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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
小人族のドーム
23/211

ドワッフ族もたまには頑張ります。

 しばらく追跡が続いたが突然両脇の男達が馬車に向かってきた。

 

 剣を抜くとエマたちの追跡を阻止しようと馬車に寄ってくる。

「うわっ剣を抜いたべだ!」

「どうすべえ。」

「なんか得物は無えだか?」

 

 男は剣を使って馬車の上をなぎ払う。ドワッフ達はかろうじて頭を下げてやり過ごす。

 

「ひええええ~っ!」

「なにするだ~っ!」

「オラ達を殺す気か~っ!?」

 

 もう一人の男が更に馬車目掛けて剣を振り下ろす。

 馬車の荷台にあたって火花を散らす。

「きゅいいいい~っ。」

 

 キューちゃんが悲鳴を上げる、痛いのかな?

 

 その時エマには近くに寄ってきた男の顔がはっきりと判った。

「あ、あんた。スカポンタン兄弟!!あんたらまたこんな事やってるの?」

「や、やかましい!こっちにも生活があるんだ!」

 

 男はエマに向かって剣を振り下ろす。

「まずっ。」

 エマがそう思った刹那シドラが剣を手で受け止める。

 

「このウィザーやろう、また魔法を使う気か?」

 そう言いながらスカポンタン兄弟は少し離れていく。

「あんた戒律は!?」

「エマさんの保護は戒律の中です、しかしドワッフ族は違います。」

 

 あーっ、全く面倒くさいな~っ。

 

 エマは後ろを見ると縮こまっているドワッフ族の尻を蹴飛ばした。

「あんた達何やってるの?男なら戦いなさい。」

 ドワッフの男たちは蹴られた尻をさすりながら尻込みしてる。

 

「かんげえて見るとオラ達百姓だで。」

「んだっ鋤、鍬しか持ったことねえだ。」

「おら鍛冶屋だで剣はいつも作ってるだが使ったこたね。」

 エマはドワッフ族の言葉に天を仰いだ。

 

 この腰抜けどもが!

 

「そんなら何をしにあんたらあいつらを追いかけて来たのよ!」

「いや、追いつけば女置いて逃げていくだと。」

「んだ、そうなれば女が余計おらに惚れてくれるだと思っただに。」

 

 なんつー軟弱な発言じゃ!見た目と違ってまるで草食男子じゃないか。

 再び近づいてきた男が馬車の上で剣をなぎ払う。

 

 ドワッフ族達は頭を抱えて馬車の床に伏せている。

 

「ゴンジ~助けて~っ。」

「グンダ~頑張って~っ」

 前を走る馬車から女たちの声がとぎれとぎれに聞こえる。

 

「何やってるの頭抱えて尻出して、あんた達それでも男なの?」

 ドワッフ族の男の不甲斐なさにエマはついにキレ始めた。

 

「いんや、まさか反撃してくるとは思わなかったもんだば。」

「あいつらしっかり殺しに来てるわよ!」

 

「ややっ、想定外だども。」

「おらたつ平和主義者だで。」

 どうにも自分に対する言い訳だけが聞こえてくる。

 

「ここで逃したら一生結婚できないわよ!」

 さすがにこの一言に男達全員が自分の置かれている状況に気が付いた様である。

 

「んだ、いまあの娘さ逃したら後がねえ。」

「巨大な女房の尻に敷かれる生活。」

「ドジをすると思いっきりぶっ飛ばされる亭主。」

 

 なんか聞いてると悲壮感がただような~。

 

「いや、それくらいは平気だど。」

「んだ、ドワッフ族だで丈夫だから。」

 そうかドワッフ族の頑強さ故に耐える事が苦にならないのか?

 

「馬鹿言ってねえで得物さ探すだ。」

「そんな物ねえだ。」

 考えてみたらキューちゃんの荷台には何も乗ってなかったんだよな。

 

 実はエマも娘たちを取り返す算段なんて何にも考えてはいなかった。

 ふと全員の目がシドラの方に向く。

 

「得物!!」

 

「は?…な、何を言っているんですか。何で私を見るんですか?」

 ドワッフ族達はシドラ元に殺到するとシドラを目よりも高く掲げる。

「や、やめて下さい何をするんですか?」

 

「せーの。」

 

 馬車のヘリに足をかけると近寄ってきた暴漢にシドラを投げつける。

 さすが怪力のドワッフ族。シドラの体が勢いよく男に向かって飛んでいく。

「ひえええええ~っ」

「うわわわっなんてえ事しやがる。」

 

 馬に乗っていた男が悲鳴を上げるが、投げつけられたシドラにもろに当たってしまった。

「ひええええ~っ。」

「うぎゃあああ~っ。」

 ふたりまとめて馬から落っこちる。

 

 ピクシーの娘達が歓声を上げて喜んでいる。

「よっしゃー。」

 二人のドワッフ族が走っている馬車から飛び降りる。

 

 ……いや!足が短いので転げ落ちた。

 

 ところがドワッフ達は転落の衝撃を物ともせずに起き上がると男の所に駆け寄る。

「ちょっと待て、タンマ、タンマ、俺の負けだ。」

 怒りの炎に包まれたドワッフ達に言葉は聞こえなかったようである。二人してマウントポジションで殴り始めた。

「や、やめて~っ、ごめんなさ~い。」

 

 男がフルボッコになるまでドワッフ達の怒りは収まらなかった。

 

「な、何てことをするんですか~っ?」

 転落から立ち上がったシドラは慌てて走ってゆく馬車を追う。

 

「よっしゃ、もう一人だで。」

 こんどはゴンジを担ぎあげるとふたりしてもう一人の馬に向かって投げつける。

「ゴンジーっ。」

 悲鳴とも声援ともつかない叫び声が聞こえる。

 

「馬鹿め二度と同じ手を食らうか。」

 二人目の男は手綱を引いてスピードを落とした。その為ゴンジは狙いが外れ馬の前に落ちてしまった。

「ゴンジ~っ!!」

 馬車からサツキの悲鳴が聞こえる。

 

 あっという間もなくゴンジは馬の蹄に巻き込まれた。

 

 死んだか?

 

 一瞬誰もがそう思った。

 

 ドワッフ族以外は。

 

 ゴンジは馬に踏みつけられながらその馬の足にしがみ付く。

 馬はたまらず転倒し乗っていた男は馬から放り出された。

 

 蹄で踏みつけられた筈のゴンジはすぐに立ち上がると倒れた男に掴みかかった。

 馬車からピクシー達の歓声が聞こえる。

「ゴンジーっ、ゴンジーっ、ゴンジーっ。」

 

「待て、待て、殺す気じゃなかったんだ、ほんの足止めのつもりだったんだ。」

「やかましい!」

 男は走って逃げようとするがゴンジは男に足にしがみついて離れない。

 

「こ、このやろうはなせ。」

 ゴンジは殴られようが蹴られようが頑として男を離さなかった。

 そこへ馬車から転げ落ちてきたふたりが合流し男の前に立つ。

 

「ま、まてっ、やめて~っ。俺が悪かった。」

 男は悲鳴を上げるが、3人のドワッフ達によってフルボッコにされた。

 

 それを見ていたエマはふたりの冥福を祈った。

 

「おめ、腹はでえじょうぶか?」

 ゴンジの腹にはくっきりと蹄の跡が残っていた。

「ああ、このくれえはなんともねえだ。おらドワッフ族だかんな。」

「3人はすぐに馬車の後を追って走り始めた。」

 

 ふたりの兄弟の妨害でだいぶ離されていたが、妨害が無くなったおかげで追いついてきた。

「それはいいとしてあの馬車をどうやったら止められるかな?」

 エマは頭を掻いた。

 

「エマさーん、助けて~っ。」

 サツキの声が聞こえる。

「待ってて~っ、今助けるわ~っ。」

 

 と言いつつ、全く策を考えていなかったエマは…まあそんな物だろう。

 

「エマさん。」

 背後でシドラの声がした。

「あら、もう追いついてきたの?ずいぶん早かったのね。」

「疾駆けの魔法で走って来ました。」

 

 何故かシドラの背後に暗黒領域を感じる。

 

「すご~いっ。さすがはウィザー。」

 冷や汗を流しながらシドラを持ち上げる。

 

「当然です。私はウィザーですから。」

 なんだ?いきなり暗黒領域が消えたぞ。

 

 しかし何度も思うが、ウィザーと言うのはなんて単純な奴ばかりなんだろう。

 

「エマさんなんてことするんですか私を敵にぶつけるなんて、私は得物ではありませんよ。」

「投げたのはドワッフ族なんですけど。」

 

「この様な状況に至った最大の原因はエマさんではありませんか。」

「ああら、最大の原因は前を走って行くスカポンタン兄弟よ。」

「どちらにしてももうドワッフ族はいませんから、今から引き返しましょう。」

 

「あんたねえ、この状況の中で後に引けると思うの?」

「ウィザーなら引きます。」

「あんたに男の矜持は無いの?」

「私は男ではありません、ウィザーですから。」

 

 だからそこで胸を張るなよ。

 

「キューちゃん止まって下さい。」

「きゅっきゅきゅうう~っ。」

「キューちゃん嫌だって。」

 

「なんであなたは私の言うことを聞いてくれないんですか~。」

 

「きゅいい~ん。」

「あたしの方がいいってさ。」

「キューちゃああん。」

 

 あ、コイツまた落ち込んでる。のの字を書き始めた。

 

 その時前の馬車の横に素早く動く影が見えた。

「あれ?なに?」

 

 エマがそう思った瞬間に影は前の御者目掛けて飛び上がる。乗っていたピクシー達も気がついたようだ。

 ゴツッという音が後ろを走るエマ達にも聞こえた。

「なんか痛そうな音が聞こえてきたけど。」エマが顔をしかめる。

 

「どうやら誰かが助けに来てくれたようですね。」

 馬車のスピードが徐々に落ちてやがて止まった。

 

 馬車の上に誰かが立つ。影になって良くは見えないが子供のような大きさだ。

 腰の後ろに十字に刀の様なものを差していた

「ピクシー族?」

 

 エマがそう思った刹那、影は素早く動いて姿を消す。

 

「シドラ、あの影はもしかしたら。」

「そうですね、グラスドームの砦で見た影と同じ者かもしれませんね。」

「どちらにせよ助かったわ。」

「はい、何も考えずに追いかけて来た割にはうまくいきましたね。」

 

 あー、うるさいなーもう。

 

 後から男達が追いついてきた。

 馬車に乗っていたピクシーの娘達が駆け寄ってきて、それぞれの相手と抱き合う。

「ゴンジー、ゴンジー、無事なのね~っ。」

 サツキは駆け寄ってゴンジの腹に付いた蹄の跡をさする。

 

「サツキの為にこんな怪我して、痛くないの?」

「んだ、おらドワッフ族の男だで、こんただモン女に殴られる事に比べたら蚊に刺されたようなもんだで。」

 おいおい、ドワッフ族の女ってのは怪物か?

「まあ、良かったわね、これであのドワッフ族達も男を上げたわ。」 

 馬車に行ってみるとスカポンタン兄弟の長男が大きなたんこぶを作って気絶していた。


「コイツどうしようか?」 

「ドワッフ族にフルボッコにさせますか?」

「あんた時々容赦の無いこと言うのね。」

「はい、人間同士の諍いですからどうとでも。」

 

 コイツ思ったよりとんでもない奴かもしれない。

 

 その時、後からドドドという馬の蹄の音が聞こえた。

 顔がボコボコになったスカポンタン兄弟が馬車に駆け寄る、すると長男がガバっと跳ね起きそれを馬に乗った弟が引き寄せる。

 一頭の馬に二人乗りになってその場から逃走した。

 

「逃げちゃいましたね。」

「まあ、いいんじゃないの?顔がかなり変わっていたし。その程度の罰は受けたみたい。」

 

 サツキたちとドワッフ族の男たちがエマの所に寄ってきてみんなで頭を下げる。

「ありがとうございましたエマさん。」

「ほんただ、えれえ世話になっちまって、お礼の言葉もねえだ。」

 

 口々にお礼を言われてエマは恐縮していたがシドラは一人放置されのの字を書いていた。

 

 やがて追っ手の村人達がやってきて彼女達を村に連れて帰った。

 旅館の娘のカズサも無事だった。ドワッフ族の男達も笑顔で嫁さん達を連れて帰った。

 うんうん、何事も無くて良かった良かった。

 

 その晩は準備されていた披露宴にエマも招かれてみんなから感謝の言葉を受けた。

 

「さあさあ、お礼というには些少ですが今夜はうんと食べて飲んでくださいね。」

 サツキの母親の女将に言われて初めてエマは酒を飲んでみた。

 エマは成人しているので酒を飲んでも何の問題もないのは無論の事であった。

 

 問題が有ったのはその先の事であった。

 

 サツキの親戚や友人が集まる披露宴である。サツキを救ってくれた恩人であるエマにみんなが酒を注ぎに来た。

 エマは酒を飲むのは初めてであったが、酒がすごくおいしいと感じてしまった。

 その結果がどうなるかなどと知る由もなく注がれた酒をすべて飲むと来た人全員に返杯を行った。

 サツキの無事を祝って何度も乾杯が繰り返され、最後はエマが両手に酒瓶を持って全員の杯に並々と酒を注ぎ乾杯を繰り返した。

 

 その結果披露宴に出席したドワッフ族の男達は何とか持ちこたえたのだが、ピクシー族の男を全員潰してエマだけが一人盛り上がっていた。

 

 翌朝すがすがしい朝にエマは旅館を出発した。

 宿代の残りを払おうとしたが、サツキの恩人だと言って女将は宿代を受け取らなかった。

 

 つやつやの顔で出発したエマの後ろを二日酔いで死にそうな顔をしたピクシー族の面々がそろってエマを見送っていた。

アクセスいただいてありがとうございます。

ヘタレなドワッフ族に役立たずのウィザー、エマの奮闘により一件落着…したのかな?以下次号

 

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