早く都市の方に伝えないといけない
けれどそれは結果的によかったのかもしれない。
私がそれを知らないとこのグド王子は思っただろうから。
その様子にグド王子は勝ち誇ったように笑う。
「なんだリズは何も知らないのか。遅れているな」
「……別の婚約がされたのであれば、もう私はグド王子、貴方とお会いする必要はありませんね」
「……元婚約者に、それはないだろう」
「“元”ですよ。そして貴方はあの令嬢コミヤと私と、そして我が公爵家を侮辱した。これまで通りでいられると思ったのですか?」
とげのある言葉になっている自覚はある。
けれど今すぐにこのグド王子をこの目の前から消し去りたい感情が湧いてくる。
いやだ、もうこんな場所にいたくない、そんな感情が私の中に生まれつつも私は、
「令嬢コミヤと楽しくされていればよろしいのでは? それによく貴方を独りで、私に会いに行かせましたね」
「それは話していないからな」
「あら、貴方が私を捨ててまで手にいれた婚約者をないがしろにするのは、よろしくありませんわ」
そう告げると、グド王子は苛立ったようだった。
ほんの少し溜飲が下がるものの、それでも私の中で怒りはくすぶっている。
するとグド王子は、
「本当に俺には何の興味も示さないのか、リズは」
「……終わった相手にそれはおかしいでしょう? 駄々をこねるような年齢ではないでしょう? グド王子」
「初めからだ。初めから、リズは俺の事なんて……」
「……以前も申した通り、貴方は私のなにも見ていなかったのですね」
「何を言っているんだ! いつもすました顔で、俺の事をただそこにいる王子としか見ていなくて、笑った所なんて見たことが無くて、感情がないみたいで、コミヤだってそう言っていた!」
「コミヤがそう、ずっと言っていたのですか?」
ふと、何かが引っかかり私はそう問いかけた。
するとグド王子は、
「可愛そうなグド王子、リズはあなたに何の興味もないのですね、そう言って手を握り俺の気持ちを理解してくれたんだ」
「……グド王子、貴方は何時の間にあのコミヤとそこまで近くで話す仲になっていたのですか?」
「それは、舞踏会の時に、たまたま早く出てはどうでしょうと言われてそれで庭を散歩していたら遭遇して……」
「コミヤの言葉を貴方は疑わなかったのですか?」
「コミヤが嘘をつくはずがない!」
一瞬グド王子の瞳が黒く濁ったように見えた。
そしてそう、断言するように叫ぶ。
ぞっとした。
これは一体なんだろう?
私はその不気味さに凍り付きながらも思考はやめない。
この断定的な口調も含めて、まるで“何か”に操られているようだ。
それこそコミヤの絶対の味方であると、思い込んでいるような……。
これは早く都市の方に伝えないといけない。
気に入らないが、そう言った人心を操る魔法なんて、“おとぎ話”程度でしか聞いた事がない。
背筋に冷たい汗が落ちる。
不気味で気持ちの悪いものを垣間見てしまったようなそんな感覚。
別の誰かに入れ替わってもこれでは、“誰も気づかない”のではないのか?
もしもこの力に気付かなければ……。
「……グド王子、今日はこの辺で構いませんか? 気分が悪くなりましたの」
「そうか、分かった。今日は帰ってコミヤと話す」
「……ええ」
いまだに何処かぼんやりしているよなグド王子にそう返し、私はグド王子と別れたのだった。
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