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第2章:虚無のバグ

すべてが……完全に静まり返った。

だが、それは通常の死の後に訪れるような、安らかな静寂ではなかった。

これは、全く別の何かだった。

闇。

純粋で、絶対的な闇。

人間が目を閉じたときに見るような闇ではない。無限に深く、恐ろしく、そして終わりのないものだった。それは存在の絶対的な終わり。「何か」が存在すること自体が、ここの法則に反する場所。

この場所はこう呼ばれていた――

『絶対虚無』と。

ここには時間の概念が存在しない。1秒も1000年も、全く同じだった。

方向も存在しない。上も下も。前も後ろも。

空気すら存在しない。ただ、濃密で……息が詰まるような重圧だけがあった。どんな平凡な魂でも、一瞬(マイクロ秒)で灰に変えてしまうほどの、押し潰すような重み。

それなのに――

この終わりのない絶対的な「無」の真っ只中で……突然……何かが起きた。

一つの過ち。

一つの「バグ(Glitch)」。

(……痛い)

その言葉は物理的な喉から発せられたものではなかった。そもそも喉など存在しなかったのだから。それは単なる、突発的なパニックの爆発。新たな認識。虚無の只中で突然目覚めた、「意識」だった。

何千もの黒い山々が、この形のない新しい精神を同時に押し潰そうとしているかのようだった。虚無は……この未知のバグ(異変)を消し去ろうとしていた。再び「無」に還そうとしていた。

(ああっ……な、なんだ……これは……?)

暗闇の中に声が響いた。物理的な音ではない。精神的なもの。その新しい意識の中に直接語りかけてきた。

(俺は……誰だ……?)

(俺は……壊れかけているのか……? それとも……組み立てられているのか……?)

その意識は前世を完全に忘れていた。あの狭い路地。冷たい雨。犬たち。すべてが……永遠に消し去られていた。

今の彼は、まるで生まれたばかりの赤ん坊のようだった。彼が理解できるのは二つのことだけ。

「苦痛」と「恐怖」。

もしそこに誰かがいたら……この果てしない闇を見通せる者がいたなら……真に異様な光景を目撃しただろう。

その闇の真ん中に……巨大で輝く『黄金の球体オーブ』が浮かんでいたのだ。その光はあまりにも純粋で温かく……周囲の果てしない闇を強制的に押し返していた。

そして、その黄金のオーブにしっかりとまとわりついている……漆黒の層があった。

それはただのゼリーやスライムではない。『純粋な闇のエネルギー体』だった。「無」から作られたエネルギー。それが、必死に黄金のオーブにしがみついていた。

その闇のエネルギーこそが……新たな意識そのものだった。

虚無の冷たく致命的な重圧が、その層を引き裂こうとしていた。純粋な苦痛から逃れるため、それは黄金のオーブにさらに強くしがみつこうとした。

手も、足も、目もない。それはただ、本能的に自分を救おうとする形のない存在に過ぎなかった。

(あああ……あああっ……!)

(痛い……すごく痛い……!)

(わからない……助けて……!)

黒いエネルギーはオーブの上で身悶えし、恐怖で震えていた。

そして……

数世紀にも及ぶ永遠の静寂を打ち砕き……黄金のオーブの内部から恐ろしいほどの振動が噴出した。

――ジジジッ!!

虚無全体が、その光によって震えた。

【システム警告:魂の転送ソウル・トランスファー成功】

【エラー:ホストの形態が不安定です】

【魂の密度が臨界値に達しました】

声が響いた。

それは人間の声ではなかった。母親のような優しい声でもない。その声は――異常なほど冷静だった。計算高く、至高の知性に満ちていた。まるで古代のAIシステムが話しているかのように。

『通知』

『物理的肉体の生成プロセスが必要です』

その声は、形のない精神の中に直接響き渡った。

『パニックに陥っている時間はありません、ホスト。現在の魂の形態では、絶対虚無の重圧に耐えられません。あなたには「器」が必要です。物理的な肉体が』

(あ、あんたは……誰だ……?)

(ここは……燃えるように痛い……!) 暗黒のエネルギーは完全なパニック状態で尋ねた。

『回答します。私はノヴァです』

(ノヴァ……)

(じゃあ……ホストって……俺は誰なんだ……?) 生まれたばかりの魂は、まるで迷子になった子供のように尋ねた。

その瞬間、黄金のオーブの光がわずかに和らいだように見えた。そして初めて、その冷たいAIの声に、奇妙な深みと感情が混じった。

『あなたは私のパートナーです』

『私の友達です』

『最初の……そしておそらく、最後の』

(友達……?)

(友達って……なんだ……?)

(それに……俺の名前は……? なんで俺はここにいるんだ……?)

形のない精神の中で、質問の嵐が吹き荒れた。

ノヴァの声に、かすかな笑い声のような響きが混じった。

『それが、あなたの望みだからです。友達とは、互いに助け合う者のこと。そばに寄り添い、信じ合い……そして共に働く者のことです』

ノヴァは一秒だけ沈黙した。無限に複雑な計算を処理しているかのように。

『そしてあなたがここにいるのは……私たちに「目的」があるからです』

『あなたの名前については……』

『そうですね……少し考える必要があります』

短い沈黙。そしてノヴァは言った。

『見つけました。名前を』

『今日から……あなたの名前は「クオン」です』

(クオン……?)

暗黒のエネルギーの中にあった恐怖が、いくらか和らいだ。

(いい名前だ……わかったよ、ノヴァ……俺は、あんたの友達だ……)

(でも、なんでここでは何も見えないんだ……? なんでこんなに痛いんだ……? 俺の中には一つのことしか感じられない……この……痛み……これはなんなんだ……?)

『耐えてください』ノヴァの声は、厳格なAIモードに戻った。『時が来れば、すべてを理解するでしょう。しかし痛み……痛みとは単に、生きていることの一側面に過ぎません。今はそれだけを理解しておいてください』

ノヴァの光が突然、危険なほどの強さで燃え上がった。

『そして今……あなたは生まれようとしています』

【警告:極度の苦痛が予想されます】

【ホストはこれに耐えることを強く推奨します】

その瞬間……黄金のオーブの光が千倍に膨れ上がった。

虚無の中の空間が、異様な形で歪み始めた。現実のベールの裏に隠された扉が、無理やりこじ開けられるかのように。

――ゴォォォォォォォッ!!

次のフェーズへようこそ!絶対的な静寂はついに破られました。システム『ノヴァ』の登場により、クオンの新たな運命の最初のページが開かれました。皆様もすでにこの世界の一部です。この未知の宇宙の謎を、どうか心ゆくまでお楽しみください。

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