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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
木こり達のドーム
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怪物と遭遇しました

 怪我をした熊を載せているのでゆっくりとキューちゃんは山を下りる。

 

 男は馬を連れ一緒に下りてきた、さすがに気になるのだろう。

 村が木々の間に見え始めたころ背後から変な気配が迫って来る。

 

『カイブツーッ、カイブツーッ』カノンが何か叫んでいる。

 

「なにあれ変なものがこっちに向かってくるわ?」

「おお、もしかしてあれが子供たちの言っていた怪物では無いのですか?」

 シドラは目に手を当ててみている、どうもこうすると遠くが見えるらしい。

 

「修行している最中に何回か見た事が有る。山を徘徊していたが特に脅威は感じなかった。」

「ちょっと聞いてみますか?」

 シドラは右手を耳の部分に当てると左の手で空中に有る何かを回すようなしぐさをする。

 

「ああ、シドラですが…ガルドですか?」

 

「え?道の事は?悪気が有ってした訳じゃない?」

 

「いやいや、判っていますよ。いくらガルドさんでも悪気が有ってそんな子供みたいなことをする筈がないじゃないですか。」

 

「ねえ、そうですよね。ガ・ル・ド・さ・ん。」

 

 何かシドラが独り言を言っている。

 どうやらガルドと話をしているみたいな感じだけど傍から見ていると単なる可哀想な人に見える。

 

「え?今度?エマさんと3人で食事を?ガルドが腕をふるう?いいですね~っぜひガルドの料理の腕を拝見させて下さいな。」

 

「なに?経費は折半で?」

 

「あなたねえ。ウィザーともあろうものがそんな子細なことを言っちゃいけませんよ。」

 

「なに?ラフレアが来るから経費が5倍に膨れ上がる?」

 

「なに子供みたいなこと言ってるんですか?大事なあなたの愛弟子じゃないんですか?」

 

 結構シドラって根に持つタイプみたいだなーっ。

 

「え?え?なに?冗談だ?二人の為ならいくらでも食費は惜しまない?」

 

「そうでしょ~それでなくちゃウィザーじゃありませんよ。ん?少し雑音が入りますね?」

 

「なに?通話の魔法が下手だって?失礼な私は新米とはいえウィザーですよ。受けの側に問題が有るんじゃありませんか?」

 

「なになに?良く聞こえませんが雑音が気になる?」

 

「いやいや、その雑音の問題なんですよ。」

 

「雑音くらいじゃ人は死なないから放って置け?結構あなたも大胆ですね。」

 

 おい、シドラだいぶ怪物がこっちの近づいてきているぞ、いったいなんだあれは?

 

「そうそう本題なんですが大きな機体が山の中を徘徊しているようなんですが?」

 

「どの位大きいかって?…そう小さな家ぐらいですね。」

 

「形ですか?足が8本あってハサミ状の腕が2本。…蟹じゃないかって?…あなたねえ沢に住む蟹が木をへし折りながら歩くと思います?イヤイヤ磨き虫じゃありませんよ。その位私だってわかります。」

 

 おいおい、もうすぐ追いつかれるぞ大丈夫なのか?あれはウィザーの使い魔じゃないのか?

 

「心当たりが有る?もしかしてそれは古代に栄えた超科学文明の遺物かもしれない?」

 

「ウィザーが何馬鹿な事言ってるんですか?…え?危険だから近づくな?」

 

「あっちから近づいて来たらどうするんですか?…逃げろ?いや逃げろと言われてもねえ…目の前にいるんですけど。」

 

 怪物がシドラの目の前でその腕を振り上げる。

 

「あひぇぇぇぇ~~~~っ。」

 おお、何だ?シドラが空を飛んでいる。 

 

『グルグル、グルグル。』カノンがシドラを指さして叫んでいる。

 シドラは怪物に弾き飛ばされて明後日の方向に吹っ飛ばされて行った。

 

「何を呑気なことを言っている。さっさと逃げるんだ。」男が叫ぶと馬にまたがる。

 

「キューちゃん急いで逃げて。」

「きゅきゅっ。」

「カノンこっちへ来るの。」

 

 カノンがラフレアに抱き付くと馬車はスピードを上げて逃げ始める。

 ラフレアは片手でカノンを抱きしめ片手で熊の傷を押さえていた。

 

『カイブツー、カイブツー。』

 カノンは珍しいものでも見るように怪物の方を指さして笑っている。

 レイは馬に乗ったまま剣を抜いて怪物の前に立ちはだかり、その目の前から走り去る。

 幸い怪物の速度はそれ程早くない、自分に注意を引き付けて馬車を逃がそうというつもりらしい。

 

「ギギギギ……。」

 

 何やらきしむような音を立てながら怪物は向かって来る。

「そうらこっちだ、こっちへ来いよ。」男が叫ぶ。

 しかし怪物は男には見向きもせずにエマ達の方に向かって追いかけて来る。

 

「ガチャ……。」

 

 慌てて男は怪物を追って馬を進ようとしたが馬が怪物を恐れて前に進まない。

 怪物はガチャガチャと八本の足を巧みに動かしながら狭い道を追いかけて来る。

 木々が茂ってはいるが怪物はその木々を上手くかわしながら馬車に迫って来る。

 

『カイブツー、チョロチョローッ。』

 

 突然怪物の体の上で爆発が起きる。

 

『ヒョオオーッ、ドッカーン。』

 

 見ると木の枝に引っかかったシドラが何かの魔法を使って攻撃をしたみたいである。

 怪物は少したじろいだようにも見え、腕の部分で頭をカバーするようなそぶりを見せた。

 しかしそれでも馬車を追うことをやめなかった。

 

「ほおっ!」

 シドラは木の枝から体を離すと馬車に向かって木から木の間を飛び移って来る。

 

「おお~っなんと器用な!」

 あっという間に怪物に追いついたシドラは怪物の前にすっくと立つと片手を前に出した。

 

「ウィザー・シドラの名において命じる。汝動きを止めよ。」

 

 おおっ胸を張って言い切ったぞ。やはりあいつはウィザーの使い魔なのか?

 

 ドコッ!

 

「ひえええええ~~~~っ。」

 

 また怪物に弾き飛ばされた。全然役に立たない奴。

 追いついてきた男が怪物の足を剣で攻撃しているが全く動じる様子がない。

 

「ん?あれは?」

 怪物の胴体の上の方に何かがゆらゆら動いている。

「なんかどこかで見たような?」

 

「エマさんこの先道が狭くなるなの。」

 ラフレアの言葉にエマは道の先を見る。道がそこで途切れるように勾配がきつくなっている。

「もしかしたら。」

 エマは馬車を飛び降りると怪物に向かって走る。

 

「エマさん。危ない!!」

 後ろでラフレアが叫んでいる。

 ラフレア、カノンちゃんを頼んだわよ。

 

『エマ、スゴーイ。』

 

 怪物の動きは決して早くない。

 山道なのでキューちゃんが速度を上げられないだけなのだ。

 エマ自身は最悪の場合は斜面を転げ落ちるようにして逃げれば逃げ切れると判断した。

 

 素早くエマは怪物の体に取つく。

 意外とあちこちに出っ張りがあって簡単に怪物の体によじ登れた。

 エマが体の上に登ると怪物は動きを止めた。

 

 胴体の上の方に飛び出している物はエマの思った通りキューちゃんに付いている目玉の様なものらしい。

 二つあるうちの片方が登ってきたエマの方を見るように向きを変える。

 

「やっぱりこいつがあんたの目なのね。」

 エマは力いっぱい先端の部分をぶん殴る。


「ギギギィィィ~~~~ッ。」

 

 怪物は何とも形容しがたい鳴き声を上げる。

 さすがにウィザー制の防具は強力だわ、思いっきり殴っても全然痛くない。

 

「このっ、このっ、このおおお~~~っ。」

 目の様な部位を怪物の体に押し付けてエマはひたすら殴り続ける。

 ぺキッと音がして部位がつぶれる。

 血か何か出るかと思ったが何も出なかった。

 

「ギュオオオォォォ~~~ッ。」怪物が大きな叫び声を上げる。

 傷つけられて怒ったのか大きく腕を振り回してくる。

 

「ひええええ~~~っ。」

 頭の上を重量感のある腕が通り過ぎ髪の毛をたなびかせる。

 

 見ると騎士見習い候補生も怪物の体に登ってきている。

 がんばれ騎士の卵の候補生。人民の安全は君の双肩にかかっているぞ。

 余程目を潰されたのが気に障ったのか今度はエマを叩き潰さんと腕を体に叩き付けて来る。

 

「あひょっ、あひぇっ、ひょおお~っ。」

 ドカンドカンと叩き付けられる手をエマは間一髪でかわし続ける。

 かわし続けながらもう一本の目のある場所に体を移動する。

 振り降ろされる腕を紙一重で交わすとぐしゃっと言う音がしてもう一つの目もつぶれた。

 

 馬鹿だネ~っ。

 

「ギュエエエェェェ~~~~ッ。」

 叫び声をあげて怪物はのたうち回った。

「おお、さすがはエマさん。こすっからい戦法は功を奏してますよ。」

「出たな役立たず!」

 

 いつの間にか怪物にしがみついているエマの後ろにシドラが立っていた。

 

「怪物は目が見えません今のうちに逃げましょう。」

 足場が悪い怪物の体の上でなぜかしがみつくことも無く飄々として立っている。

 

「ラフレアちゃん達は?」

「もうとっくに逃げました。」

「よしっ!それならもう安心だ。さっさとこの怪物をやっつけちゃってよ。」

「わかりましたそれでは私の極大魔法で破壊いたしましょうか。」

 

 シドラは両手の間に火花を散らし稲妻の炎を伸ばし始める。

 

「いやいやいや、ここでやるな。あたしがしびれる。」

「残念ですエマさんの前で私自慢の極大魔法を見ていただこうと思いましたのに。」

 まだシドラは手のパチパチさせながら残念そうに言った。

 

 あんたが無神経なのは知っているけど私はデリケートに出来ているんだ。 

 

「やったぞ!!」

 男の声が聞こえて怪物がガクッと体制を崩す。

 男が怪物の足の関節の裏側に当たる部分にに剣を突き刺していた。


「おお、あの見習いさんもやるもんだ。それじゃさっさと逃げちゃおう。」

「グギギィィィ~~~ッ!!!」

 怪物が声を上げ手を振り回す。刺された関節からは何やら黒い液体が飛び散っていた。

 

「よっしゃ今のうちに逃げるわよ。」

 

「そうしたらわたくしが極大魔法でこの怪物を倒します。」

「大丈夫?山ひとつ吹き飛ぶなんて事無いわよね。」

「もちろんです。このシドラにお任せください。」

 

「なんか何度も聞いたようなセリフなんだけど。」

「今回は大丈夫です。……たぶん……。」

 

 その間が怖い、その間が。

 

「おお~い、見習いさんウィザーが魔法を使うからすぐに離れるのよ。」

 エマが大声で叫ぶ。それに気が付いたのかレイも馬に乗って走り始める。

「よっしゃ今のうちに逃げるわよ!」

 エマも怪物から飛び降りると一目散に走った。

 

「エマさん少し離れたら物陰に隠れてください。」

「わかったわ。さっさとやっちゃって。」

 

「山よりも高きもの、海よりも深きもの……」

 シドラは両手を高く上げ魔法の詠唱を始める。

「ガチャガチャ……。」

 突然怪物が突然動き始めてエマを追いかけ始める。

 

「ひえええ~っ私を追ってくる~っ。」


「これはいけません、それでは以下省略。」

 いきなり稲妻が怪物を包み込み怪物の体ががくがくと揺れる。


「ひええええ~~~~っ。」

 エマの髪の毛が逆立ち髪の先端から稲妻が噴き出す。

 

「ギイイイイィィィィ~~~~ッ」

 ボンッ、ボンッと体から煙を吹き出し怪物は動きを止める。

 

「エマさんもう大丈夫ですよ。怪物は死んだようです。」

「全然大丈夫じゃない~~っ。体中がしびれた~っ。」

「極大の電撃魔法でしたが巻き添えを食ったようです。エマさんの心臓が止まらなくて良かったですね。」

 

 エマはとりあえずシドラの頭に踵落としを食らわしておいた。


アクセスいただいてありがとうございます。

アタシは本当にコイツの保護対象者なのか?……エマ

ま、心臓位止まってもすぐに直せますから……シドラ

双方の思惑の行き違いは往々にして悲劇を生みます  以下次号

 

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