巨乳の大敵
シドラが部屋に入るといきなり何かがシドラの体に巻き付いた。
「おお、これはなんと。」
「よく来たわね。ボウヤ達。」
その部屋にいたのは女であった。いや、正確には上半身が女で下半身が蛇であった。
しかも非常に大きな女性であり人間部分だけを見ても普通の女性の3倍以上の大きさがあっる体全は20メートル近い。
その怪物がシドラを自分の尻尾に巻きつけて宙にもちあげている。
「私の名前はナーガ。この部屋では私があなた達の相手をしてあげるわよ。」
どこか甘ったるい声でエマ達を見つめながら言う。
女性の部分は長い髪を持ちやや切れ長の目をした美人の上半身は裸である。
体が大きいので有るから当然胸も大きい、長い髪の毛が胸にかかって肝心な所が見えない。
「うむ、まる出しの胸を髪の毛でかくす。美人の誘惑の定番ではあるな。」
「おや、流石に渋い趣味だねえ。伊達に年は食ってないようだねえ。」
ナーガはシドラを顔の高さまでもちあげる。
「あんたもこんな美人に絡め取られてさぞ嬉しいんだろうね。」
シドラはナーガの胸の谷間の上に顔を持ってこられて心無しか嬉しそうに見える。
「はい、とても光栄に存じます。」シドラが弾んだ声で答える。
何だこいつは。
「あんたもあたしの胸に魅せられたのかい?」
「いいえ、私はウィザーですから、女性に性的欲求を抱くことは戒律によって禁じられています。」
おいっ、声が上ずってるぞ。
「そうかい?それじゃああたしの胸に顔を埋めてみるかい。」
「よ、よろしいのでしょうか?いやいや、それでは戒律が……。」
なに嬉しそうな声を出しているんだ。
ナーガはシドラの顔を胸の谷間に埋めると、パフパフをする。
驚いたことにシドラの肩まで胸の谷間に埋没してしまう。
「んふむぐぐっ、むふぐううう~っ。」
シドラの頭を胸の谷間で何度もグリグリと動かす。
「はがっはふっ、むふぇええ~ん。」
「なんか変な声を出してる。」
「ウィザーと言えども嬉しいのであろうか?」
ずぼっとシドラの頭を胸の谷間から引き抜く。
「甘露でした~っ。」
「………。」
「………。」
「むむっ、ウィザーすら陥落するとは恐ろしい技であるな。……うらやましい。」
「なんだい、あんたはあんなのがいいのかい?そんなに女が欲しければ相手をしてやるのに。」
お母さんは上着の肩のあたりを少し落としてみせる。
ゲンナイはぎょっとしたような顔をするがすぐに元に戻す。
「い、いや、それは実に魅力的なお誘いであるな、しかし某には女房と子供もおるでな。」
「大丈夫さね、旅の恥はかきすてと言うじゃないかね。」
お母さんはブルンと大きな胸をゆらす。
「お母ちゃん!もしかして今夜夜這いを仕掛けるつもりでその男に飯を食わせていたわけ?」
お母さんが動揺したのか少し体を震わせたのは見なかった事にしよう。
「いやああ~はははっ?馬鹿だねえあたしゃ困っている男にはいつも親切にしてやってるじゃないか。」
「そう言ってあたしが子供の頃から一体何人の男を食ってきたのよ。」
「人聞きの悪いことを言わないでよ。ちゃんとお父ちゃんの相手はしているんだから。」
「い、いやそういうことじゃないでしょ。」
「いいじゃないか減るもんじゃなし。」
「いやいや、減らないけど増えたらどうすんのよ。」
「そん時は旦那がいるじゃないか。」
「いやいやいや、それ違うでしょ。絶対どこかおかしいでしょ。そんな入れ食いなんて。」
「あんた達間違いなくみんなあたしの子だよ。別にどの男の子供でもいいじゃない。」
「ま、まさかあたしの旦那まで食ってないでしょうね。」
「大丈夫だよ、いくらあたしでもお前が留守の間に旦那に手を出そうとは思わないから。」
「当たり前でしょ!手なんか出したらいくら母さんでも殺すからね。絶対殺すからね。」
ベルトラは必死で母親に抗議している。
ゲンナイは呆然として二人のやりとりを聞いていた。
「むむっ、そんな貞操の危機であったのか、ついぞ気が付かなかったであるな。」
ゲンナイは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「なーにをみんなでごちゃごちゃ言ってるんだい。さあ、ここを通りたければ私を倒してこのウィザーを助けてみな。」
ナーガが大きく手を広げてそう言い放つ。
「それでさー、ちょっと聞きたいんだけどさー。」
「なんじゃ小娘。我に許しでも乞おうと言うのか?いいだろう我は寛容故おとなしく引き上げるのであれば見逃してやっても良いぞ。」
「あの扉が出口なわけでしょう?」
「そうだ、あの扉をくぐれば最後の部屋に行ける。しかしあの扉をくぐるには私を倒さなくてはならない。」
「どうして?あなたの攻撃をかいくぐって扉に行くのは簡単に見えるけど。」
「愚かな。私はこのウィザーを捕らえているのだぞ。もしお前たちが私との戦いから逃げるのであればこのウィザーを握り潰してされると言う事位判るであろう。」
「あ、そう。」
エマは構わずドア目指して歩き始めた。
「おい、ちょっと待て、聞いてなかったのか?お前このウィザーがどうなっても構わないのか?」
「だってウィザーでしょ。殺しても復活出来るウィザーを人質にしてどうするつもりなの?」
「な、なんと薄情な女なのだ。」
「エ、エマさん。いくらなんでもそれはひどいですよ~っ!私はひねり潰されちゃいますよ~。」
「うむ、確かにウィザーを人質にするのは悪手であるな。ウィザーでは人質にもならんからな。」
「ひえええ~。それはひどい。ゲンナイさん、エマさん、ウィザーにも人権をー。」
シドラは柄にも似合わない悲鳴を上げて懇願する。
「ま、そういうわけだから煮るなと焼くなと好きにしていいから。」
「構わずエマは次の扉に手をかけようとした。」
「ちょっと待てい!」
ナーガは尻尾に巻き付けたシドラの頭をエマと扉の間に叩き付ける。
ドカンと音がしてシドラの頭が床にめり込んだ。
「どうだ、これでも私と戦わぬのか?」
「ちょっとシドラを持ち上げて顔を見せてくれる?」
「なんだ?さすがに心配になったのか?」
「うん、一度顔を見ておきたいから。
「そうか、そうか。これでどうだ?」
ナーガは嬉しそうにシドラの顔が見えるように尻尾を少し上げた。
「エマさーん。ひどいです~~~。見捨てないで下さい~~。」
エマはシドラの顔が少し汚れただけで特にへこんでいない事を確認する。
「ああらシドラ、全然平気じゃない。それじゃ私は行くから。」
そう言ってエマはシドラを迂回するとすたすたと出口に向かって歩く。
「おのれ貴様、なんという奴だ!許せん断じて許してはおけぬ。この鬼畜、外道めが!」
ナーガは尻尾を振り上げるとエマの上に振り下ろす。
「ひええええ~~~~っ。」
ドカーンと尻尾がシドラごと床に叩き付けられる。
「ふぎゅうう~っ。」
「なんか変な声が聞こえたわね。」
「ワハハハハハ、尻尾が当たればお前もあんな声を上げることになるわ。」
ドカン
「ふぎゅっ。」
ドカン
「ふぎゅっ。」
「ひええええ~っ。なんじゃこら~~~~っ。」
逃げ回るエマを追い立てるように尻尾は何度も振り下ろされる。
ドカン
「ふぎゅっ。」
ドカン
「ふぎゅっ。」
「あんたなんて事するのよ~?床がめちゃくちゃじゃないの!」
振り下ろされる尻尾から逃げ回りながらエマが叫ぶ。
「エマさんそこですか~?」シドラの悲鳴が洞窟中に響く。
ドカン
「ふぎゅうう~っ。」
ナーガはエマが壁を背にすると目の前に尻尾を打ち付ける。
「お前がちゃんと戦おうとせんからじゃ、この薄情女が。」
壁際までエマを追い込むとナーガがエマに詰め寄る。
「はあっ、はあっ。」
「さあ、追い詰めたぞ。この我から逃げられると思うてか?」
「い、いや、いくら何でもシドラの頭ででモグラ叩きをすることは無いと思うけど。」
「何をいう、重さと言い握り具合と言い、なかなか使い勝手が良いぞ。」
なぜかひどくナーガに気に入られた様である。
「エマさーん、お助け~っ。」
「それにしてもウィザーってのは思ったより丈夫なのね。」
「はい、何しろウィザーですから。」
おい、手を出してピースサインをするな。
「さあ、さっさとかかってこんか。虫けらをひねり潰すように倒してやろうではないか。」
ナーガは威圧するように大きく体を持ち上げてエマを見下ろす。
エマは不敵ににやりと笑う。
「……ん?」
その表情を見て何かを感じたのかナーガは後ろを振り返る。
「あっ!」
「えっ?」
エマに気を取られているナーガの後ろをこっそりと出口に近づくゲンナイ達と目が合う。
「おのれーっ、貴様らちょこまかと。」
ナーガは後ろを振り向くと尻尾を叩き付ける。
ぱっとゲンナイ達は身を交わすが出口をナーガに塞がれる。
「ちっ、ばれちゃったわね。」
「惜しかったであるな、もう少しでうまく行く所であったが。」
「貴様らよくも、よくも私をたばかってくれたわね。」
ナーガは憤怒の表情でみんなを睨みつける。
「いよっと。」
ナーガが皆に気を取られて後ろを向いている隙にエマはナーガの背中に飛びつく。
「む?エマかそんな事をしてどうするつもりだ。素手で私を倒せるとでも思ったか?」
「素手じゃないもん。」
エマは握った右腕でナーガの頭を殴りつける。ずぼっと手がナーガの頭に沈む。
「き、貴様何をする?」
エマが手を引っ張るとズズズッとナーガの頭から棒状の物が引き出される。
「真剣白刃獲り!!!」
「エマさん違います、文字が違いま~す。」
さらに引き続けるとナーガの頭が小さくなりエマの手に大きな歯のついた曲刀が引き出される。
完全に曲刀が現れるとナーガの頭は無くなってしまいナーガは目が見えなくなってしまった。
「もらったーっ。」
曲刀を大きく振りかざすと飛び降りざまにシドラに巻き付いている尻尾の根元に振り下ろす。
ズバッとばかりに尻尾を切り離すとシドラはあたふたと尻尾の中から這い出してきた。
頭を失ったナーガはずぼっと胴体から頭が生えてきた。




