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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
ドワッフ族の迷宮
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ドワッフ族の寝起きが電撃です

 エマ達はラフレア達と分かれてゲオラドームに向かった。

 ゲオラ・ドームはベルラ姉妹の実家が有りそこで一晩世話になって次のイリュージャ・ドームを目指す。

 ゲオラドームは元々ドワッフ族だけが住んでいたドームだったが最近は少しピクシー族もいるようだ。

 

 この先のイリュージャ・ドームはエルフィン族の住むドームで、かつてマイリージャに侵略されたそうである。

 その時の事を忘れないために武道大会を開催して武術の振興に努めているらしい。

 グレアン・ラウが推薦してくれたのがその大会で有る。

 エルフィン武術に慣れる為にグレアン・ラウはアイーラ・エランと言う人を紹介してくれた。

 なんでもウィザーの経営する道場の師範を行っている人だそうでそこでしばらく調整をすると良いと言われた。

 

 ラフレアとレイは予備予選が無いのでゲオラドームで練習を続けて後で合流する事になった。

 ラフレアちゃんは出発する時すごく寂しそうな顔をしていたがすぐにジョライ・ドームで再会できるので我慢するそうである。

 なんというかすごくいい娘なんだなー。

「エマさんにはもったいないお友達ですね。」

 どこからかシドラの声が聞こえたような気がするが気にしない。

 ベルラ姉妹を乗せてエマ達は出発した。

 

「いや~っ悪いね~っウィザ~の馬車に乗せてもらえるなんて思わなかったよ。」

 

「はい、本来は戒律に反してしまいますが、今回皆さんはエマさんの従属物としておりますから。」

「従属物?」エマが顔をしかめる。

「はい、お友達と言う場合もあります。」

「それならそう言えばいいじゃない。」

「はい、組織にはいろいろと面倒な決まりもありますから。」

 

 まあ、シドラもウィザー組織の戒律という奴が有るらしいからこう言った言い方をせざるを得ないのかもしれない。

 それにしても最近は戒律の運用が少し柔軟になって来たのはいいことだ。

 

「ウィザーの世界もいろいろ面倒な所があるみたいだね。」

「はい、その点では人間社会のほうがはるかに融通無碍ですね。」

「そうかなあ?結構人間の社会も厳しい規律があるけどね。」

 

「そうでしょうかね?人間には本音と建て前という言葉がありまして、規則というものはどのようにして破るかを考えて作られているようにも思えるのですが?」

「ああそうね、それはあるね。」

「規則を作った時にに抜け道も一緒に作っておくとか。」

「なにそれ?そんなものなの?」

「はい、規則を作るものは自らが権力者であると考えますから、自らはその規則には縛られたく無いと考えているのですよ。」

 

 なんか人間のいやな部分をえぐられているみたい。ウィザーは人間をそんな風に見ているものなのかな? 

 

「シドラは人間だった時に余程いやな目にあったとか?」

 ベルラがシドラを見て皮肉っぽく笑いかける。

 

「人を見ているのはとても楽しい事ですよ。良い面も悪い面も全て合わせて人間の生き方そのものなのですから。」


 おお、すごい達観した見方をする奴だ。


「ああ、そう言う事か?ウィザーの生き方はかなり戒律に縛られて自由って物が無いみたいだし。」

「いいえ、戒律はあくまでも私達が人々の生活に必要以上の介入を規制する為の物ですから、結構私たちは自由に生きていますよ。」

「人間と一緒に食事が出来ないとか、一年中同じ格好をしていなくてはならないとか。」

「仮面を絶対に外しちゃいけないってのも、ものすごいよな。」

「それらの事も、ウィザーが人間と一緒に暮らすためには必要な事ですから。」

「あんたたちは時々人間離れした力を出したり魔法を操るけどその代償と言う事なのかい?」

「そう思っていただいて結構です。」

 

 彼女らの話を聞いていてエマはふと思った、もしかしたらウィザーは自らが人間とは違う部分を強調しているのかも知れない。

 人間から浮き上がる事により、逆に人間との共存をしやすくしていると言う考えも有る。

 そう言った溝を露にすることにより人間と一定の距離を設けているのだろう。

 

「しっかし飯も食えない生活なんざその力と引き換えでもごめんこうむりたいとは思うんだがねえ。」

「いいえ、私たちも皆さんと同じように料理を味わっているんですよ。無論皆さんの見えない所ではありますが。」

「そうなの?初めて聞くわ。」

 

「はい、例えば寮の食堂で出る豆のスープは塩気が強すぎるとエマさんは言っていましたが、私はあそこに出ている他の料理に比べてそれ程の差を感じませんでした。」

「寮の料理を食べた事があるの?」

「はい、大体は。」

 

 なんだコイツは?いったいいつの間に食ったんだ?まさか食堂のごみ箱の中じゃないよな。

 

「ふ~ん、そうなんだ。みんなには隠れてこっそりと食べているんだ。」

「戒律ですから。」

「なんだそれを聞いてなんか安心したよ。」

「なぜですか?」

「いや人前で全然食事をしないでいるから、あたしらてっきりウィザーの特別食かなんか有るのかと思っていたよ。」

「無論それも有りますが人の食べる食事にはまた特別な価値がありますから。」

 

 そんな事を駄弁りながら馬車は進んでいった。仲間と一緒に旅をするのも悪くないとエマは思った。

 

 だらだらと下る坂の通路を進んで行き、平らな通路に入るとそれまでと違い通路に沿って畑がずっと続いている様になった。

 植えてあるものは小麦や豆、野菜など多種多様の作物が茂っていた。

 

「ずいぶん此処の通路は農業が盛んなのね。」

「あたしたちが寮でバカ食いしていた食料はここから持ってきているんだよ。」

 

 あ、そうかドームの中はほとんどが山間部だから、自分たちが食べる以上の作物が取れないんだ。 

 

「あの製材所を支えているのはここで作られている食料さ。それでも工場が大きくなるまではこの辺の人達も自分たちの食べる分くらいしか畑を作っていなかったんだ。」

 ドーム内の山から流れて来る川の水はこの通路の真ん中にある川に導かれ通路の中を流れている。


「まあ落人のドームだからな。長い間このドームはあまり人が住んでいなかったんだよ。」

 それ故この水路を通って遡上してくる魚たちは安全に上流までたどり着けたのだろう。その川を中心に集落と畑が作られそれを縫うように道が作られている。

 

 やがて橋の袂の町までやって来るとシドラは一つの提案をする。

 

「さて皆さん、呼吸器は一つしかありませんが皆さんはこのまま乗って行かれますか?それとも橋渡し馬車に乗り換えますか?」

「それじゃあ乗り換えようか。乗り換えないと橋は渡れないからね。」

「そんな事はありませんよ、このまま渡る事も出来ますから。」

「え?だって外に出たら息が出来なくて死んじゃうんでしょう。」

「いいえ、この橋を渡る位でしたら大した事はありません。途中で眠くなりますが、そのまま寝てもまたドームに入れば目を覚ましますから。」

 

 そう言えば前にシドラが言っていたな、自分で試す気にはなれなかったけど。

 

「なに?それじゃふつうの馬車でも手早く渡りさえすれば問題ないの?」

「はい、そのままにすると死ぬ危険もありますが適切に起こせば問題ありません。」

「つまりウィザーのあんたは外に出ても問題ないから橋を渡ったら私たちを起こしてくれるって言うんだ。」

「はい、お任せください。」

 

 コイツが胸を張るときは碌なことが無いような気がするが。

 

「それじゃあ、このまま行ってみようか?」

「はい外に出てしばらくすると眠くなりますから眠ったまま荷台から落ちないようにしてください。」

「わかったよ。それじゃあしっかり起こしてくれ。」

「それではこのまま外に出ます。」

 

 馬車が橋に向かって動き始めたのでエマは呼吸器をつける。

 橋は幅が100メートル以上あり欄干も無いため周囲には遮るものもなくドームの出口とその周囲がすべて見渡せる。

 

「いかがですか?苦しいですか?」

「いや、何も感じない。」

「お二人はいつもは馬車で渡ってきたのですか?」

「ああ、そうだよ。あれはひどく苦しいんだよな。」

 

 ベルラ姉妹は何度もここを渡っているからすごく嫌な思いが有るんだろうな。

 

「ここはどうかは知りませんが橋によってはそのまま馬車に乗せて渡るところもありますよ。」

「その時はどうするんだ?」

「途中でみんな眠ってしまいますので橋を渡ったら起こす名人がいまして皆さんを起こすようです。」

「それもなんだかなーっ。」

 

「姉さんなんだか眠くなってきた。」

「ホントだあたしも……。」

 そこまで言って二人とも眠ってしまった。

「アンタ本当に大丈夫なんでしょうね。」

 無論大丈夫です、シドラにお任せください。

 

 こうやってコイツが胸を張る度にあたしゃ不安になるんだよなー。

 

 眠ってしまった二人を乗せたまま橋を渡り切った馬車は広間に停まる。そこでは多くの人々が乗降していた。

 荷台には二人は崩れ落ちるように寝ていた。

「それではお二人を起こしましょうか?」

「2人は大丈夫かしら?」

 エマは気遣うように2人の顔を見た。

 

 シドラはベルラを抱き起すと電撃を彼女に与える。

 

「びええええ~~っ。」

 言いようのない悲鳴を上げてベルラが目覚めた。続いてベルトラの方に電撃を加える。

 

「ふぎゃあああ~っ。」

 同じような悲鳴を上げて彼女も目覚める。

 

「な、なんじゃこら~っ、アンタの起こし方ってのはこんなんかい?」

「はいはい、これが一番安全で確実なものですから。」

「すると何かい?前にあたしに試してみろと言った時も同じことをするつもりだったのか?」

「はい、もちろんです。」

 あっぶねーっ、コイツの口車に乗っていたらあのビリビリをされる処だった。

 

 無論、エマはシドラの頭を思いっきり蹴りとばした。


アクセスいただいてありがとうございます。

シドラもエマの影響を強く受けてだんだん鬼畜度が増してきます。

この先鬼畜競争はどこまで進んでいくのでしょうか……以下次号


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