ベルラ姉妹の村へ行きました
「ぐおおおおおおおお~~~~~~~っ」
部屋中に男の声が響き渡る。
「力だ~~~~~力が欲しいい~~~っ。」
部屋の中に置かれた多くの機械類が閃光を放ちバチバチと放電を起こしている。
「いいぞ~~~~っ、力だ~~~~っ。」
台の上に寝かされた男には何本ものコードがつながりびくびくと震える男の体をベルトが拘束する。
「力が満ちる~~~~っ。」
強い電撃が男を襲い男の髪の毛が逆立つ。
「ぐあああああ~~~~っ。」
激しい痛みに男は全身をのけぞらすが体を拘束するベルトによって動くことは出来ない。
「大丈夫じゃ苦痛は最初のうちだけじゃ、苦痛が去ればお前は生まれ変わることができる。」
年老いた男が脇に居て男に語り掛ける。
彼の名はマグダ・マクラーレン、マイリージャ科学省の長官である。
「苦痛など恐るるに足らんわ~~~っ。」
男の体には激痛が走っているに違いないのだが目すらつぶらずに天井を見据えている。
「そうじゃそれこそがわしがお前を選んだ理由だからな。」
老人の後ろにはもう一つの影が立っていた。
「ドクロード殿工程は順調ですぞ。」
そう呼ばれた男が前に出る。
フードをかぶり仮面を着けたその男はまさしくウィザーであった。
その仮面にはどくろのマークが入ってる。
「ウ、ウィザーか、貴様が俺に力をくれるのか?」
ウィザーは何も言わずに男を見守っている。
「そうじゃウィザー様に感謝しろ。貴様は人間をはるかに超えた力を手に入れることができる。」
電撃はさらに激しさを増す。男は苦痛に体を反りかえらす。
「うぐふふううう~~~っ。」
男はうめき声とも笑い声ともつかない声をあげる。
「その代わり貴様は物を食う事も無い、酒を飲むことも出来ぬのだぞ。貴様はウィザーになるのだからな。」
「うがあああ~~~~っそれが力の代償か?」
「そうだ貴様には最初から話していた筈だな。」
「構わん、力さえ手に入れば後は何もいらん。」
「あなたはその力を何に使うつもりなんだべ?」ウィザーが前に出て男に尋ねる。
「うぐうううふふふううう~~~っ。」
「殺せるぞ~っこれで思う存分殺せるぞ~~~~っ」
「殺戮が望みだと?」
「殺しこそわが命、わが望み、奸計など愚劣の極み。力のみによる殺戮しこそわが本懐。」
男の言葉を聞いていたウィザーがマクラーレンに呟く。
「こんなのしかいなかったんだべか?」
「仕方なかろうウィザー化に耐えられる精神を持っているものなど最初から壊れている奴しかおらん。」
少し間が有ってウィザーが老人に尋ねる。
「それって私も壊れているって事だべか?」
「あんた壊れていないと自分では思っておったのか?」
「はあああ~~~~っ。」
どくろのウィザーは頭を振りながら外に出て行った。
◆
「ああ~っなんかものすごくよく寝た。どうしたのシドラ、元気ないじゃない。」
エマ達はベルラ姉妹を乗せ、彼女の実家の有るサルサ村を経由して次のドームに行くことにした。
「いえ、たいした事ではありません。」
「きゅうう~っ。」
シドラの周りにどよんと淀んだ空気が渦巻いていた。
「強姦魔。」
「色情狂。」
荷台でベルラ姉妹がボソッと呟く。
「誤解です~~~っ。私は決してそのような邪な心は持っていません。」シドラの必死の叫びが轟く。
「覗き魔。」
「出刃亀。」
姉妹の口撃は続く。
「やめてええ~~~っ。私は覗いていません~。」シドラが耳を抑えて悶える。
「見た。絶対見てた。」
「逆さ吊りウィザー。」
「ん、そこは同意する。」ボソッとエマも止めを刺す。
「エマさん、エマさんの寝相が悪すぎるのが原因なのですから~っ」
「それで出来心か。」
「スケベ丸出し。」
「エマさんの寝乱れた服を治しただけですってば~。」
「認めた。触ったこと認めた。」
「私たち来なければあんな事やこんな事に間違いなく及んでた。」
際限なくベルラ姉妹はシドラに言葉の剣を突き刺し続ける。
「いいです。もういいです。私はもう浮かびあがれません。このまま誰とも会わずに荷台の隅にうずくまっています。」
シドラの周りに渦巻く淀んだ空気が一層密度を増す。
「ベルラもベルトレもあんまりシドラをいじめちゃだめだよ。本当に落ち込んで自殺したらどうするの?」
「自殺しても復活するんじゃないの?」
「ウィザーだし、いつも3秒で復活するし。」
「今回はすごく反省しているようだし。この辺で許して上げなよ。」
「そうです。風呂場でもエマさんはタオルで体を隠していましたがお二人は堂々と丸出しでしたじゃないですか。」
「やっぱり見たんじゃないか。」
「いやでも見えますよ。」
「まあいいわ。結局あの二人と一緒に逆さ吊りになって全ドームのウィザーに生中継されたみたいだし。」
ベルトラの一言が最後にシドラの胸を突き通した。
「やめてええ~~~っ、思い出させないで~っ。」
シドラは再び頭を抱えて悶えている。なんか当分シドラのトラウマになりそうだな。
後でゆっくりネチネチといじめてやろう。
「エマさん今なんか邪な事考えていませんでしたか?」
「いやいやいや、あっはっは、シドラの考えすぎだよ。」
「そうですか?」
シドラは疑い深そうにエマの方を見つめる。まあ仮面をかぶっているので表情は見えない。
あぶないな~っ最近コイツ人の心読むからな。
「きゅっきゅきゅ~っ。」
キューちゃんが陽気に声を上げる。うん、この子はいい子だ。
ドワーフのドームは多少山がちでありドームの奥の方は小高い山が連なっていた。
川の流れの沿って畑が広がり斜面以外は良く耕された畑になっている。
畑にはイモや小麦や野菜などが多く植えられておりそれらは良く育っていた。
畑の中にぽつぽつと家が建っており、道の正面に大きな集落が見えて来る。
「ベルラ~!」叫び声が聞こえ、畑の中で手を振るドワーフ族の男が見える。
「シンゴ~!」ベルラが男に向かって駆け出していく。
「あの人がベルラの旦那さんなの?」
「そうだよ。シンゴって言うんだ。」
ベルラは旦那に向かって走って行く。
旦那は子供の所に行って子供をベルラに見せる様に抱き上げる。
エマの感覚では3歳くらいだがベルラの子だと2歳と言う事になる。
割合としっかりした足取りでとっとこ走ってくる所を見るとさすがにドワーフ族の女。
ベルラは子供を抱きしめる。町ではあまり見せなかったがやっぱり母親の顔になっている。
娘を抱き上げて顔を見て頬ずりをして高い高いをすると子供がきゃっきゃっと喜ぶ。
コラコラ胸で子供を持ち上げるんじゃない。
旦那は畑仕事を中断して荷物を片づけるとベルラと一緒にこちらに向かって歩いて来る。
顔はドワーフ族の特性で髭が濃くて髪の毛がモサモサしている。
しかし毎度髭面ばかり見ているとあまり区別がつかないな。
「これはウィザー様ベルラがお世話になっておりやす。」
シンゴはシドラに腰を深く折って挨拶をする、随分腰の低い旦那みたいだ。
「いえいえ、大した事はしていませんから。どうぞお乗りください。」
こんな風に腰を低くされるとウィザーでもやはりつい愛想を言ってしまいたくなるのだろう、単純な奴。
その人はあたしの従属物じゃ無いだろ。
「この人はエマさん。仕事場で友達になったの。」
「おお、人族の方がベルラのお友達になっていただけるとは、仲良くして下さってありがとうごぜえますだ。」
「いえいえ、あたしの方こそベルラさんには世話になりっぱなしで。」
な~んかおばさんトークになっちゃってるのがやだな~っ。
「それじゃ行きましょうか?」
「きゅいい~っ。」
「おお、お返事までなさっとは さすがにウィザー様の馬車ごぜえますだな。」
全員で荷台に乗り込むと村に向けて動き始める。
「あははっ、あははっ。」
久しぶりの体面にベルラは子供を膝に抱えてあやしている。
「畑仕事をしながらお子さんを育てるのは大変でしょう。」
「な~んも、おらんちは家族も多いだでみんなで子供さ育てとるで。」
「だってお乳とか。」
「いんや最初の三月を超えれば這うようになるだで、ヤギの近くに置いておけば勝手に乳さ飲むで手間あかからんべ。」
なにそれ?ドワーフの子供って超ワイルド、ヤギを母親だなんて思わないよね。
アクセスいただいてありがとうございます。
亭主に子供を押し付けて遊びまわる鬼畜な女房……と言う訳では無さそうです。
ただ、子供より、亭主より、自由が好きなだけなのよ!!
でもやっぱり子供は可愛い様です。 以下次号
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