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背神のミルローズ  作者: たみえ
|破《ほうかい》
22/33

最後の風物詩


『――みんなー! げんきー!?』

「「「「うぇーい!」」」」

『今日は何する日~? せーのっ!』

「「「「カツアゲ~!」」」」


 ……アホらし。なんだぁ、こりゃ。

 どこかで見たようなアホな光景だぜ。


『場も温まったところでそれじゃあそろそろ皆がお楽しみのやつ、いっくよ~!』

「「「「こいこい、ほっぷすてっぷじゃんぴんぐ~!」」」」

『それ好きねー! あはは~、()()――そぉーれっと!』


 きゃらきゃらと()()()()魔女どもが騒がしく犇めき合う中、神の声に呼応して空中に神器による『黒い玉』が突如出現し膨らんだ。

 ……神器で遊ぶとか、アホの極みかよ。今までで一番クソくだらねェぜ。


「――アホどもが。正気かよ」

「ある意味、この場は正気の酔っ払いが集まるただの宴会場ですから」

「朝っぱらつーか、日付変更から延々ぎゃあぎゃあ騒いで、クソ迷惑なアホどもだぜ……」

「そんな文句言ってても結局、お姉ちゃんに誘われてノコノコ参加したんですね」

「うっせェ、無視するほうがクソ面倒だと思っただけだ!」

「へー……ふーん……」


 そうこうしているうちに、神器による黒い玉の膨らみがそこそこの大きさに達し、ぼとりと魔女を吐き出した。

 そして魔女を吐き出した黒い玉は己の目的を終えたからか、そのままあっさり縮んで跡形もなく消えてしまう。


『――おおっ! 開始早々、すっごい大物が釣れたね! わたしもびっくり!』

「……うぶぅ、タンマ。酔った。普通に酔ったネ。タンマあるヨ」

『待ちませーん! そぉ~れっ、みんな掛かれ~!』


 本気で吐きそうな蒼褪めた顔で蹲る魔女を気にせず、手をわきわきとかなり怪し気に動かしながら他の魔女どもが鼠一匹も逃さないような徹底した囲い込みを行う。

 そして神の合図とともに、一斉にギラギラした目で蒼褪める魔女へと容赦なく飛び掛かっていった。


「ぎゃあああああああああ!? 肝入り骨董美人コレクション返すネ! いくらしたと思ってるあるヨ!?」

『スイセンちゃん、良いお年を~』

「うぎゃああああああああ!? 今の誰ネ!? 大事に隠してた美人アド辞典を――』

『はい、次~! そぉーれっと、』


 神の音頭でまた黒い玉が出現し、ぎゃあぎゃあ騒いでた魔女を有無を言わさず呑み込み、そしてそのまま別の何かをついでに吐き出してから再び消えた。

 ……アホらし。なんだぁ、こりゃ。


『ええっ!? まさかまさかの――』

「――む。拙者が次の標的でござるか……うむ。遠慮せず掛かってくるが良いでござる。全て返り討ちとする故に」

『おおっ、勇ましい! さすが、ぼうたんくんっ! それそれ掛かれ者ども~!』

「接近戦で拙者に勝とうなどとは、無謀極まりないでござる故に――」


 ぼうたんに飛び掛かった魔女ども尽くが当然あしらわれて儚く舞い散っていく。……アホくさ。


『あ、残念。収穫無しで、そろそろお時間でーす! 次行くよー、次々~!』

「む……もう終わりでござるか」

『それじゃあね! ぼうたんくんも良いお年を~』

「うむ。今年は――」

『はい、そぉーれっと!』


 ぼうたんが何か言いかけてたのを全く意に介さず、神が容赦なく黒い玉に呑み込ませてから次を吐き出させた。


「――あっつーい。てあれ? もしかしなくともコレ、来ちゃったのかー。あはは! ――じゃあ賄賂でご勘弁!」

『おおっ、今年一番の賄賂とな! なんて運がいいのだユキノシタちゃん! でも一応、審議入りまーす!』


 などと審議とやらを宣言した神が、ユキノシタとこそこそやり取り交渉を開始した。

 そして近くに居た魔女に何かを受け取らせてからとてもイイ笑顔で頷き、魔女を黒い玉に呑み込ませて帰らせた。

 ……なんだ今の。


『それでは皆様、次々いっくよ~!』

「「「「うぇーい!」」」」


 その後も次々と見知った魔女、見知らぬ魔女どもが召喚されては、ひと悶着後に帰されての繰り返しであった。

 あまりにくだらない遊びにきゃっきゃと全力で騒ぐ神と魔女らを眺めて思う。


「アホしかいねぇーぜ……」

「そういう風物詩ですので――魔女の奉迎とは」


 魔女の奉迎。かしこまった言い方をしているが、実態は魔女どものくだらないお遊びの一環であった。


「特に今年で()()ですから。より感慨深いのでしょうね」

「……まだ決まってねーだろ」

「いえ。それこそが彼女らのケジメであり、決意となりますので」

「ハッ、――そうかよ」


 ……クソくだらねぇ。下手な願掛けかよ。


「はんっ、あたいらの出番かい――ぶっぱなせ!」

「「あいあいさーび――」」

『ここは火器げんきーん!! はい、全没収!』

「「――びえぇーん!!!!」」


 クソうるせぇな、クソガキどもがよ……。


「この程度で泣き喚くんじゃないさね! あたいが今度、新作奪ったげるよ!」

「「わーい」」

『それでは良いお年を~!』


 そうして稀に何人か一緒に召喚されることもあったが、基本的には魔女一人が多くの率を占めた。

 が――心底、クソどうでもいいなコレ。アホらしいぜ。


「――やっほぉー。おっひさぁ。呼ばれてぇ、ついつい時価で来ちゃったぁ。うっふ」


 無心でアホ騒ぎをひたすら眺めているところに、どこからともなくふらっと現れ、アホなことを言いながら両の人差し指を対称に動かし「♡」を宙に描いて、やたらとクソうぜぇ仕草と胡散臭い笑顔を引っ提げて魔女の中で最もクソ面倒だろう魔女がやってきた。

 ――来んな。呼んでねェよ。とっとと帰りやがれ、あからさまにぷんぷんクソ面倒臭ェだろうモンひけらかすように隠し持ちやがって……。


「はぁ~い。ぷ・れ・ぜ・ん・と」

「要らねェ」

「――ほんとにぃ? いいのぉ? 一点ものだよぉ?」


 オレ様にだけ、あからさまに見え透いてバレバレな隠蔽の仕方が怪し過ぎんだよ、テメェは!

 あげる、いらない、あげる、いらない、などと明らかにヤバそうなもんを押し付けられそうになっているのを拒否しているクソ面倒な問答を繰り広げていると――そこへ、暫し魔女達が小休憩中に入って暇だったらしい神がふらふら目を輝かせながら飛んできた。……クソ面倒な予感。


『わぁ、すごいねラディちゃん! アマテラス様の鏡だ! わあ……てあれ。なんでここにアマテラス様の鏡が?』

「――ちょこぉーっと、ちょろまかしちゃったぁ。てへ」

『え……じゃあもしかしてアマテラス様の厳封、まさかアレを壊しちゃったってこと……?』

「……――」


 クソやべェ気配はヒシヒシ感じてたが――封じられた神器かよ! マジモンのクソ危ねェやつじゃねーかよ、オイ。何そのクソ危ねェモンを平然とオレ様に押し付けようとしてんだ、このクソ魔女ふざけやがって……!

 そもそも、たかが魔女の分際で封じられる位のとんでもねェ危険な神器(ブツ)を持ち出しとか……正気かよコイツ。


「うっふ。それはぁさすがに無理無理ぃ~。あでもぉ、持ち出せたのはぁツクヨミ様の黒玉――勾玉のお・か・げ、でぇす」

『そっかぁ。なるほど――あの通路を利用したんだね。うーん、全然気付かなかったよ! さっすがラディちゃん! ……あ。なら今頃、あっちの封では大騒ぎになってるかなぁ? でもまあ、後でツクヨミ様と一緒に返して謝ればいっか!』

「はいはぁい。そのとぉり! ――ではぁ、どうぞぉ~。存分にお使いくださぁい」

『ラディちゃん……そっか。私の為に……わざわざありがとう!』


 厳封されるほどの神器を勝手に持ち出しとか、完全にイカレやがってこのクソ魔女――。


『――えいっ!』

「…………」


 ……は?


『わあ、上手くいったよ! すごいすごい、流石アマテラス様だね!』

「――な、んだ……いまのは……?」

「うっふ。ただのお・さ・わ・り」


 魔女が胡散臭い笑みで再び「♡」を指先で宙に描いたが、それに意識をかかずらうどころではなかった。

 ――神に触れられた、だと……? しかも完全に()()()()で、だ。なんだコレ、なにがどうなって――。


『――できたあ! わーい、か~わ~い~い~!』

「あのやさぐれ具合から、随分とまあ可愛らしく変身しましたね。似合っていますよ」


 ……はア!? なんだこりゃ!?


 神に触れられたという衝撃からなんとか意識を戻すとすぐ、実体の微妙な軸のブレから頭部の違和感に気付いて固まる。

 恐る恐ると自らの頭部に触ると、二つのしっぽが生えていた。ついん――。

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