ドワッフ族の幼女はスイカです
12歳の子供が働く事は珍しい事ではない、この世界では子供もまた大切な労働力なのである。
子供は決して家で遊んでいる訳ではない。
エマ自身ずっと祖母の手伝いをし薬草の知識を身につけてきた。その時間の合間に学校に言っていたのに過ぎないのだ。
しかし普通は家族がいなければウィザーの孤児院が引き取るのでこういった所で働くことは無い。
そもそもこんな仕事場で12歳の子供に出来る仕事が有るのだろうか?
「私達とは去年から一緒に働いてもらっているのよ、とても美人だから。」
とはいえ12才の女の子が働いているんだからエマにも十分務まるだろう。
まあドワッフ族のあの筋肉を見せられていささが驚いてしまったが、この程度でビビっていてはとても旅など出来ない等とも考えてしまった。
そんな事を考えているとエマは後ろに人の気配を感じる。
ラウラスはエマの肩越しに上を見上げて言った。
「おお、ラフレアさんか丁度いい君と一緒に仕事をしてもらうエマさんだよ。」
振り返るとエマの目の前に壁が有った。
「げげっ!」
ズズズッとエマは後ずさる。
エマの胴体程も太さのある四肢、エマの肩幅程のウエスト、エマの倍はある肩幅、そして背はエマより頭ひとつ以上高く、スイカほどの大きさの物体が2つ胸から飛び出していた。
「な、なに……?」
エマの口から乾いた声が上がる。
ピンピンと跳ねたくせのある長髪、やや濃いが形の良いまゆ、パッチリした可愛い目、やや幼さが残る丸い顔、それがその肩の上に乗っかっていた。
「エマさんは15歳だから君より少し年上だが仕事を教えて上げてくれますか?」
「エマお姉さん?ラフレア・ジオなの、宜しくお願いしますなの。」
ペコリとその巨体を曲げると、幼い感じのたどたどしい言葉遣いで挨拶をする。
「どうしましたエマさん顔色が悪いですよ。」
囁くようなシドラの声が聞こえる。
うるさいな、黙ってろ。
「こここ、こちらこそ宜しく、え、え~とラフレア……ちゃん?」
「お姉さん、人族、とっても美人なの。」
ニッコリと笑うラフレアの顔は天使のよう優しさをたたえていた。
やだっ、可愛いい……体を見なけりゃ。
「ラフレアさんはあまりウィザー語が得意じゃなくてね、まあだんだん上手くなっていくでしょう。」
「お姉さん、ラフレアと一緒に仕事、仲良くしてなの。」
こんなゴツイ体していても声は12歳の女の子なのが不思議な気がする。
ブルブルッと頭を振るとエマもにっこり笑って右手を上げる。
「もちろんよ。ラフレアちゃん、こちらこそ仲良くしましょうね。」
「おお、エマさん早速ラフレアさんと仲良くなって頂いてありがとうございます。」
「いいえ、こんな可愛い娘だったらすぐに友達になれますよ。ハハハ……。」
いかん笑い声が乾いている。
「そうだ、エマさん今日はもう仕事はありませんから寮に案内致しましょう。」
「えっ?、今日から寮に入れるんですか?」
「もちろんですよ。あ、無論寮費はかかりますが3食付きますから。丁度いいラフレアさん、エマさんを案内してあげなさい。」
「は~い。エマさん、こっちなの。」
ラフレアはエマの荷物を軽々と持つ。
「あ、大丈夫よ荷物くらい自分で持つから。」
「お姉さん一緒に住む、ラフレア寂しくないの。」
「へ?」
「ああ、エマさん寮は二人部屋ですから、ラフレアさんと仲良くしてあげて下さい。」
後からラウラスが声を掛ける。
……クソッ……嵌められた。
「あ、あはははは……も、もちろんよ。」
「顔が引きつってますが?」
再び後から囁くシドラの声が聴こえる。
エマは振り向きざまローリングソバットをシドラに打ち込む、シドラは吹っ飛んでおがくずの山の中に頭から突っ込んだ。
「エマさん、シドラ、仲がいいなの?」
むふふっ、ラフレアの基準ではやはりそうなるのか。
「ドワッフ流の挨拶よ。」
「いやおや、そんなにシドラさんと仲が良いとは思いませんでしたよ。」
ラウラスが大人の対応を見せてくれる。
そんなの有る訳が無いじゃない、見たままの仲よ!
「ふふん、まあね。」
「それじゃ行くなの。」
ラフレアが先になってエマを案内してくれる。
ラフレアが案内してくれた寮は部屋が幾つも連なる建物だった。
ドアの所には数字が書かれておりエマが案内された部屋には103と書かれていた。
部屋は8畳位の大きさでベッドが二つ置かれており、ベッドの上には棚が付いていた。
ひとつのベッドはラフレアが使っているらしく荷物が置いてあり、ベッドの上には大きな熊のぬいぐるみが置かれていた。
「かわいいぬいぐるみね。」
「お友達、ドンちゃん。一緒に寝るの。」
ラフレアはぬいぐるみをエマに紹介する。体は大きくても中身は確かに12歳の少女である。
「その動物はなに?エマの所では見たことないわ。」
「熊さん。山の奥にいるの。とても臆病なの。」
「ラフレアちゃんは見たことが有るの?」
「山奥にキノコ採りに行くとたまに会う、すぐ逃げる。」
「小さいの?」
「おおきい、エマさんより大きいなの。」
「そんなに大きい熊に出くわして襲われたら危なくない?」
「このドームの熊、山の神の使いみんな大事にしてる。ラフレア頭撫でる。」
……殴るの間違いじゃないよね。
「山の神の使い?ウィザーじゃなくて?」
「山での仕事危険いっぱい、みんな山の神にお願いするの。」
熊がどうして山の神になりんだろう?
「私たち山の木切らせてもらう。切った木また生えるよう苗木植えるの。熊は苗木の為に木の実を食べて糞をするから苗木良く育つの。猟師のおじいさんそう言ってた。」
「この山には他の動物はいるのかしら?」
「ヤギ、ウサギ、キツネ、オオカミもいるけどみんな人間見ると逃げていくの。ヤギとウサギは苗木を食べるので猟師が獲ってくるの。」
山で生きるものは山を大切にする……か。
「エマさんいつまで仕事するの?」
「旅のお金が貯まるまでよ。本当は行商隊に雇ってもらう予定だったんだけど。」
「エマさん旅するの何のため?」
「ああ、私捨て子だったらしいのよ。おばあさんが亡くなったので私がどこから来たのか知りたくなったのよ。」
「家族亡くなる、寂しいの。」
「まあ、仕方ないわよ人の寿命だしね。」
「ラフレアちゃんはやっぱり出稼ぎに来てるの?」
「ラフレアのお父さん死んだなの。」
「お父さん?お母さんは一緒じゃないの?」
「……母さん出稼ぎ…帰って来ないの。」
……ああそうか、ドワーフ族は母系社会だっけ。女が生んで男が育てる社会なんだ。
「家にいるとなぜか男達ラフレアの事いじめるの。ラフレア体大きかったから家を出る事にしたの。」
ああ~、家庭内暴力かな?結構つらい過去があるんだ。
「そしたらここのドームのウィザーからここに来るよう勧められたの。ラフレアの体ならここで稼げるからと言ってた。」
まあ、確かにこの体ならそう思うよな。
「この間まで女の人ここで一緒に暮らしていたの…お母さんみたいな人…子供を生むために帰ってしまったなの。」
ここに来て誰かの子供を作って国の亭主に育てさせるのか!?
ま、まさかそんなん事無いよね…多分。
「その人とのこぎりを引いていたの…今はのこぎりは引けないの。」
「のこぎりを引くのは息を合わせなくてはできない…誰でもという訳にはいかないなの。」
「それで今は雑用係という訳ね。」
「しばらくの間だけどよろしくね。ラフレアちゃん。」
「ラフレア…エマさんの事お姉さん…呼びたい。いいなの?」
「もちろんよ、お姉さんもうれしいわ。」
ラフレアは部屋の隅に置いてあった袋を持ち上げる。
「ラフレアこれから学校に行く…夕食までには帰ってくるの。お腹すいたら先に食堂に行ってなの。」
そうか、体が大きくてもまだ12歳だからな、学校にも行かせてもらえるんだ。
「わかったわ。ありがとうラフレアちゃん。」
ラフレアが出て行った後エマは荷物を片付けると外に出る。
少し先に山肌の斜面が見える、山奥から林道を通って材木が運ばれて来る道が有った。
山の中腹には滝も見えた。あの滝の水がこの湖まで流れて来るのだろう。
さほど高くはない山ではあるが斜面だらけで山の峰が沢山見える
あの川そばなら畑が作れるだろうが開墾したような土地は見当たらない見渡す限りの木が生えている。
それでも所々にまとめて木を切った跡が見える。こうしてみると山はよく手入れをされているように見える。
確かにこんな斜面の多い所では農業は難しいだろう。このドームに人間が少なかったのはその為らしい。
六角形に区切られたドームの屋根の接合部分から細い柱が山から立ち上がっている。
ドームそのものはエマの住んでいたドームと変わることは無い。
大きく違うのは山の高さに合わせてドームの天井そのものが傾斜をしている事である。
山肌に合わせて傾斜を取りながらいくつもの尾根をその下に取り込んでいた。
尾根の一番高い所でもなおドームの天井は十分な高さを取っていた。
このドームは何故有るのだろう?
ふとエマは故郷のドームに住んでいれば起こさないような疑問を持った。
ドームが何故有るか?これは言うまでもなく人々は外に出れば呼吸が出来なくなるからである。
人々が物を作り食事をし、生活を行うためにはドームがどうしても必要であった。
しかしこのドームは何だろう?
このドームでは人が住むにしても畑を作れない以上多くの人が住むことは出来ないだろう。
木だけは豊富にあるが人は木を食べて生きてはいけない。
生きていくためには木材を売って食料を買い入れなくてはならない。
そうなると木材を切り出し他のドームに売るためにこのドームが存在していることになる。
しかしエマのドームでも建物のほとんどは土を固めたレンガでできており木材は自給できている。
こんなにたくさんの木材が有ったとしても使い道は無いのだ。
無論有れば有ったで使うことは出来るだろう。しかし橋を渡っ交易を行うには大きすぎる荷物なのでは無いだろうか?
エマの父も交易は小さくて値の張るものを扱うと言っていた。
ドームはなんのために作られたのだろうか?
人が生きるためには食べて、着て、住まなくてはならない。
しかしその前に生きていける世界でなくてはならない。ドームはその世界を提供してくれている。
生きてはいけても生活できる世界でなければ意味がない。
このドームは少ない人数の人間が生きてはいけても生活は難しい。
こんなドームを何故作ったのであろうか?人が生きやすい場所にドームを作ればいいではないか。
いや、そもそもドームの中でなくては生きていけない世界で何故人間は生きているのだろう?
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