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声を聞いた瞬間、俺は後ろに――具体的には首を守るように――『白竜刀』をかざす。
その瞬間刃と刃が交わり、凄まじい音を立てる。
俺はそれと同時に後ろに尻尾を振って反撃するが、それは避けられたのか手応えを感じられなかった。
その後俺は後ろを向きながら、攻撃してきた相手から距離を取ろうとする。
「なっ!?」
しかし、相手はこちらと距離を取られまいとこちらへと一瞬で移動し攻撃をしてきた。
相手は間髪入れずといった調子でこちらに攻撃してくるため、プレゼント箱を取り出す暇さえありはしない。
このままじゃ……。
そうして焦ったからだろうか。
俺は速すぎる展開についていけなくなり、バランスを崩してしまった。
そこを見逃す相手でもなく、確実にやれるように俺の心臓部にその手に持った短剣――それまで動きが速すぎて武器が見えなかったため、初めて気づいた――を突き刺そうとする。
せめてもの抵抗と思い、尻尾を使って少し体を逸らし急所には当たらないようにする。
「クッ!?」
攻撃を肩に食らってしまったが、相手の動きも一瞬止まる。
攻撃のあとが一番隙ができるって覚えとけ!
「『完全竜化』!」
人生二度目の『完全竜化』である。
一度目は実験だし、実戦で使うのはこれが初だ。
このスキルは竜人の種族スキルだ。
MP消費が激しくクールタイムが24時間と長いため、あまり使うことはない。
それに加えて、竜人の数が圧倒的に少ない。
その理由がステータスポイントの割り振り方だ。
竜人は、ステータスの数値がほぼ平均的でなければいけない。
人によって初期ステータスが違うので、この“平均的”は幅が広い。
だから俺はなれたわけなんだが、他の人はそうじゃない。
ほとんどのプレイヤーは、ステータスに偏りを持たせる。
いくら“平均的”の幅が広くても、偏りすぎていて平均的と言えないのだ。
他の種族はステータスに偏りがあってもなれるし、ステータスに偏りがあるとなれる種族もあると予測されている。
なんでも「平均的があって偏見的がないわけがない!」らしい。
偏見的の使い方を間違えてると思うのは俺だけだろうか?
閑話休題。
今は敵の排除だ。
この姿のみで使える技を見せてやろう。
ただの竜の息吹だけどなぁ!
『ガアァァァァァ!!』
赤、青、白、黄色、灰色、紺色といった色が入り交じった光線が、俺の口から放たれる。
色は多分俺が持っている魔法の属性の色だと思う。
赤が【火魔法】、青が【水魔法】、白が【光魔法】、黄色が【雷魔法】、灰色が【灰魔法】、紺色が【竜魔法】だろう。
竜って紺色なのか?といった質問は受け付けない。
というか俺だって疑問に思ってるんだ、なにも言うな。
考えるな、感じろ。




