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スローライフ悪役令嬢は、王子の溺愛に気付かない。  作者: ラズベリーパイ@天安門事件


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こんな偶然があるとは思わなかった

 どうやらコミヤは魅了の魔法を使って若い振りをしているらしい。

 そう考えるとあの舞踏会での人の集まりは異様であった気がする。

 今考えるとそういえば、と思うのにあの時は、冷ややかな目で私は見ているだけだった。


 極力関わらないようにしていた、というのもある。

 風の噂も含めて彼女、コミヤが私は“嫌い”だったからだ。

 なのに気づけば、婚約者である王子の元に入り込んだのだから、この手腕はある意味素晴らしいと言わざる負えない。


 でも、多分もう、あのコミヤの世界は終わりを告げるだろう。


「告げさせる、か」


 それは私の“復讐”にもなるのだろうか?

 そう思いながら家の門をくぐる。

 久しぶりの屋敷は私にとって心地よいと思えた。


 やがてやって来た母が私に微笑み、


「おかえりなさい、リズ」


 私にそう言ったのだった。









 お土産のエッグタルトを食べながら紅茶を頂く。

 ヘレンには下がっていてもらっている。

 そうやってお茶会をしながら私は田舎での生活を話すと、


「リズが楽しそうで良かったわ」

「ええ。心地よい場所です。友人もできましたし」

「そうなの? どんな?」

「私と同じくらいの歳の駆け落ちした男女です」

「あら、情熱的ね」

「はい、彼女達の手伝いなどもあって、ケーキ作りなどをしておりました」


 そう話しながらも私は何となくシルフの事は言い出せなかった。

 都市でこっそり会って板と話すのは気が引けて、そして今は私の心の中で大切な意味を持つ男性の名前だったから。

 だから黙ってようと決めているとそこで、


「楽しく暮らしているようでよかったわ。……それで婚約の話に移っていいかしら」

「はい」

「では、我々はあのコミヤという令嬢に関して調べていくと、今から三十年前だったかしら。その当時十代だったコミヤという令嬢があの男爵家にいた様なの。けれど彼女はある時を境に消えて、最近唐突に現れたのがあの令嬢コミヤ」

「四十代後半から五十代前半の女性がコミヤだと? それが十代の振りをしていると? それは頭が……」

「コミヤの頭がおかしいのは今更です。そして近いうちに応じにはあのコミヤの魅了の魔法と姿を偽る魔法を消し去った状態で対面して頂きます」

「……ざまぁ」

「ええ、ざまぁですわ。そして、その魔法の援助も兼ねて貴方には“リザール国”のシルフ王子と婚約してもらうわ」

「……シルフ?」

「ええ、どうかしましたか?」

「いえ、何でもないです」


 そう答えながら私は胸の動悸が激しくなるのを必死で隠そうとする。

 まさか同じ名前何て!

 こんな偶然があるとは思わなかった。


 そう思いながら私はだまっていると、


「そしてあの元婚約者であるグド王子とは、“リザール国”のシルフ王子の妹姫と婚約して頂きます。……得体のしれない、そして我が公爵家を侮辱し、リズ、貴方を傷つけたあの令嬢コミヤにこの国を“渡す”つもりはありません。そろそろ短い夢から覚めていただきます」

「もう一つだけ。“リザール国”と懇意を結ぶことで我が国は何を手に入れるのですか?」

「魔法技術の供与を受けることになっています。win-winの上手い協力関係ではなく、他国の援助が無ければどうにもならないという失態を起こした、あの小娘……私よりも年上かもしれませんね……についた貴族を、一気に追い落とします。……婚約を、引き受けてくれますね? リズ。この国の人達のためにも」

「……はい」


 そう私は頷いたのだった。

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