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スローライフ悪役令嬢は、王子の溺愛に気付かない。  作者: ラズベリーパイ@天安門事件


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俺の大勝利だな

 それから保存食を作り始める私達。

 まずは収穫からなのだが、収穫する間もわずかにトマトやら果実やらが白く小さく光る。

 もしやそれだけで何か妙な効果が、と思って震える。


 それに関しては考えないようにして、籠に次々収穫する。

 今回の範囲はそれほど大きくなかったので、一見収穫はそこまで大変には思えないが、それでも大きな籠三つ分になってしまった。

 これをもってこれから下処理をする、という話になったのだが、


「それで、リズ、約束通り頬にキスしてもらうぞ!」

「……わ、分かっているわよ」


 恥ずかしいし緊張するから、うやむやにしてと思ったがシルフは忘れてくれなかったらしい。

 私は諦めてソッとシルフに近づき、背伸びをする。

 シルフは背が高いから、私は背のびをしないといけない。

 

 倒れないようにシルフの肩に手を置いて、背伸びをして、シルフの頬に軽く触れる。

 すごく恥ずかしい気がする。

 こんな事、異性にしたのは家族くらいしかない。


 婚約者にすらしていないのだ。

 そう思っているとそこで、シルフが私をじっと見つめた。

 笑っているけれど、その瞳は何処か熱がある気がする。


 一瞬動けなくなってしまった私。

 けれどシルフはすぐにいつものように笑って、


「よし、俺の大勝利だな!」

「……そう言われると悔しいわ」

「またの挑戦をお待ちしております」

「その時は私が勝つからね」


 そういい返して私は、籠を一つ持とうとすると、シルフに取られた。

 残りの二つは、ヘレンが一つ、クロトとサナがもう一つは奪い合っていたが、そこでシルフが籠を一つ持ち上げるのを見てぎょっとした顔になる。


「シルフさ……が自分から手伝いを!」

「こ、これは一体、天変地異の前触れ……」


 クロトとサナがそう蒼い顔で言っているが、くるりとシルフがそちらを向く。

 私からはどんな表情をしているのかよく見えないが、二人が震えあがった。


「え、えっと、とても助かりますわ。シルフさ……」

「そうそう、助かります」


 二人して頷くその様子に、本当にどんな顔をしているのかと思って私は覗き込むも、いつものシルフの顔に変わりはない。

 ではこの二人は一体何を怯えているのだろう、そう思うも結局よく分からなかったのだった。









 トマトなどを天日干し、果実は砂糖漬けの物やジャムにしていく。

 トマトは香辛料と一緒に煮詰めて、独特の香りが口に広がる酸味と旨みが美味しいパスタなどのソースにしてみる。

 一部は今日のお昼に頂くパスタの具になりそうだ。


 また、砂糖などで加工した果実の方は後で菓子にも使えそうだ。

 どんなものにしようか私は楽しみに考える。

 そしてこれらの作業がひと段落して、まだもう少しお昼には時間があったので、今朝作ったチーズケーキの一部を村長にもっていき味見をしてもらうと、即採用と言われてしまった。


 ここまで気に入られてしまうと、逆に私の方がこれでいいのか不安になる。

 都市のお菓子職人の菓子はとても美味しかったから。

 そんな私の悩みをよそに、村長さんは、


「いや~、リズ様が来てから村の評判が良くて。これから菓子を売るとなると更に評判が良くなりそうですな」

「評判がいい? この村が? どういうことなのですか?」

「何でも野菜や加工品などが凄く美味しくなってきていて、その評判を聞きつけて最近では都市の方が買い付けに来るそうですよ」


 嬉しそうな村長さんを見つつ私は、あの貴族達の情報網は侮れない、こんな短期間に……そう思ったのだった。

 

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