終わりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
繰り返しますが、私はAIを否定する立場ではありません。
道具は道具です。
車は人が楽に遠くへ行ける便利な乗り物であると同時に、簡単に人を殺められる凶器にもなります。
全ては使う人間次第で、どうとでも化けるものなのです。
ノーベルが生み出したダイナマイトは、山を穿つための技術だった。
だが後に、人を穿つ道具にもなった。
効率を向上させる事も、供給が安定させる事も、現代においては極めて自然な流れであり、多くの人が求める姿です。
つまり、ランキング上位の半分がAI作品であるという現象は、言ってしまえば異常ではないのです。
むしろ、合理の結果とも言えます。
だからこそ、問いが残ります。
私達読者は何を評価しているのか、と。
更新の速さか。
それとも類似品の量か。
それとも、物語の内容そのものか。
便利な道具を使うことは問題ではありません。
ですが、道具に最適化された市場の中で、
何が削ぎ落とされていくのかを考えることは、無駄ではないはずです。
畑は今日も青々としています。
高速道路は今日も混雑し、工場は今日も忙しく稼働しています。
そしてどこかで、小さな工房の灯りもまた、揺れています。
その灯りが消えるかどうかは、市場だけでなく、読む側の選択にも委ねられているのかもしれません。
――さて。
あなたは、どの棚から作品を手に取りますか?
ここでは後書きの後書きみたいなものを記していきます。
お時間があり、気が向いたのなら、もう少しだけお付き合い下さい。
ここからは少々毒を含みます。
なろうランキングの上位をAI作品が占め始めたと聞いた時、正直な感想は
「ああ、ついにこちらにも来たか」
それだけでした。
カクヨムで似た光景を見た時、あれほど騒がれたのです。
類似作品の同時大量投下。
今回の件もタイトルも導入も似通い、
過労死した主人公が、最終的に穏やかな日常へ辿り着く。
プロセスは微妙に違う。
だが辿り着く言葉は、ほとんど同じ。
まるで、型に流し込まれた量産品のように。
真面目に、すべて自分の頭で悩み、削り、推敲し、
一行をひねり出している作家からすれば――
それは“ズル”に見えるだろう。
夜を削り、睡眠を削り、
推敲に推敲を重ねた末に得られるものが、
更新頻度と物量で押し流される。
悔しくないはずがない。
だが、ここで冷たい事実を一つ。
ランキングに載るということは、
読者がクリックしているということだ。
AIが不正アクセスをしてランキングを占めているのではない。
読者が選んだ結果、そうなっている。
つまり――
今の市場は、ハンコ押しのような個性のない物語を求めている。という事だ。
変化よりもテンプレ。
挑戦よりも安定。
驚きよりも安心。
これは創作者側だけの問題ではない。
読者もまた、その景色を選んでいる。
耳障りの良い言葉で包むこともできるだろう。
「読みやすい」
「ストレスがない」
「供給が安定している」
だが裏返せば
難しく考えなくて良い
予測を裏切られない
適当に時間つぶしに消費しやすい
ということでもある。
市場は正直だ。
需要がなければ、いくらAIが量産しようと棚には残らない。
残っているということは、回っているということだ。
それが現実。
ならば、怒る相手はAIではない。
市場だ。
そして――市場とは、私達全員のことだ。
毒はここまで。
あとは各自、胸に手を当てて考えればいい。
また別の作品でお会いしましょう。
蛇蝎




