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私の日々

去り行く姉の背は大きく見え、私は逆らう事は出来ないと思い、言われた通りの事をしなければ…と体を動かし始めた。


だけど、宴会を開く父を放っておく事も出来ず買いに行きたくても行けない状況が続き…。

そうしている内に、姉の友人達が家を訪れた。


「良く来たわね、さぁ、遠慮なく入って!」


とても明るい声で出迎える姉。

来る友人は皆とても煌びやかな服を纏い、品が良さそうな顔をしている。

でも相手は全員男性だ。


「先に私の部屋に行っててもらえる?」


姉は友人達を先に進ませると、私へと近づいてきた。


「ねぇ」

「……はい」

「分かってるわよね?」

「……ごめんなさい」


言われた事を何一つ出来ていない私に姉は怒りを露わにし、詰め寄ると厨房にある包丁を手に持ちだした。


「お、お姉様……」


包丁の刃先がキラリと光り、私の顔に当たる。


「どうしてそんなドジなの?言われた事も出来ないなんて。そっかぁ、私に反抗してるんだねぇ」

「そんな事……」

「じゃあ何故しないの?ん?」


姉は包丁を私のお腹付近に近づけ脅してくる。


「やめて……」

「そういう事を聞いてるんじゃないの?何故出来ないのかって私は聞いてるのよ!?」


ドンッ


姉は私の体を避け、厨房の棚に包丁を突き刺した。

手を離しても落ちてこない包丁。

かなり深く刺さったみたいだ。

そんな事はさておき姉は怯える私の耳元に近づくと『次、ちゃんとしないと本当に…』と告げ、代わりにお茶菓子は自分で作り、それに合う飲み物を持ってくるようにと念を押したあと友人達の元へと戻っていった。


恐怖から解放された私はその場にへたり込んでしまった。

物心ついた時から姉の私への物言いは始まり、外面は良いが内に隠すその気持ちはドロドロとした物でちょうど良い吐口が私だった。


父は姉の行動、言動を知っている感じもあるが放置している。

母がいないこの家では父が頼りだが、望みは薄そうだ…。

泣きたくなる気持ちを必死に抑え、私は『言われた通り』姉の友人達を振る舞うため料理をし始めた。




ーーーーーー





「し、失礼します」


姉の部屋はこの家で父に次ぎ、日当たりの良い南に面した場所だ。

夕方になっても差し込む日の光がこの部屋を照らしてくる。


「待ってたわ、リナ」


私は早く持っていかなければと思い、不恰好だが姉が好きなチョコを練り込んだクッキーとカフェオレを手に部屋に入った。


「ごめんなさいね、こんなものしかなくて」


姉は持ち込んだ私の手料理を見ながら友人達に詫びているが、誰一人、意を唱える者はいなかった。

給仕をする私は一人一人に配るが、姉の機嫌を害してないかという気持ちばかり先行してしまい手元は少し震えていた。


「大丈夫?」


友人の一人が私に声を掛けてくれた。


「……はい、大丈夫です。ありがとうございます」

「良いのよー、声なんて。この子人見知りだから緊張しているの」


姉は素早くフォロー?を入れ友人を納得させようとしてくる。

でも本当の気持ちは邪魔だから早く出てけ、だと思う。

それを読み取り、私は配膳終わると逃げるように姉の部屋から出ていった。



中から漏れ聞こえる姉達の声、そして笑い声。

その一つ一つが私に刺さり今にも此処で泣いてしまいたいくらいにさせる。


(怖い…)


逃れられないこの生活、いや、姉からの恐怖。

そんな私の唯一の拠り所が本を読むことであった。

望めばなんでも買ってくれる父だったが、私は多くを望むことはなく本ばかりをねだった。

しかし、姉は本など興味はなく、服や装飾品。

外見を磨くことに注ぎ、父のコネを介して手に入れた品は私なんかより遥かに多い。


少しだけ生まれた私だけの時間。

厨房で隠れるように本を読む私は家の中で繰り広げる言葉を耳にしつつも目だけは本に集中していた。


「……ちょっと」


急な声に驚き、顔を上げた。

姉…ではない男性の声。

読んでいた本をすぐに閉じ、対応しようとした。


「何かご用ですか?」


声を掛けてきたのは父の相手をしていた要職の方だ。

少し白髪が混じった男性。

顔が赤くないところを見るにお酒はほとんど飲んでないのだろうか。


「そろそろ引き上げるが、いいか?」

「あ……すみません」


男性の後について大広間にいくとだいぶ出来上がった父とそれを介抱している男性達。


「おぉ、リナぁ、もっと酒を持ってこい」

「ロイドさん、もうこれ以上は」


顔を真っ赤にした父の前には何本も転がる瓶があり、そのどれも空だ。


「お父様、もう……」


私はすぐに厨房に掛け戻り、コップいっぱいに水を注ぎ戻った。


「これを」


父に差し出すとお酒だと思ったのか一気に飲み干す父。


「すみません、あとは私が」


周りの方々に頭を下げ、帰ってもらうようにお願いし、この会はお開きになった。




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