それが理由
ニコルは私の肩を掴んだまま、満足そうに顔を綻ばせる。
そして、端正な顔を耳もとに近付け…ゾクっ!
「女神とお会いでき、恐悦至極です。」
と、驚愕の一言を放った。
手を払い飛び退く!
「…………何故、知っているっ!!」
頭の中で、色々な仮説がグルグル回る。
(ルーカスが言っていた事って……!?)
「ニコル・フェルゼン!シャルル様から離れろーっ!」
ニコルに向かってもの凄い勢いで、ルーカスが剣を振り翳し飛んで来た!
驚きもせずに、ニコルは魔力障壁を出してガードし、応戦する。
「嫌だなぁ、ルーカス。危ないじゃないか。」
嬉しそうに口角を上げて、剣を交える。
怒りまくっているルーカスに対して、ニコルは優雅に微笑み
「だって、女神様に会いたかったんだもん。」
てへっ。と、可愛い仕草の28歳独身男…。
ぜぇぜぇと息が上がるほど打ち合った2人…。
(……理解不能。なんなのこれ?)
くるりとルーカスがこっちを見て膝をつく。
「彼はニコル・フェルゼン、特級魔術師であり、王直轄の影の存在です。そして教師として学園に入り、シャルル様の護衛と教会関係者の監視をしています。」
「私は女神様の為なら、この命いつでも捨てますよ。…愛しています。」
紹介に満足したニコルは、とても良い声で軽る〜くとても重い言葉をさらりと言った。そして、私の手を握り腰に手を回す。
(ぇええっ!?なんなのこの人!)
ルーカスは眉根を寄せて、眉間を指でトントンしながら…無言で威圧してくる。
やー、これ相当怒っているねぇ。
「ニコルっ、こんな事二度とするなっ!そして、シャルル様に愛を囁くな!体にも触れるなっ!」
「えー?」と、悪びれもせず文句を言う…。
なんだかんだ仲良しなのか?…年の離れた友人?
どうやら彼は女神の写絵に心を奪われ、勝手に自分の一生を捧げる誓いをしたらしい…。だから独身…。
(迷惑なっ!)
もっと女神との時間を堪能したいと言う、ニコルを無視してもとの姿に戻る。
誰かが来たら大変だ。
人間性はさて置き、一瞬で他人に魔力を流し、魔力を解放させた力は凄い。やはり特級魔術師だ。
あんな風に簡単に他人に魔力を通じさせるのは…驚異だ。
味方で良かった、本当に…。
実は、あの嫌な視線からも守ってくれていたらしい…。
ニコルは、あの視線と教会について教えたい事があるので研究室へ足を運ぶようにと、教師らしく去っていった。
―それにしても…疲れた…。―
(これが、一人で会ってはいけない理由だったのね。)
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