10.僕の妹《ブルーノ視点》
今日はブルーノ視点です。
どうも、こんにちは。ブルーノです。
今日は少し、妹の話しをしようと思う。
僕には妹が2人いるんだ。正確には今は1人しかいない。ところが僕には前世の記憶というものがあるものだから、そこも含めて2人だ。
前世の僕は弟3人と妹1人と仲良く、楽しく日々を過ごしたものさ。でも、そんな現実は唐突に終わってしまうと思い知らされる出来事があった。
その出来事からしばらくは、うちは文字通りのお通夜状態。機械的に毎日を過ごすことしか出来なくなっていた。でも、転機も唐突にやってきた。妹が事故死する前に助けた少女の両親が訪ねてきたんだ。
なんとも形容し難いんだけど、人間っぽくない2人でね。とにかくうちの茶の間と麦茶が似合わなかった。あとなんか眩しかった。逆光かな?
2人が娘から伝え聞いたという妹の話し。最期までらしくて、枯れたと思っていた涙が出てきたよ。妹は最期に「家族の幸せ」を願っていたらしい。そのことをどうしても伝えたかったのだと2人は言った。
それから皆変わったよ。その言葉でようやく向き合う勇気を持てたんだ。最初にしたことは荷物の整理だ。
流石にあの日頼んでいた新作ゲームをプレイすることは出来なかったけれど。
「なんだこれ?.......あいつのセンスやべーな。もう、居ねぇくせに笑かしにきやがった。」
弟が見つけたのは、それはそれは恥ずかしい名前の乙女ゲームだった。久々に家族揃って大声で笑った。また笑えたことが嬉しかった。
そこから、話しの流れで全員でプレイしたんだ。大の男たちが「アルフレッドはぜってーこういうのが好きだって!」「イル様には幸せになって貰いたいんだ。」「「ザックはいっぺんくたばれー。」」なんて言い合っているんだ。楽しくない訳がない。
ちなみにプレイ時の皆の口癖は「主人公またフラフラしやがって!ユーリアを見習え!」である。
時間を掛けて全てのルートの全てのエンドをやり終えたさ。隠しキャラも出せたしね。概ね満足。
それからはとても穏やかな人生を過ごした。結婚して、子どもが産まれて、育てて、定年退職して、妻に看取られて死んだ。妻のことは本当に愛していたし、愛されていたと思う。
でも死に際に思ったのは、やっぱり妹のことだった。お前は俺たちの幸せを願ってくれたけど、お前が居なきゃ本当の幸せには少し届かないんだ。結婚式に参加して欲しかったとか、子どもを抱いて欲しかったとか、お前が連れてきた男を殴りたかったとか。そんなこと。
そしたら、不思議なことに前の記憶を持ったまま第二の生が始まった。しかも聞き馴染んだ用語が出てくる、出てくる。もの心ついた頃には、ここはあのゲームの世界だと理解していた。同時に一人の人間として生きていることも分かった。
しばらくしたら、弟が産まれた。弟も同じだとすぐに分かった。
僕が8歳のとき妹が産まれた。これが二人目の妹ね。ユーリアと名付けられたのが決定的だった。あのゲームの悪役令嬢の名前なんだ。
ユーリアと婚約の話が出ていた、ザッケローニ君は攻略対象の一人だ。名前と面影からギリギリ判別出来た。将来的な立ち位置としてはチャラ男。この一言に尽きる。しかし、ゲームのユーリアとそんな接点はあっただろうかと疑問が残る。
本当は「転生したら妹が悪役令嬢だったので、旗を折って幸せにするのに忙しい」という小説一本書き上げたいくらいにユーリアの為に動くつもりだったのに、ゲームシナリオに自信が無くなってきた。
もちろん、レドとも擦り合わせは定期的に行う。もちろん、ここがたかがゲームとは思っていないよ。でも、対処出来るかもしれないならそれに越したことはないからね。
ユーリアが6歳のとき、僕は14歳でこれから約4年間寮付きの学校に通わなければならなかった。その間に、2人の婚約破棄や壮絶なダイエットなど、僕の知らないイベント?が起こっていたらしい。
久々に帰った我が家で出迎えてくれたユーリア。本当に随分と頑張ったみたいで、とても綺麗になっていた。その時のドヤ顔が前世の妹にそっくりだったから泣きそうになった。誤魔化したくて、
「こんにちは、可憐なご令嬢。ユーリアのお友達かな?」
と声を掛けた。僕が妹を分からないはずないのにね。
そうそう、この前の授業で話したアレクサンドラ家のことも関係あるんだ。
ゲームのユーリアはアルフレッド王子のルートで彼の婚約者なんだ。でも伯爵家という理由で反発も多かった。どちらかと言うと陰口を叩かれていたのに、主人公を虐めたとしてお決まりのルート一直線さ。しかも魔力が強く、魔王から直々のスカウト。人生に絶望したユーリアはそこに縋るしかないよね。
もしゲームには描かれていなくとも、僕という立場の人間がいたならどうして味方にならないのか疑問が残った。
ちなみに、ユーリアはどのルートでも何かしらの理由で魔王からスカウトされている。どれだけのスペックを秘めているのやら。実際ゲームでも、中ボス扱いで中々に手強かった。
その魔王一派に加わる未来を回避するためにこの知識が役にたつなら、出し惜しみするつもりは無い。けれど同時に、ゲームに縛られない人生を送って貰いたいとも考えている。
ユーリアが幸せなら、ゲームでは名も無かったキャラと結婚してくれたっていいと本気で思っている。だって、ここは揺るぎなく現実だからね。モブなんてものは存在しないんだ。先程の意見とは矛盾するけど、正当な理由があるなら魔王の元に行ってしまっても良いとも思っている。
僕がここまでする理由? それは、シスコンと言われても否定出来ないんだけど、後悔という面も少なからずある。前世での妹の気苦労は計り知れない。幼くして両親を亡くし、俺たちの存在のせいで友だちもなくし、誰か良い人が妹を見つけてくれる前に命までなくしてしまった。だから、この世界での妹には今度こそ幸せになってほしいのさ。
まぁ、今日はここら辺で話しは終わりにしようかな。今日はユーリアが久々に外出しているんだ。土産話が楽しみじゃないか。
おっと、噂をすれば帰ってきたようだ。暇だし出迎えよう。
「ただいま帰りましたわ、ブルーノ兄様。」
そう微笑む妹の隣には、攻略対象の一人と思しき人物が所在無さげに立っていた。
....何故だ、妹よ。
ここまでお読み下さってありがとうございます。
ブルーノの一人称は「僕」で、蒼は「俺」です。
気をつけてはいるのですが、読みにくかったり違和感があったりしたらすみません。




