教師
最初にルーカスが調べた時に、ミアは侍女が産んだ妾の子という話がすぐに表に出た。
が、しかし、ミランダの日記から再度深く調べると、平民の親戚からの養女となっていた。
本当にそれは事実なのだろうか?
調べて行くにつれ、少しづつ事実を誤魔化すために上手くでっち上げられているような…。
そもそも、これは誰がもたらした情報なのか?
グレイ男爵の通っている教会の関係者は誰なのか?
疑問が山積みだ。
「あ…そういえば、担任に今度研究室に来ないかと誘われたよ」
椅子をガタンっ!と倒して、ルーカスが立ち上がった。
えぇっ?何?物凄い形相になっているよ…。
「勿論、行くつもりないから曖昧に返事しといたけど。何かあるのかな?」
ルーカスを探るように見る。
「……………。」
目を逸らしたな。ならば…。
「まあ、一度位は行ってもいいかとは思うけど。特級魔術師には興味あるから。」
そう微笑みながらルーカスを見詰めると、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「…っ!ニコル・フェルゼン…先生には、くれぐれもお気をつけ下さい!彼の所に行く時は、必ず私も行きます!絶対に一人で行っては行けません!!」
(……何故?)
「グレイ男爵の方はどう?」
「今の所、尻尾は掴めていません。…ただ、足繁く教会へ通っています。周りの人間の情報では、そんな信仰心があるとは到底思えませんが。」
「怪しいね。監視は緩めないでおこう。」
「それから、カミラも調べておいてくれる?」
何か、引っかかる。直感だけど…。
………………………………………………
翌朝、早くに目が覚めた。
ミハイルに言った手前、何となしに散歩へ出た。
確かに早朝の空気は気持ちがいい…。
学園と、学園の林や湖には結界が張られている。関係者以外、誰も入れないので一人でウロウロしても問題ない。
湖へやって来た。
凪いだ水面がキラキラしていて美しい…。
「…綺麗だなぁ…」
思わず口にしてしまう。
「君の方が、綺麗だよ。」
背後から歯の浮くような台詞と、聞き覚えのある魅力的なバリトンボイス…。
「…フェルゼン先生…。おはようございます。」
振り向きざまに挨拶をする。
「他人行儀だなぁ。ニコルと呼んでくれ、シャルル君。」
美青年の流し目………。
(は?………思いっきり他人ですが!!しかも、男に向かって綺麗って…。えっ?そっちの人?)
「では、ニコル先生。こんな朝早くにどうされたのですか?」警戒を隠しつつ、返事する。
良く出来ました、と満面の笑み。
「ここ最近、湖の精霊達が歓喜に満ちていて力を増しているからね。こうして時々様子を見に来ているのだよ。」
「精霊が…喜んでいると?」
小首を傾げて疑問を投げかける。
それはね…と、急に近付いたニコルに両肩を鷲掴みにされ、視線が合った!
その途端!!
ぶわっと、全身にニコルの魔力が流れ込んできた!
「…っくう!」
…ダメだ、弾け返せない!魔力が溢れて止まらないっ!
湖に波が立つ。
七色の魔力が全身に広がり…女神の姿になった。
(くそっ!ニコルは…敵か!?)




