼女の歩幅に合わせ、隼人君は後ろを気にしながら先を歩いている。
そんな二人を見ているのは、まぎれもなく私と馨君だ。
初めて彼氏と回るお祭り、だというのにやっていることは主に尾行。
他の人から聞いたら、何やってるんだと馬鹿にされるだろう。
でも、私はそうは思わない。
だって……尾行しながらでも、彼は……
「なあ柴乃。ほしいもんあるか? 何なら、全部取って来てもいいぞ」
尾行中にもかかわらず、自分のしたいことを素直に言ってくる。
馨君にとってこれも、デートの一環なのだろう。
仕方なく射的屋をのぞき、もらえるものならと
「じゃあ、あのお人形で」
といかにも取るのが難しそうなのをあえて選んだ。
それでも馨君は嫌な顔一つせず、おじちゃんに百円あげて銃を構えること物の数秒。
ほしいと指さした人形に、一発でクリーンヒットしてしまい……
「ほい、どーぞ」
「あ、あんた……ゲームなら何でもありなわけ?」
「昔ありとあらゆるの挑戦しすぎて、祭り出禁になったこともあるんだよなあ」
そ、そこまで……?
そういえば去年も、寺濱君と出禁がどうって話していた記憶がある。
まあ、あんまり覚えてないけど。
取ってくれた人形をそっと抱えると、馨君が「今、金魚すくいにいるぞ」と教えてくれる。
なんだかんだ言いつつも、二人のことは彼も気になるのかな?
会話が聞こえるように、少しずつ私達も接近してゆく。
「きゃっ。あ……敗れちゃった」
「こういうのは一匹に狙い絞った方がいいよ。金魚を追うように隅っこに追いやって……」
説明しながら、隼人君はひょいっと金魚を一匹軽々すくってしまう。
お椀の中に入った金魚を見て、むぎちゃんは感嘆の声を上げた。
「すごいっ。器用なんだね、隼人君」
「これくらいじゃ器用なんて言わないと思うけど……」
「そうなの? でも金魚って綺麗だね。初めて見たかも」
すいすい泳ぐ金魚を眺めみながら、むぎちゃんは優しく微笑む。
相変らずむぎちゃんは、きれいに笑う。
隼人君に彼女がどう映っているのかはわからない。けど彼は、金魚を包装してもらった後、それをむぎちゃんに差し出して……
「よかったらあげるよ」
「え? でも隼人君が取ったのに……」
「オレが世話するより、紬ちゃんが見てあげる方が適任だよ。それにこの金魚、誰かに似てない?」
「あ、確かに。しいて言うなら柴乃かな?」
「ちょっと!!! それどういう意味!?」
しまったと思った時には、もう遅かった。
むぎちゃんと隼人君の顔が、私に向く。
馨君は「このバカ」と小さくため息交じりにつぶやいていて……
「や~~~~~っぱりついてきてた。馨君と尾行なんて楽しそうだねぇ、柴~乃~ちゃん?」
「い、いやぁ、そのぉ……」
「柴乃ってば心配してついてきてくれたの? わざわざいいのに、そんなこと」
「紬ちゃん、柴乃ちゃんそんなタイプじゃないから」
私のことに元から気付いていたのか、隼人君はため息をつく。
逆にむぎちゃんは、頭にはてなを浮かべていてまったく気づいていなかったご様子。
そんな二人を見かねたのか、馨君から
「もういっそのことだし、花火この面子で見た方が早くね?」
と予想の斜め上をいく提案がなされた。
「この面子って、四人で見るつもり? 二人じゃなくて?」
「そ。二人のこと見守れるし、一石二鳥じゃね?」
「見守れるって……馨君まで柴乃ちゃんの味方なわけ?」
「私は皆が良ければ、ぜひそうさせてほしいな」
本当は二人で見たかったな、そう思うのは私だけなのだろうか。
でも、このまま二人から目を離せるわけがない。
一回ばれると、常に疑わそうというか……
「まあ、仕方ないわね! じゃあ男子共! むぎちゃんにいっちばんきれいな花火見せたいから、しっかり見れる場所を確保しなさい!」
「え~オレらがするの~」
「当然! むぎちゃんは私と食糧調達に行くわよ!」
「はいはい」
「んじゃ、わがままなお嬢様のご要望に応えるとするか。行くぞ、隼人」
二人ずつが、四方八方に散る。
なんだかんだお祭りを倍に楽しめるような、そんな気がして嬉しくなったー
(つづく!)
この二人って、どうしてこうじれったいんですかね。
くっついていない人達を応援したい人なので、
一方で柴乃と馨がイチャイチャしていると
たまらなくイライラします笑
次回は15日更新!
いよいよ夏祭り後半戦! 彼女のターンですよ!




