洞窟へ
一度、魔力のこもった石を取りに帰るべきかどうか、といった話をした所、シルフが、
「今日は僕が守るから大船に乗った気持でいてくれ!」
とシルフがドヤ顔で言うとヘレンが、
「……負けない」
何故か対抗心を燃やしていた。
なんでも、シルフはクロトやサナよりも強いらしい。
でもサナとはいえ女の子なので、それと比べるのはどうなんだろうと私が思って、サナに聞いてみた。
するとサナは微笑み、
「私、こう見えても、剣の腕には自信があるんですよ」
「そうなの? 見かけはこう私と同じように守ってもらわないと、といった感じに見えるのだけれど」
「……新鮮だわ、凄く新鮮な反応だわ! そうよね、私って繊細な少女に見えるわよね!」
「え、ええ……」
「聞いたクロト! これが普通の反応なのよ! 皆がおかしいのよ!」
と、何故か興奮したようにサナはクロトに話しているが、サナは一体どれほど強いのだろうと私は思った。
そう言えばシルフの友人というだけで、この二人については私は知らない。
けれどそれを言うとシルフも、私はよく知らない。
そう思いながらシルフを見上げると、シルフがどうしたの? というように私に微笑む。
もっとシルフについても私は知りたい、そう思いながら私は、けれどそれを口に出せない。
シルフの口から説明してもらうのではなくて、一緒に時間を過ごして、私はシルフを知りたいから。
だから黙っているとそこでシルフが、
「よし、どちらがリズを守れるか競争だ」
「いいでしょう、受けて立ちます!」
そう言って、シルフとヘレンが闘志を燃やしている。
私は何か変な感じはしたものの、ヘレンが対抗心を燃やす程度にシルフは強いのかもしれない。
好敵手は良い事だよね……と思うも、何かが私には引っかかった。
けれどそれが何かは私には分からなかったが。
こうして私は、シルフとヘレンの二人と一緒にダンジョンへ向かう事となったのだった。
ダンジョンと言っても、数多の種類があり、物語に出てくるような怪物が住まう場所ばかりではない。
多少の魔物は出たりすることはあるけれど、大抵は鉱物が取れたり、茸や薬草といったものが手に入ったり、夏場に涼みに行ったり、後は魔力が少しある洞窟では地下水に魔力が溶けだし、病人に効いたりする場合もあるという。
だから小さいものとはいえ、わざわざ行く必要はない物の、ちょっとしたものがとれたりしてその地域では有効活用されていることが多々ある。
そしてこのダンジョンも、動物と大差ない程度の魔物しかついておらず、そのため、ここの気温が程よい事もあるのだろう、この洞窟はワインの熟成場所に使われているようだった。
積み上げられた木箱には、それぞれ名前が書かれている。
それを見ていると、管理をしているらしいおじさんらしく村の人に声をかけられて、立ち話を少しして、
「水晶なんかも結構転がっているよ。やっぱり女の子はそういった綺麗なものが好きだね。うちの娘も……」
といった娘さんの話を聞きながら私は気づいた。
この人酔っぱらっている、と。
なので適当に話を合わせて早々に奥へと向かう。
よく出入りしている洞窟なためか、明かりがついているので魔法で生み出さなくてもよさそうだった。
途中魔物に遭遇することも無くしばらく進んな私は、地底湖の岸に辿り着いたのだった。
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