第十四話 Liar Street turned into scorched earth -焦土と化した街-
一輝たち三人はE2ゲートに辿り着き、通信回線を開くと中にいるウルフ部隊と連絡が繋がった。
「おい! 無事か?」
〈ええなんとか、そっちは?〉
「ドールとの戦闘があったが内藤とルークが応戦している」
〈なるほど、でここから出る方法は?〉
「待ってろ」
ウィリーは近くのレバーを引くと、シャッターは自動で開き中から二名のウルフ部隊隊員が現れる。
二人ともどこか疲れた様子ながらも外傷はなく、無事であった。
「助かりました、このままここに放置されるかと……」
「安心しろ、お前らを見捨てたりなどしない」
「隊長……」
悲観的観測が脳内を過ったのか、ウルフ部隊の二人は首を縦に振り頷く。
「所で、基地内部のデータに色々ハックを掛けてたらこの奥にまだシャッターの降りた場所があって……」
「ほう? そこには何が?」
「分かりません」
送られた地図データの中には何か所かシャッターが閉まっている表所があるが、一輝達が居る場所とその奥だけオフライン表記になっていた。
その事に気づいたウィリーは首を傾げると、遠くからコツコツと足音が聞こえ振り返り向こう側から剣を抜き歩く人影を見つけ一輝をアルバの肩を叩く。
「…………一輝、アルバ……奥に行って現状を確認してくれ、我々はあの人影と交渉しなくてはな」
「とか言って剣を抜く辺り、ウィリーさん交渉する気無いですよね……」
「いや、言葉位は交わすさ」
二人を奥に向かわせ、ウィリーとウルフ部隊の隊員は人影に立ち向かう。
「貴様、その方向から歩いてくるという事は……隊員二人、無事では無いな?」
人影に声を掛けると、人影は走り出しウィリーに向かった。
「来るぞ!」
ウルフ部隊は臨戦態勢を取り、ウィリーを筆頭に真っ直ぐ突っ込んだ。
一方その頃、奥に向かった一輝達は先ほどと同じく壁に着いたレバーを動かすとシャッターが動き出し中の様子を伺う。
するとそこにはボロボロの衣服を着た人が沢山そこに居り、うめき声に似たような声にならない声を上げていた。
「な、なんだこれ? 奴隷?」
「いや、もしかしたらここに住んでた人達じゃ無いか?」
アルバは一輝の言葉に頷き、中にいる人影に声を掛ける。
「あの、貴方達は?」
「お、俺たちはライアー街の住人だ! お前ら国軍か? た、助けてくれ! あいつ等ここもろとも吹っ飛ばすつもりなんだ!」
「は?」
突如施設全体が揺れ、真っ赤な警告灯が輝き始めると無機質なアナウンスが流れ始めた。
【エマージェンシー……エマージェンシー……施設の自爆リマインダーがオンになりました、十分後に施設は消滅します……作業員、施設職員、戦闘職員は脱出路に移動してください……繰り返します……】
突然の状況に二人は足を止めたが、中にいた人間は我先にと逃げ出し二人はその足音で我に返る。
置いて行かれた二人はすぐさま通信を開きウィリーに声を掛けた。
「ウ、ウィリーさん! 自爆するって今!」
〈…………〉
「ウィリーさん? ウィリーさん!」
通信機の向こう側からはノイズだけが聞こえ、不安に駆られた一輝はアルバの手を引く。
「まずいって、もしウィリーさんがやられてたら次は俺らだぞ!」
「わ、分かってるって……でも僕らで戦って勝てるのか?」
「やるしか無いんだって、俺と……お前で」
「う……クソッ、こんなに死線ギリギリをいっつも綱渡りして……軍は楽じゃ無いな」
二人は踵を返し、元来た道を戻る。
だがウィリーが居た所には血の跡が残っており、二人は不安に駆られながらも辺りを見渡すとウルフ部隊の一人が座り込んでいた。
「大丈夫ですか!」
「あ……ああ……血は止めた……が、貧血がひどくてな……」
「ウィリーさんは!」
「あの人は……俺らを逃がすために……場所を移した……」
「どこに?」
「ああ……うう……」
アルバが隊員を揺らすと、貧血が祟ったのかうわ言を上げ横になってしまう。
「あ……少し乱暴し過ぎたか、一輝……どうする?」
「さっき地図を見た感じむしろ屋外に行ったんじゃないのか? 閉まってるシャッターが多い以上ルートは多くないし」
「…………じゃあ俺はこの人を運ぶ、一輝はウィリーさんを探しに行ってくれないか?」
「分かった! アルバも気を付けろよ! すぐにでも逃げるんだ!」
「分かってるさ、お前も気を付けろよ!」
二人は分かれ、一輝は急いで外に出る。
すると遠くから銃声と剣がかち合う音が聞こえ、音のする方に急いで走り出すと床に大の字に倒れるウルフ部隊隊員と剣を抜きそこに立ち尽くすウィリーが居た。
しかしウィリーはかなり負傷しており、立って居るのが限界だったのか膝を突き倒れると一輝は駆け寄る。
「ウィリーさん!」
「あ、ああ……かなり苦戦を強いられた……今まで会った誰よりも強かった……」
「大丈夫ですか! あの、自爆装置が……」
「知っている……行かねばな、この街の端まで広がっている地下施設が吹っ飛ぶんだ……まもなくこの街自体が吹き飛ぶだろう……」
「そ、そんなに範囲広いんですか⁉」
「当り前だろう」
よろよろと立ち上がり、ウィリーは寝転んでいるウルフ部隊隊員を叩き起こすと同じくよろよろと動き出し、立ち上がる。
すると地面が揺れ、少しずつ崩壊が始まっている事を理解し急いで通信を開く。
「小夜さん! 小夜さん! 聞こえますか?」
〈はい! 聞こえます! ジャミングが解けたみたいですね!〉
「あ、本当だ……じゃなくて、まもなくライヤー街が吹っ飛ぶんですよ! 迎えが欲しいんですが……」
〈先程輸送トラックを派遣しました〉
「陸路なんですか?」
〈対空砲は無力化されてるのですが、先程幾つかのヘリがライヤー街から飛び立ちまして……空戦になると到着が遅れそうです〉
「さっきの奴が逃げたのかもな……アルバはどうした?」
「今、下に居たウルフ部隊を連れて上がってくるはずです」
「良かった……」
「おーい! 大丈夫か!」
「アルバ! ……と、ルークさん⁉」
声のした方を見ると、アルバと内藤を抱えるルークが居た。
内藤は胸から血を流しており、意識が無いのか俯いたままで肩から血を流しているルークに抱えられている。
「さっき通信が入った、迎えが近くに来てるらしい!」
「とにかくそれに乗り込むぞ!」
「小夜さんから位置の指定が! すぐ近くです!」
送られた地図データの一か所にマーキングがされ、全員そこに向かって走り出す。
しかしLOWの兵士は残っていないものの、対空砲を守っていた犬が一輝達を見るなり一斉に走り出し追いかける。
「走れ! 足を止めるな!」
ウィリーの声に従い全員目的地まで後ろを見る事無く走り、近くに止めてあった輸送トラックの荷台に乗り込むとすぐさま運転手はアクセルを踏み込む。
だが犬は諦める事無くトラックを追い掛け始め、数人分のアーマーによる重量でトラックは振り切る事が出来なかった。
「銃を持ってる奴は弾をばら撒け! 奴のレーザーでトラックを壊される訳にはいかない!」
ウルフ部隊隊員とアルバは手持ちの銃で追い掛ける犬を迎撃をし始める。
それでも数匹が倒れるだけで、決定打には至らず連戦のせいか弾は底が見えていた。
「くそ……何とかしないと……」
焦るウィリーは剣を抜き今まさに一人で立ち向かおうとし始める。
すると一輝は何かを思い出し、運転手に声を掛けた。
「運転手さん! そこ右に曲がって! 真正面にある建物を突っ切って!」
「え?」
「それなら纏めてあいつ等を足止めできるかも!」
「わ、分かった!」
トラックはすぐに右折し、車体は大きく揺れ怪我人がうめき声を上げる。
だが一輝の真剣な表情を見た全員は、その事で不平不満は漏らさず目の前に迫る建物とぶつかる際の衝撃に備えた。
「アルバ! 銃借りるぞ!」
「……決めろよ?」
「やってみるさ!」
アルバからサブマシンガンを受け取り、トラックが木製の民家を突っ切ると一輝は床に照準を合わせ引き金を引く。
するとライヤー街に来た時にアルバが見つけた自爆装置を撃ち抜いたのか、民家は木っ端みじんに爆発し、後ろを追い掛けていた犬も巻き込まれたのか煙の向こうから走り抜けて来る事はなかった。
「ビンゴ! 覚えててよかったよ!」
「あんなものが民家に……」
「うわっ、あれに関しては僕完全に忘れてた……」
爆発で上がった土煙が遠ざかるのを眺めながら、一輝は親指を立てる。
「……何はともあれ撒いたか、新兵と聞いていたのだが……随分機転の利く連中だ」
「アハハ……本当に、俺もアルバも必死だったというか……あ、そういえば地下でここの住人らしき人達を見つけて……全員どこか行っちゃったんですけど、大丈夫ですかね?」
「ここの連中はゴキブリよりしぶとい、どうせ奴らしか知らない通路で避難をしているだろう」
「本当に、ライヤー街って秘密だらけの町なんですね……」
ようやく一難去り、アルバはため息を吐きながら苦笑いを浮かべた。
丘を登り、ライアー街から離れながら一輝達は一連の報告を小夜に伝える。
「……という感じです」
〈なるほど……被害状況、ミッション状況共に理解しました……ドールの破壊は叶いませんでしたが、中継拠点は無事無力化できたので良しとしましょう〉
「ああ、そうですね……」
ドール破壊が叶わなかった事に一輝は苦笑いを浮かべると、遠くで大きな爆発音とともに風が吹く。
「……いっその事あれにドールとか巻き込まれてると嬉しいんですけどね……」
「……だな」
数時間に及び血と汗を流した町は土煙と化し、風邪と共に散った事に一輝は再び苦笑いを浮かべた。
前回後書き書き忘れました。
何なら上げ忘れてました。
後、喉壊しました。




