美味しそうだな
貴族たちがこの村に向かっているらしい。
それを聞きながら、彼らとまた会うことになるのだろうかと私は憂鬱な気持ちになった。
あの寝取り女の令嬢コミヤが来ないのが幸いだっただろう。
彼女が自分からこんな辺境に来るとは思えない。
元々彼女は一応は貴族令嬢ではある物の、最近のし上がってきたタイプの貴族でもあった。
だから……その血筋をたどっていくと、得体のしれない人物達に辿り着く。
そもそもこの人達は、本当にその“辿って至った人”なのだろうか? と思わさせられる人物達だった。
確かに落ちぶれた貴族の血を継いでいて、その貴族でもかなり遠い親戚だという話だったのだが、その昔は、その血のつながっているはずの貴族達と誰一人顔が似ていないと評判だった。
もっとも従兄と言ってもあまり似ていなかったりするのだからそれが遠縁ともなれば、煮ていないのは当然かもしれない。
そう思いながら以前の舞踏会で遠巻きにしてみた出来事を私は思い出す。
確かに見た目は取り繕っていたし、会話も一見普通に見えたがその後に聞こえた醜聞は聞くに堪えない物だった。
初めは分かっていて言っているのかと思うが、どうもそうではないらしい。
自分の妄想と現実の区別がつかず、自分に都合の良いように記憶すらも塗り替えているようだ。
人間には嫌な思い出があると多少はそういった傾向が出てしまう事もあるが、彼女の場合はそれが顕著で、自分が悪い事をした記憶すらも全て彼女の中には残っていないようだった。
令嬢コミヤは自覚のない嘘つき。
だから無責任に好きなように言えるのだろう。
そして相手を陥れる事すらも平気なのだ。
下手すると私がやってあげているというような変換を頭の中でしているのかもしれない。
そんな話にならないような相手だから私は近づかないようにしていた。
分かって、このんでそういった輩に近づくのは、何らかの下心のある相手か同類か、その両方といった所だろう。
接触してそこそこ会話をしたのも片手で数える程度しかない。
それでも私は全力で避けるようにしていたのだが……気づけば王子と接触して婚約破棄になっていた、という次第だ。
そこまで思い出して不愉快な思いをしながら、パスタを作るお手伝いをする。
今回は緑色に輝いていたのはいいとして。
そこでシルフがのぞき込み、
「わ~、美味しそうだな」
「うん、美味しいと良いね」
「そうだよ、この前は妹がパスタに挑戦したら、鍋が爆発したからな」
「? 妹さんがいるの?」
「あれ? 話してなかったっけ」
「聞いてないわ」
「そうかそうか……でも、リズ、なんだかすごく機嫌が悪そうだね、どうしたの?」
そこで妹の話を聞く前に私はそう問いかけられる。
妹さんの話を聞きたかったのにと私は思いながらも、先ほどの村長さんの話をすると、
「リズに酷い事をした貴族が来るのか」
「本当にね。どうしようかしら。何か仕返ししてやりたいわ」
「……うん、でも俺はリズには笑っていて欲しいから、にこって今は笑って?」
「……はいはい」
そうシルフに言われてしまうと私は自然と笑みがこぼれてしまう。
その後で食べたパスタは、とても美味しい物だったのだった。
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