第十三話 someone very similar -よく似た別人-
地下は薄暗く、天井のライトは今にも切れそうなほどチカチカと点滅を繰り返し不気味な様子を見せる。
また、壁には大きく補修した後や弾痕の跡がいくつもあり激しい戦闘が行われたのと同時に、長い間この場所が占拠され使いつぶされた事がすぐに理解できた。
「この場所、何時から占拠されてるんですかね?」
「ベイガー総司令官によると内戦が始まる前から拠点にされてた可能性が高いらしい、実際この場所は監視は行いつつも黙認された場所だったからな」
一輝の質問にウィリーは真面目に答えると、ダクトのカバーが音を立て落ち五人は一斉にその方向を見る。
「……言い忘れてたな、気を抜くなよ」
ダクトカバーはネジが劣化していたのか留め具のネジが折れており、五人は警戒を解き背を向けた。
「なんだ、劣化してただけかよ」
「古い施設……というより、ほぼ放棄されたような印象だな……実際、ブラボーチームで行動してても大した兵の数は居なかったしな」
「本当か?」
ルークの言葉に疑問を持ったウィリーは足を止めると、囚われたブラボーチームに連絡を取る。
「こちらウィリー、誰か応答しろ」
〈こちらブラボーチーム、どうかしましたか隊長?〉
「武器庫の様子を教えてくれないか?」
〈武器庫ですか? がらんとしてて特に変わった様子は……〉
「……出れそうか?」
〈いえ、ジャックがクラックを試みてますがどうやら遠隔操作は既に切られてるみたいで……手動ロックになってる以上内側からはお手上げです〉
「マズいな、奴らここを既に放棄する準備を整えている……最悪ここもろとも吹っ飛ばされるかもしれん」
〈本当ですか! おいジャック聞いたか! 何とかできないか!〉
〈出来たらやってる! ……あ、いや……そうだな、隊長のサポートなら出来るかもしれない……隊長! この施設の解析図です、我々の通ったルートは記述されてます〉
ジャックから送られたデータを五人は受け取ると、ウルフ部隊が通ったルートは緑色に表示されたマップデータを受け取った。
〈そんなに離れてないはずなのですぐ合流できるとは思いますが、我々が逃がしたドールが施設のどこにいるのか分かりません! くれぐれも……〉
「ああ、分かってる……そっちもな」
通信を終え、五人は手に入れたマップデータを見ながら駆け抜けると、武器庫へと到着するが、中に残された兵器は殆ど無く旧型の戦車や予備のパーツ類であり巨大な空間は完全に空洞と化している。
そんな中ルークは放棄された戦車に近づくとじっくり見つめ、中を確認した。
「何か面白い物でもあったかルーク?」
「いや……これフォルンのだけど多分正式採用されてない奴じゃないか? 世界大戦の時も結局腕付きが正式採用されて製造されてないんだよ」
「よく知ってるな、流石ルーク」
「前職の時にも言ったろ内藤、俺は元々エンジニア志望だったんだよ……まぁ、資格持ってないからテスターになったけどな」
「兵器オタクも本職には敵わなかったか……」
「聞こえてんぞ内藤」
二人は互いに冗談を言いながらも戦車を眺めると、中に入っていたルークは一つの部品を取り出しウィリーに見せる。
それは小さなテープの様なものであり、フラッシュメモリが発達した現代では到底見る事のない記憶媒体であった。
「これは?」
「内部に残されてる音声記憶装置から取り出した、あれは人が乗る事前提だったからな……起動して数分を録音して乗ってた人間の痕跡を残す目的があったらしいが、使ってたら何かしらの情報は残ってるかもしれない」
「なるほど、私が責任を持って預かろう」
ウィリーは腰元のポーチに記憶媒体を仕舞うと、五人が入ってきた武器庫の入り口からシャーっという何かが転がる音がし、振り返るとそこには猛進するドールの姿があった。
そしてドールはウィリーに切断されたはずの腕が直っており、万全な状態でウィリー目掛け突っ込む。
すぐさま剣を抜き、ウィリーは一撃を受け止めると軌道を反らしドールは片手を地面に擦りながらウィリーの後ろへと滑っていく。
「あれがドールか……」
「ウィリーさん! 俺らにアイツの相手は任せてください! E2ゲートのブラボーチームの方は任せました!」
内藤とルークは前に出ると、三人は顔を合わせ武器庫の奥へと向かう。
「さて、こいつは相当足が速そうだが追いつけるか内藤?」
「お前こそ、照準合わせ損ねるなよ?」
「馬鹿言え、カレンさん程じゃねぇが外さねぇよ!」
ルークは銃床を肘で叩き反動で銃口を即座に持ち上げると、スコープを覗くことなく引き金を引き弾丸を打ち出す。
ドールは即座に左手で銃弾をガードするも衝撃を逃がせず球体の足では踏ん張れずにバランスを崩し、その隙を逃さず内藤は切り込む。
だがドールは即座に剣先を内藤に向けると、上部についている銃口が散弾を打ち出した。
「がっ!」
咄嗟に身を捻ったものの散弾は内藤の脇腹に命中し、装甲の薄いスーツを砕き血を吹き出す。
「クソッ! 早えなおい!」
ルークは狙撃銃をドールに照準を合わせ引き金を引くも、ドールは直立したまま左右へと動き銃弾を回避し、弾切れを起こしたルークはマガジンリリースボタンを押したとき一気に前進した。
だがルークはその様子を見て後ろに飛び横薙ぎの斬撃を回避すると、引き金を引き弾丸を打ち出す。
「チャンバーに一発残ってんだよ! 馬鹿野郎!」
弾丸はドールの肩に命中し、腕を吹き飛ばすと接合部から火花を散らしドールは苦悶の表情を浮かべた。
そうして出来た一瞬の隙を内藤は逃さず、剣をドールの腹部に差し込み引き抜く。
すると今まで腕を飛ばされても血を流さなかったドールは初めて血を流し、呻き声を上げた。
「うぐ……がぁは……」
内臓を傷つけたのか、出血は多く血を吐き出すドールだがルークは起き上がりマガジンを差し込むと銃口をドールの頭に押し付ける。
「へぇ、全部が機械って訳じゃねぇのか……そりゃよかった、これで楽に殺せるんだからな」
引き金に指を掛け、ドールにとどめを刺そうとしたその瞬間一発の銃弾が狙撃銃の銃口に当たりドールの頭のすぐ横を撃ちぬく。
「何者だ!」
ルークはすぐさま銃弾を撃った人間を探すが、その人物は二人にとって見覚えのある人間だった。
「一輝⁉」
二人は呆気にとられ、走りながら近づいてくる見慣れた緑髪に驚いているとルークは銃を奪われ銃床で頭を殴られ地面に倒れる。
「おい! 何やって……」
内藤は剣を抜き襲い掛かるが、緑髪は狙撃銃を捨て剣を抜くと内藤の一撃を弾き回し蹴りで吹き飛ばす。
「おっふ……」
傷口を蹴られた内藤は膝をつき、片手で剣先を緑髪の方に向け口を開く。
「お前……一輝じゃねぇな、それに見慣れねぇスーツ型……顔はそっくりなのが不気味だが、完全に別人だな」
「……悪いが俺に人間の友など居ないさ」
緑髪はゆっくりと内藤に近づき、剣を仕舞う。
そして大口径のハンドガンを握るとすぐさま後ろを振り返り、地面を這いながら狙撃銃を構えていたルークの肩を撃ちぬく。
「ルーク!」
ルークを撃たれ叫ぶ内藤も胸部を撃たれ、二人は意識を失いその場で倒れた。
「ただでさえ貴重な戦力をこんな所で消費する訳には行かんのでな、キャストドール……悪いがまだ生きてもらうぞ」
一本の注射器を取り出し、ドールの首元に注射すると緑髪はドールを抱えどこかへと去っていく。




