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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
小人族のドーム
24/211

シドラは竜に頭をかじられました

 ピクシー村から出発したエマ達は次のドームへ繋がる橋に近づいていた。

 

 橋のたもとはいつも賑やかだ、交易には橋の通過が欠かせない。

 しかし橋は外気に接しており普通の人間や動物では橋の途中で息が出来なくなり意識を失ってしまう。

 

「だけどシドラ、外にも動物は生きているんでしょう。」

 エマの疑問はおそらくは人類全体の疑問だろう。

 何故人々はドームという世界の中で生きなければならないのか?

 

 ウィザーはなんの支障もなくドームの外で暮らしているというのに。

 ウィザーに対する嫉妬、羨望、妬みなどは多くの人々中に根強く有る感情である。

 それと共にドームの中の安穏とした生活を当たり前のように享受している人間達の葛藤もそこには有った。

 

「はい、かなり大型の動物も生きていますし、ドームから逃げ出した動物たちにも生き残って数を増やしている物はいるようです。」

「どうして人間だけは外に住めないの?」

「そんなことはありませんよ、人間も徐々に慣らしていけば外で生活できるようになる可能性はありますから。」

 エマがフェブリナドームを出る時に聞いた話である。

 

「それじゃあなぜ人間は外で暮らさないの?」

「エマさんは出ただけで死ぬかもしれない場所に自ら望んで出て行きますか?」

「ま、そりゃそうだけどさー。」

 

「動物たちにしても自ら望んで出て行くわけではありません。獣に追われ逃げ道を無くして外に出た者や、外にある美味しそうな餌に吊られて出て行く者たちが必ずいます。その中のわずかに生き残った者達が子孫を増やして外で生き続ける事が出来る者たちが生まれたのです。」

 

「なんで人間はやらないのかしら?」

「生き残る確率より死ぬ確立の高い場所に自ら出て行く人はいないでしょう。」

 これも既に聞いていた、ウィザーの見解は人々の見解でもあった。

 

「でもこんなに大勢の人たちが橋を渡って行き来しているわよ。」

「安全を考えた装備でわずかなリスクを犯せば利益を得られます。ましてや橋の往来を職業とする者はその為に装備を改良し徐々に安全性を高めていくことが出来ます。」

 

「そんな装備無しに移動できるウィザー達が交易を始めたら大儲け出来るじゃない。」

「我々は傍観者です。ですから戒律によって人々に対する過分な干渉は禁じられています。第一私達に必要なものは十分自分たちで用意できます。わざわざお金を儲ける必要性は無いのです。」

 

「ウィザーギルドは?いろんな物を売っているしちゃんとお金も取っているじゃない。」

「お金を回すのもまたウィザーの仕事なのです。ギルドで売っている物は人々が生きていくのに欠かせない品物ですがそれらを全て無料にする事が良い事だとエマさんは思われるのですか?」

 

「お金のない人もいるよ。」

 

「それを救済するのはお金を持っている人達が行わなくてはなりません。それが人間が獣と違い社会を作っていると言う事なのですから。」

「あたしにはよくわかんないけど要するに人間の事は人間がやれって事なの?」

「はいそうです。人間には知恵があり心が有ります。自ら考え自ら行動する能力も有ります。」

 

「孤児院はどうなの?ウィザーは孤児院も経営しているじゃない。」

「あれらの予算はすべてウィザーがいろいろな場所で人と同じ条件の商売を行いそれで儲けた金を使っています。ですから結構経済的にはどこも厳しいのですよ。」

 

「なんでそんなにまどろっこしい事をするのよ?

「それは子供は人間の宝だからです。子供が飢えて死ぬ事態だけはウィザーの戒律で避けなくてはならないことになっています。それすらも我々が人々の生き方に干渉しない方法で行わなくてはなりません。」

 

「それじゃウィザーは学校を作って子供たちに勉強を教えているのも同じことなの?」

「そうです、ウィザー語を覚えればすべてのドームのウィザーと会話が出来ます。つまり人々はどこのドームでも生活することが出来る訳です。」

「あなたたちウィザーは人々の移動を促しているように見えるわ。」

「はい、人々は外に出る事により多くの知識を学びます。ドーム同士が孤立し人々の移動のない世界が良いと思われますか?」

 

「この世の言葉を全部ウィザー語にしちゃえば簡単なのに。」

「そんな事をすればピクシー族の世界も人族の世界も同じ世界が出来てしまうではありませんか。」

「だけどそれだと移動を促すことと矛盾しないの?」

 

「エマさんはとても利発な方ですね、移動が無ければ人々の発達は進みません。100人の世界と100万人の世界のどちらが沢山の考え方が生まれるでしょうか?」

「つまり発展はしたいがドームの独自性は無くしたくないって事なのかしら。」

 

「よくお分かりですね、エマさん。」

 

「だけどそれはシドラが考えたことなの?それともウィザー全体の考えなの?」

「はい、私がウィザーになった時に渡されたウィザー戒律集の中に書いてありました。」


「戒律集?」

「これはウィザーの行動の規範となる物ですからとても大事な事なのだと言われてきました。」

 なんだやっぱりそれか。

 

 ま、そうだわなこれまでのシドラの行動を見てもただのアホにしか見えないもんな。

 

 

  ◆

 

 

 エマ達は橋のたもとに着いた。

 

 相変わらずここは活況を呈している。多くの馬車が橋のたもとに並んでいる。

 橋の幅は100メルカ以上あるが無秩序に出て行けば入って来る側との混乱が起きる。

 橋に出る直前に馬に呼吸器を着け自らも呼吸器を装着しなくてはならないからだ。最初から呼吸器を着けて待てば橋の途中で空気が無くなってしまうだろう。

 

 そこで柵を作り呼吸器を着ける場所を設け順番に出発して行くく様にしたのだ。

 エマ達は呼吸器を付ける必要が無いので横の通路を使って先に出て行こうとしたところ大きな声が聞こえた。

 

「竜だ!!」

 

 人々が一斉に馬車を捨てて逃げ始めた。

「竜ってなに?」

 

 エマは逃げてきた人に尋ねる。

「いいから早く逃げろ食われちまうぞ。」

 その男はエマの手を振りちぎるように走って行った。

 

 その時橋の出口の所に大きな獣が姿を見せる。

「なにあれ?」

 

「竜……ですね。」

 

 大きな後ろ足、小さ目な前肢。大き目な頭に大きな口、その中に見える凶悪な牙。

 明らかに肉食とわかるその生き物は尻尾も含めると全長が6メルカ位、足から頭までだけでも4メルカを超える大型の獣である。

 後ろの2本足で立ち周囲を見渡して獲物の気配を探っている。

 

「シドラ、みんな逃げちゃったわよ何で逃げないの?」

 初めて見る竜の恐ろし気な姿にエマはシドラにしがみついた。

 

「エマさんはそこを動かないでください。私が彼と話をしてみましょう。」

 

「へ?話って、シドラあれは話の通じる相手なの?」

「心を持って話し合えばたいてい理解出来しあえるものなのですよ。」

 いつものシドラらしい発言であるが、知性を感じさせない竜にそんな物が通じる訳がないとエマは感じていた。

 

「ちょっとあんた!」

 シドラは構わず軌道馬車から降りると飄々としながら竜に近づく。

 シドラもそれなりに大きな男ではあるが竜はさらに大きかった。

 

 竜の頭の位置はシドラの頭よりもさらに高いところにありその爬虫類の目でシドラを見つめていた。

 竜の大きな頭は優にシドラの上半身を上回り顎は大きく裂けシドラを一飲みに出来そうな迫力がある。

 その大きな顔の前ではシドラは全く無力な存在のように見えた。

 

 竜は不思議なものを見るようにシドラを見ている。

 

 匂いをかいでいるようにも見えるどちらにせよ食えるかどうか考えているのだろうか?

「ここはあなたたちの来るところではありません早くあなたたちの世界にお帰りなさい。」

 シドラがひどく場違いな発言をする、どう考えても理屈の通る相手ではない。

 

 カプッ!

 

 シドラがそう言った途端の竜がシドラの頭にかみついた。

「ひええええ~~~~っ。」

 頭をかみつかれたままシドラは振り回される。

 

「シドラ!!」

 

 エマは叫び声を上げていた、なんつーアホか?

 馬車の陰に隠れながら事の成り行きを見守っていたエマを竜はじろりと見る。

 

 その爬虫類の目にエマは背筋に冷たいものが走る。

 


アクセスいただいてありがとうございます。

無敵少女も竜には勝てません。アホなウィザーはエマを守れるのか?

竜に睨まれたエマの運命や如何に? 以下次号

 

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