怪物はエマを追いかけて来ます
「ひどいっ髪の毛の先が焦げちゃってる。」
「そういえばエマさんの髪の毛も少しボリュームが出ていますね。」
踵落としを意に介さず復活してくるシドラである。
「はああ~っ。さすがに超古代文明の遺物を倒したんだからこの位の犠牲は仕方ないのかな~っ。」
「そうです。エマさすがに太っ腹。」
ムカつくな~っ。きっとコイツの頭はつるっ禿だな。
「それはそうとコイツどうする?」
動きを止めた怪物を見上げてエマは腕を組んだ。
「そうですねえ、超古代文明の遺物が何故ドームの中に有るのか?一度ゆっくりガルドに聞かないといけませんね。」
「ギギ……。」
「いっ?」
「えっ?」
「ギギイイィィィ~~ッ。」
「げげっ何よこいつまだ死んでないじゃないの。」
「グギャアアァァ~~~ッ!」
ずぼっという音がしてさっき潰した目のような器官が体中から生えてくる。
「なにあれ?反則じゃない!」
「ガチャガチャガチャ!」
「いやあああ~~~っ追いかけてくる~~っ!」
超古代文明の遺物である怪物は再びエマを追いかけて動き始める。
「なによ~っさっきより早いじゃないの~っ。」
「ひええええ~っ。」
見るとエマの横をシドラが走っている。
「なんであんたまで逃げているのよ。」
「いえ、追いかけて来ますのでつい。」
「あんた魔法使いのウィザーでしょう。」
「おお、そうでした私はウィザーでしたね。」
シドラは振り返ると両手を上に上げた。
「極大魔法……。」
シドラが魔法を使おうとするが、その前に怪物が鋏を振り下ろす。
「ガツッ!」
「ひえええぇぇぇぇ~~~~~っ。」
シドラはクルクル回りながら吹っ飛んで行く、相変わらず使えない奴。
「ガチャガチャガチャ!」
「いやあああ~~~っ、追いつかれる~っ。」
怪物がエマを狙って鋏を振り上げる。
「ギュオオオ~~~ッ。」
「待て待て待て!止まれ止まれ!止まって~っ。」
エマは必死で叫ぶと突然怪物の出す音が消える。
「へ?」
エマが振り返ると怪物は鋏を振り上げたまま止まっていた。
「と、止まっている?」
エマは恐る恐る怪物に近寄ってみる。
「本当に止まっているのかしら?」
振り上げられた鋏を見ながら足をコツコツと叩いてみるが怪物は全く反応をしない。
「よ、よく判らないけど止まっているようね。」
レイに刺された足からは未だに黒い液体が滴っている。
「今のうちに逃げちゃおう。」
ラフレアたちは逃げた様だしこれ以上コイツの相手をする必要もない、そう思ってエマが怪物から離れ始める。
「ギ…ギ……。」
「ひっ。」
「ガチャガチャガチャ!」
突然怪物が動き始め再びエマを追いかけてくる。
「ひええええ~っ、止まれっとまれ~~っ。」
エマが叫ぶと怪物は動きを止める。
「えっ?ええっ?」
再び動きを止めた怪物に近寄るとエマは怪物の足を蹴飛ばした。
「は、は~ん。」
エマは腕を組んでニヤッと笑うと怪物を見上げる。
「どうやらエマさんが近くで命令すると言うことを聞くみたいですね。」
後ろの方からシドラの声が聞こえる。
「ひえっ、いつの間に。」
いざというとき全然役に立たないシドラがしっかり復活していた。
「さて、どうしましょうか?」
シドラが怪物を見上げる。しかしコイツやっぱりデカい。
「この怪物があなたの言うことを聞くのであれば持って帰って何かに使いますか?」
「だけど離れると私の事を襲って来るでしょう。こんなの人里に持っていくことなんて出来ないよ。」
「それでもエマさんが離れればまた追いかけますよ。エマさんがあまり近いと極大魔法が使えませんし。」
今度は髪の毛をパンチパーマにされそうだしなー。
「さっきは全然効かなかったじゃない。」
「大丈夫ですよ、この次は超極大魔法を使いますから。」
さっきの失敗にもめげずに堂々と胸を張るシドラである。
「なにそのいい加減さ、今度ダメだったら超超極大魔法でも使うの?」
「はいそう言う事になります。」
シドラはなんの屈託も無く答える。
「前からウィザーってのはいい加減な存在だと思ってたけど、本当にいい加減なのね。」
思いっきりエマは脱力した。
「おほめいただいてありがとうございます。」
いや、全然ほめていないけど。
「ただ困りましたね。エマさんがこの怪物から離れると追いかけますし、離れないと魔法の巻き添えになります。」
「「う~ん。」」
二人して考え込んでしまった。
「おお~い、大丈夫か?」
そこにレイが戻ってきた。
エマとシドラが顔を見合わせて頷く。なぜか最近二人の呼吸が合って来た様な気がする。
「魔法の稲妻が走った後怪物はまた動き始めた様だが、今度はやっつけたのか?」
「いやそうじゃなく動きが止まっただけよ、またすぐに動き出すわ。」
「今のうちに倒せないかな?でも体はこの剣じゃ貫けないし。」
「「そこで作戦が有ります。」」
「な、なんでおふたりはハモるんでしょうか?」
「まずエマさんがここに居る間は怪物は動きません。」
「うんさっきから見ているとなんとなくそんな気がする。」男が理解不能な顔をする?
「よく判んないけど私が近くにいればこいつは言う事を聞くみたいなのよ。」
「なんですかね、なんでそんな事が有るんでしょうか?」
「私にも分からないわよそんな事。」
「言う事を聞くなら持って帰れば良いじゃないですか。」
「離れたら襲って来るのよ。第一持って帰って何に使うのよ。」
男もそこで頭をひねる、こいつの頭もシドラ並みか。
「いずれにせよ動きを止めている間にあなたにこの怪物の足を止めてもらいたいのです。」
「そうやって逃げるのですか?しかしどうやって、私の剣はこいつには通りませんよ。」
シドラは液体を滴らせている足を示す。
「どうやら関節の裏側から剣を突っ込むと体の中に届くようです。」
「なるほどそういう事か。」
「同じようにすべての足を切って欲しいのです。」
「わかったやってみよう。エマさんはしばらくお待ちのほどを。」
「怪物の動きを止めた後エマさんに逃げてもらってその間に私が超極大魔法でこいつを倒します。」
「うむ、そうすればいいな。しかしその超極大魔法とやらが効かなかったら?」
「あなたもエマさんと同じことを聞かれますね。その時は超超極大魔法を使います。」
なにその言い方?もしかしてこの状況がこの構図が成立しているってこと?
エマ=レイ、レイ=シドラ。
シドラ=エマ???
いやあああぁぁ~~っ、やめてええええぇぇぇ~~~~~っ。
「どうしました?エマさんうずくまって、頭でも痛いのですか?」
痛いの!ものすごく心が痛いの!
「大丈夫です、エマさんは心の強い方ですからすぐに回復いたしますよ。
3秒で回復するアンタと一緒にするな、アンタと!
「それじゃあ早速やってみようか。」
「お願い致します。」
レイは足の様子を見ながら一気に剣を関節の裏側に突き刺す。
そのまま剣を引き抜くと黒い液体が吹き出し足がガクッと下がる。
「いいわ、どんどんやっちゃって。」
レイは次々と怪物の足に剣を突き刺していく。
ほどなく怪物は足を全部切られて胴体を地面に横たえる。
その間怪物は何をされてもじっとしていた。
考えてみればかわいそうな気もするな。
理由は判らないけど自分の言う事を聞いて、体を傷付けられながらそれでも動かない怪物をエマは哀れと思った。
だからって私を襲うやつは許さないけどね。
足を切り終わったレイは馬に乗って怪物から遠ざかる。
「エマさんはなるべく遠くまで走って大きな木の陰に隠れてください。」
「いいわ、それじゃ行くわよ。」
エマは怪物から全力で走って逃げる。
「ググ……。」
怪物が再び動き始めるしかし足を切られている為に動くことができない。
エマは少し離れたところにある大きな木の陰に隠れる
「それじゃあ超極大魔法……。」
シドラが両手をあげ詠唱を始める。
「天上天下唯我独尊、心頭滅却火又涼………。」
「グギャアアァァ~~~ッ」
ところが怪物はまだ動く鋏を使ってエマの居る方に向かって体を引きり始める。
「ひえええ~っまだ追いかけてくる~っ。シドラ~っぐずぐずしないでさっさとやっちゃいなさい。」
「はいはい、それでは以下省略。」
突然怪物の体が光り始める。
「グギュウウウ~ッ」
さらに光は強くなり怪物の体が真っ赤になった。
「な、なに?すごく熱い。」
「エマさん体を引っ込めて!」
シドラが叫ぶと同時に怪物が大きな炎を上げて爆発した。
「な、なによなんで怪物が爆発するのよ。」
爆風がエマを襲うが大木が防いでくれる。
エマは目をつぶって木にしがみ付いていた。
シドラのほうは相変わらず爆発に吹き飛ばされてクルクル回っている。
怪物の噴き出す炎の為に周りの木々が燃え始める。
「まずいわ、山火事になっちゃう。」
エマがそう思った瞬間何か大きなものが木々をへし折りながら落下して来た。
アクセスいただいてありがとうございます。
エマとシドラは似た者同士の様です。
そう言えばこれまでもずいぶんボケと突っ込みの間合いが合っていました。 以下次号
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